「それじゃ。また来るね」
「ありがとう。でも今度は自宅で会いたいものだね」
今の気まずい雰囲気を忘れようとばかりに、2人は軽く笑いながら立ち上がった。
弟は出口に向かい、姉は先程の男性刑務官の前に立つ。
出入り口の扉に手をかけた弟はもう一度姉の姿を見ようと思い振り向く。
姉はまだ面会室にいた。
直立不動をし、手に透き通った棒を持った男の刑務官と何やら話をしている。
姉の表情は後ろ姿なので見えない。スピーカーが切られているため声も聞こえない。
突然、刑務官がこちら側を見た。視線を合わせたかと思ったらなんとも言えない嫌な表情をした。
「……!!」
刑務官が何かを叫ぶと姉の両手がズボンを掴む
何をしているんだろうと思う間もなく、姉はそのままズボンを足首まで一気に下ろした。
弟は姉の思いもよらない行動に立ち止まり、そして息を呑んだ。
そこにはシンプルな白パンツに食い込んだ、姉の見事なお尻があった。
突然晒された姉のパンツから弟は目が離せない。
背後から視線を感じ取ったのか姉が思わず振り向く。
そして絶望的な眼差しで見つめた。
姉は少しでもパンツを隠そうと、Tシャツを下に引っ張り両膝を合わせようとした。
それはできるだけパンツを見られないようにする女の本能。
だが、その羞恥の仕種が、かえって男の心をそそった。
その姉の無駄な抵抗を見てニヤリと笑う若い刑務官。
弟は姉の顔を見た。
そこには、顔を真っ赤にし、恥辱に耐えている姉の姿があった。
姉の口元がわずかに動く。
声は聞こえないが何を言っているのか弟には分かった。
「見ないで」と。
姉は、刑務官のほうを向き直した。
そして姉の右手がパンツを掴む。左手もパンツを掴んだ。
この姉の動作は先ほどズボンを下ろしたのとまったく同じ。
このまま手を下げれば白のパンツは体から離れ、弟からは姉のお尻が。
刑務官の前には姉の女と言えるものが、丸見えになってしまう。
(くっ)
いたたまれなくなった弟は姉の行動を見ることなく、 急いで面会室から出た。
「はぁはぁ。今のは一体なんなんだ」
扉を閉めた弟は心を落ち着かせようとした。
なぜ、姉があんな所で、ズボンを下ろしたのか。
あれが嫌だと言ってた身体検査なのか? それにしたって面会室でやる必要はないはず。
ましてや家族がまだいるのを確認してから検査を始めるなんてあまりに非常識だ。
納得がいかないことは他にもある。
検査する刑務官が男性だったことだ。
つまりここに収監された人は、例え男の前であろうが下着姿になり検査を受けなくてはいけないということ。
いや、最後に姉が見せた動作を考えると、下着を見せるだけで終わったとは思えない。
今頃、姉は全裸になって、あの男の前に立っている可能性もある。
普段の姉ならまったく相手にもしないであろう、あんなチャラそうで頭が悪そうな男の前でだ。
弟は面会室の閉ざされた扉を見ていると邪な思いが頭を掛けめくった。
もし、自分がこの扉を開ければ先ほどまでの疑問は全て解消される。
姉は今どんな格好で、あの男の前にいるのか。
日常的に行われる身体検査とはどういうものなのか。
あの知的な姉があそこまで嫌がるのだ。ただ裸を見られて辛いだけとは考えにくい。
そして姉はどんな体をしているのか。胸の大きさは。乳首の色は。
赤の他人であるここの職員たちに何度も晒した裸なんだから、一度ぐらい弟の自分が見たって問題ないはず…
弟はふらふらと扉に手をかけ、開けようとしてた、その瞬間、
(俺は何を考えているんだ。)
弟は突然、我に返った。
そして、よからぬ妄想と、先ほど見た姉の白いパンツ姿を振り払うがごとく、
自分のほっぺたを強くパンパンと2回叩いた。
「俺が姉さんを悲しませてどうするだ。俺の願いはここから姉さんを救い出すことだろ。しっかりしろ俺」
弟は自慢できる自分の姉がノーブラを強制され、まるでモノのように番号で呼ばれていたことにショックを受けていた。
そのショックが収まらないうちに、男の前でズボンを脱ぐ姉の姿を見せられ、一種の自暴自棄になっていた。
常に人の上に立ちながら生きていくような頭脳明晰な姉はもういない。手遅れなんだと。
しかしそれは違うと弟は気がついた。
確かに姉はここで人に言えないような屈辱的な生活をしている。
それでも姉の心は折れていなかった。
決して諦めない姉の精神はまだ生きている。
それがある限りまだ手遅れではない。
「一刻も早く姉をここから出さなくては。本当の手遅れになる前に」
弟は決意を新たにし、拘置所を後にした。
初 2014年12月
改訂 2025/01/12

330円