入院生活

優奈の幼なじみである櫻井は今日も憂鬱な気分で帰宅した。　あの元気だけが取り柄の優奈が生死をさまよったなんて今でも信じられなかった。　あまりのことでどうすればいいのかわからない。見舞いに行く勇気もない。　ただ時間だけが過ぎていった。「ただいま...

翌日。　　「じゃ先生の言うことをきちんと聞くんですよ。わかった。決して無理はないように」「はーい」　優奈が適当に返事をすると母親は少し呆れた顔をしつつ病室から出ていく。　面会謝絶の札が外れてからは様々な人が見舞いに来るようになった。　両親、...

朝食が終わり時間は午前10時を超えていた。　通常なら外来の診察が行われているはずだが、また誰も来ない。（今日は診察ないのかな）　これだけ待っても朝の診察はない。　朝の診察がないということは、脱がなくて済む。「ふう」　優奈は安堵の息を吐いた。...

早朝。優奈は普段よりも早く目が覚めた　今日から担当医や看護師も変わりリハビリも始まるという。　復帰の第一歩と言える記念すべき日だったが、彼女の表情は冴えない。　優奈の脳裏に一人の男の姿がよぎる。　これまであった病院関係者とはまるで違う雰囲気...

午後八時、病院内は静まり返っていた。　それは医者、患者ともに今日やるべきことは全て終わったことを意味していた。　他の関係者同様、優奈も安堵の思いに耽っていると廊下から人の気配がした。「優奈ちゃんの部屋はここかな」　男の声は部屋の中まで聴こえ...

入院患者の朝は忙しい。　朝の体拭きに朝食。一息つく暇もなく、検診の時間がやっていた。　優奈は急いで自分の頭に手をやり、軽く髪の毛を整える。　もちろん、体もろくに動かないのだからそんなことでボサボサ頭が纏まらないのはわかっているが、主治医に会...

静まり返っていた入院病棟の廊下にバタバタと人が行き来する足音が鳴り響く。　しかしそこには緊張感はなく、患者の笑い声すら聞こえる。　時間は午前8時。誰もが至福のときを感じる朝食の時間だった。「はい。あーん」　看護学科の女子生徒、船本紀子が優奈...

医療羞恥物

医療羞恥物

プロローグ　田舎町にある古びた高等学校に下校時間を告げるチャイムが鳴り響く。「じゃ、また明日ね。ばいばいー」「ばーい」　後片付けが終わった生徒たちは一斉に教室を出て玄関へ向かう。　部活に行く男子。自宅に帰る女子。　上級生も下級生も一つしかな...