2部 プロローグ。動き出した時
姉との初めての面会を終えた弟は自宅に帰り、拘置所で渡された姉のバックを調べていた。
このバックの中には、姉が拘置所に入る際に持ち込み禁止と認定され、取り上げられたものが入っていると言う。
普段なら姉のものを触ったりしない弟だったが、今はそんなことを言っている場合ではない。
どんなものでも調べる。それが姉の冤罪を晴らすことになる。
藁も掴む思いで姉のバックを開けた。
「これは」
弟は思わず息を呑む。
バックの中には逮捕時、姉が身に着けていた衣服が入っていた。
弟は姉の上着を取り出しポケットの中を確認する。なにもない。
次に青色のスカートを調べる。こちらもなにもない。
続いてシンプルなブラを取り出す。柔らかい布地を感じながら表裏と丹念に調べる。
82.5~87.5の表示を確認。そっと床におく。
そしてバックの中にはフリルがついた可愛らしいピンク色のパンツが一枚だけが残った。
弟はバックの中に残された姉の生々しく丸まったパンツを手に取り、悲痛な表情で眺めた。
係の人はこれらは入所検査の際に没収されたものだと言ってた。
つまりこれは姉が全裸にされたという証。
もちろん危険物持ち込み防止のため、逮捕された人が身体検査をされるのは理解している。
拘置所へ入るときには更に厳しい検査をされ、私服さえも持ち込めないのもわかる。
しかし、あの知的な姉が誰ともしれない赤の他人に命じられたまま、衣服を全部脱ぎ、全裸を晒した証拠を見せられて弟の心は揺れた。
「姉さん……」
先ほど面会室で見た姉の姿が頭をよぎる。
男性刑務官の前でズボンを下ろす姉。
いくら忘れそうとしても羞恥に塗れた姉の表情と、白パンツに包まれた生々しいお尻の形は、弟の頭から決して消えることはなかった。
そんな虚しく暗いことを考えていると突然玄関の呼び鈴がなった。
弟は手にとったパンツをバックに戻しながら、
「今行きます」と返事をし玄関まで行く。
玄関には二十代後半と思われるスラリとした長身の女性がいた。
顔に記憶はなく知らない人だった。
姉が逮捕されてから興味本位でやってくる人は複数いた。
弟は警戒しながら相手の様子見を伺う。
「えっと。どちらさんですか」
弟の警戒心が丸見えの態度にも女性は怯まない。
「はじめまして。私、フリーライターの高橋と言います。事件のことについてどうしても腑に落ちないことがあって伺いました」
真っ直ぐな黒髪。綺麗な眼差し。
姉が知性派タイプの美人ならこの高橋は妖艶。大人の女性の色っぽさを感じる美人だった。
「マスコミの方ですか。それならもう結構です」
いくら綺麗な女性でも姉を犯人扱いしたマスコミの相手はしていられない。
適当に追っ払おうとした。
「待ってください。君の姉さんは無実です!」
追い出されそうになった高橋が突然大声を出す。
その声を聞き、弟は驚きの表情で高橋を見つめる。
まさかと思った。
なぜならこれまで姉の無罪を信じてくれる人物は誰もいなかったからだ。
マスコミ関係も面白半分に書くだけで、何の役にも立たない。
しかし、目の前にいるこの女性は、力強く無実と言った。
精神的に追い詰められている今の弟にとって、その言葉は麻薬にも似た甘い響きに聞こえたが、それでも警戒心は解かない。
疑いは両親にも掛けられ今この家を守るのは自分1人。
その思いが相手を拒絶する。
「いいから帰ってください」
弟は逸る気持ちを抑えながら高橋を追い出し鍵を掛けた。
「また来ます」
そう言って女性は去っていった。
あまりに素直にいなくなったことに弟は疑問に思う。
興味本位の取材はこれまでもやられたことがあるが明らかに彼女は違っていた。
もしかしたら信じれる人なのではないのかと思いが過ぎる。
だがもう既に遅し。玄関には誰もいなくなっていた。
ガランとして静まり返った玄関。それはこの事件に味方はいないことを表すようだった。
2015年03月29日
2025年1月16日
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