「お姉ちゃんは成績が良すぎ。なんでこんなに勉強できるの?」
「それはね。真面目に勉強をしているからよ。あんたも頑張ればきっと出来るようになるわ」
「うん。わかった。僕頑張る」
カンカンと起床時間を知らせるチャイムが鳴る。
4番こと姉は今日も決められた時間ぴったりに目が覚めた。
規則正しい生活を強制されているせいか朝の目覚めだけは普段よりいいぐらいだった。
彼女は布団を片付けながら夢の出来事を思い出していた。
そこまで年月は経っていないのにあまりに懐かしい子供時代の思い出。
両親の娘として恥ずかしくない立派な人間になろうとした。
弟に尊敬されるような姉になろうと必死に頑張ってきた。
その結果がこれかと自暴自棄になった時期もあったが、日が経つにつれて気持ちの整理も出来てきた。
根拠のない楽観主義に陥ってもいいことは何もない。短期で解決する問題ではないのははっきりとわかったからだ。
姉は今日も決められたとおりに布団を畳み、決められたとおりに正座をし朝の点呼を待つ。
5分ほどすると扉が開けられ20代前半の若くて見知らぬ男性刑務官が入ってきた。
名札には坂口とだけ書かれている。
姉は心の中で大きく失望の溜息を吐いた。最悪だと思った。
矯正展準備のためか今日も初めて見る外部の男性刑務官。しかも年齢も近い若手だったからだ。
これまでの経験上、年齢差が少ない相手が一番つらかった。
本来なら自信を持って対応できる人の命令を聞かなくてはいけないのはあまりにきつい。
坂口刑務官はそんな気持ちも知らずに「番号!!点検!!」と言った
「4番。異常ありません」
不貞腐れた感じがバレたのか坂口刑務官の表情が厳しくなる。しかし迫力はあまりない。
改めて観察すると、やはりかなり若い人物に思えた。
実際に刑務官のバッチを見ると喜美刑務官と同じ一番下の階級を表す看守一般職員のデザインが書かれている。
こんな若い外部の刑務官に媚を売っても仕方がないと思った姉は相手を睨みつけた
どうせこいつとは二度と合わない。その気持ちが彼女を強気にさせていた。
「土下座と体調」
そんな喧嘩腰の相手に向かって坂口刑務官は静かに述べた。
こうなるのはわかっていた。喧嘩しても意味はないと。
姉は手を震わせながら頭を床にこすりつけ「体調は良好。生理もありません」と宣言する。
屈辱的な土下座。生理の申告。立場の差は歴然だった。
「全裸」
続けて刑務官はまるで当たり前のように言った。
姉は一瞬なんのことなのか理解出来ない。
全裸?こんな外部の男性刑務官がわざわざ朝に?なんのために?
この工事が始まってから何人かの男性刑務官の検査を受けたが殆ど上半身脱衣だった。
これは余所者なんだから形式的に検査するだけでいいの判断があるのだろうと勝手に解釈していたがこの坂口という男は違う選択をした。
「全裸!」
坂口刑務官は再び言う。声のトーンがかなり低い。もう次はないと思った姉は「はい!!」と大声で返事をする
いくら相手が若い刑務官で全裸検査に納得できないとは言え、ここで逆らうほど彼女は愚かではなかった。
もし反抗の意思ありとみなされれば懲罰になるからだ
それこそ何の意味もない。姉は素早く全裸になった。
「きをつけ!!」
言われる前から彼女は体のどこも隠さず直立姿勢を取ってきたのに怒鳴られた。
これは命じられて裸をなっていることを相手に教えこむため。
ネチネチと気持ち悪いやり方だった
「口を開けろ」
姉は言われたまま大きな口を開けて間抜けな姿を晒すと坂口刑務官はペンライトを持ち口の中を覗き込んでくる
この刑務官は外部の人間のせいか普段とかなり違った。
髪の毛を引っ掻き回し異常を探るかのように体中を触られる。
無神経に体を触られた姉は少しでも邪な感情を見せたら訴えてやると思ったが刑務官の手つきは非常に淡々とした作業的なものだった。
乳房を触れたときすら表情を変えない。
若くてもやはり刑務官の資格を持った人物は違う。悔しいがプロとしてふさわしい検査の仕方だった
体中のチェックを終えた坂口刑務官が制服のポケットからペン入れっぽいプラスチック製のケースを取り出す。
姉は僅かでも坂口刑務官の仕事ぶりに感心した自分を呪う。やはり最悪の日だと思った。
「肛門検査」
決して聞きたくない単語を言われた姉は真っ青な顔をしながら「は、はい」と返事をし四つん這いのポーズを取る。
お尻を持ち上げ自らの両手で尻肉を左右に広げた。
怒りと恐怖のため手が震えた。いくらルールとは言え今日初めてあった男に肛門を差し出さなくてはならない理不尽さを抑えることは出来ない。
「うっ」
坂口刑務官は姉の小さい肛門に指を当てた。
まだまだ硬い姉の肛門を親指で軽くほぐしてからガラス棒を入れる。
その動きには躊躇いが一切なかった。まるで他人の肛門にガラス棒を入れるのは当たり前と言わんばかりの動作。
ガラス棒が奥まで届いたことを確認した坂口刑務官は静かに頷く。
「悪くないな。他の囚人とは違い知性が感じられるし体も素朴な感じがしてこれと言った特徴がない。俺はお前を推薦しようと思う」
ガラス棒に肛門を貫かれながらも姉は言葉の必死に意味を考えたがなんのことなのかさっぱりわからない
「ひい」
突然、目の前に火花が飛んだ。肛門のガラス棒が抜かれること無く性器内に指を入れられたのだ
2穴同時の検査はやられたことない。2本目の指が入れられ奥まで進むと姉の意識はすーと薄くなっていった。
5分後
服を着直した姉は正座をし坂口の言葉を聞いていた。
体位を崩したことについて怒られると思ったがそのことに関してのお叱りはなかった。
どうやら倒れることは想定内だったようだ。
「今度矯正展がある。この事は聞いているな」
坂口の質問に姉は素直を頷く。この説明は前から受けていた。
「なら体験コーナーで使われる囚人のことも知っているな。なんだかんだあって誰を選べばいいのかで結構揉めていてな。ここにいる刑務官だけでは決められないので俺のような外部の意見も集めているんだが」
「は、はい」
なんか嫌な話だった。無いと言われたことを蒸し返されているような気持ち悪さを覚えた。
「そこで俺は君4番を選ぶことにした」
「ど、どうして私なのですか」
あまりに身勝手な話に姉は思わず手を握りしめる。
とても受け入れることは出来ない。
「それは4番が犯罪者らしくないからだ。矯正展の目的は市民に施設の必要性を説明するためにある。いかにも犯罪者で更生しそうもない人物では意味がない。そのあたり4番はいい。犯罪者に見えないし罪を償えば社会に戻れる人物であることは一目でわかるからだ」
一方的な話ばかり聞かされた姉がいう。
「罪を償う気持ちも何も私は何もやっていません。冤罪を主張しています」
衝撃的な事実を述べたと言うのに坂口刑務官の顔に驚きはない。
それどころか笑みすら浮かべながら「知っているさ。だから選んだ」と言った。
姉は目の前が真っ暗になった。
この刑務官は自分が冤罪を主張していることを知っていたのだ。
それなのに不必要なガラス棒検査を実行したことに怒りが込み上げてくるが……
(いや、そうじゃない)
ここに来て姉はようやく気が付いた。
全裸検査もガラス棒検査も体験コーナーで使われる人物を探すために行われたことを。
おそらく坂口刑務官は応援に呼ばれてから、ずっと同じことをしてきたのだろう。
ここにいる多くの女性の肛門にガラス棒を突っ込み、態度や反抗心の有無を観察してきた。
そして今日ようやくお目に適う人物を見つけた。いや、見つけられたのだ。