ヌードモデルに選ばれた姉

36話 外の仕事


 「今度の日曜日はモデルをやりなさい」
 1学期も終盤に差し掛かったある日の放課後。
 クラス当番のために最後まで残っていた佳子が帰り支度を始めると、ふいに背後から声を掛けられた。
 既に外は暗い。教室内どころか廊下にも他の生徒の気配はない。
 こんな時間まで学校にいるのは後片付けの当番か各部活の部長ぐらいだった。
 佳子はうんざりしながらも声をしたほうを振り向く。
 そこには相変わらず嫌味な顔をした白鳥がいた。
 黙っていれば美人と言える顔をしているのに、この性格では話にならない。

「何時に美術室に行けばいいのよ」
 またモデルの依頼のようだ。どうせ拒否出来ないなら、とっとと時間を聞いてこの場から去る。
 今、出来ることはそれだけだった。

「誰も美術室なんて言っていないわよ。○○町の公民館よ。そこで子供と親のスケッチ教室が行われるから11時まで行くように」
 場所を聞いた佳子は顔を真っ赤にし激怒する
「ちょっとまってよ。そこうちの町内じゃないの。ご近所の子供や奥さんの前で裸になれというの。ふざけないで!!」
 彼女が怒るのも無理はなかった。これまでもヌードモデルをやらされてきたがあくまで学校内の行事であり相手も関係者のみ。
 美術部とは何の関係もない相手に向かってモデルをやったことはなかった。

「ふふっ何を驚いているの。うちの学校が地域貢献を盛んにやっているのは知ってるでしょ。だから外の『仕事』もやるなんてわかっていたでしょう」

 確かに覚悟をしていた。今度の合宿でそのあたりを教えこむなんて気持ち悪い話も聞いていた。
 だがしかし合宿はまだ先だ。だからこそいきなり外部なんて考えもしなかった。

「いやよ。そんなところで裸なんて誰がやりますか」
 無駄は承知で佳子は拒絶した。
 これまでもヌードモデルはやってきたが無関係な相手となると次元が違う。
 それは決して超えてはいけない部分。一度でも超えればもう戻れない領域に思えた。

「佳子、何を勘違いしているの。だれも全裸だとは言っていないわ。モデルの仕事を何だと思っているの」
 小馬鹿にしたように白鳥は言った。
 だが、佳子には信じられない。何しろこれまでのモデルは全てヌードだったからだ。
 疑惑の目を向け続けると白鳥はやれやれと言った表情を見せながら話を続ける。

「疑い深いわね。私が嘘を付いたことがあった? ないでしょう」 
 確かに騙されたことは何度もあるが、あからさまな嘘は記憶にない。
 それは1年の時からの腐れ縁である佳子が一番良く理解してきた。
「わかったわ」
 どちらにしても拒否権はない。
 今やるべきことは義務を放棄して学校と揉めることではない。美術部の違法行為を見つけることだった。

「あら素直ね。何か企んでいるのかしら」
 承諾したらしたで白鳥はイチャモンをつけるかのように近づく。
 このどこか艶っぽい白鳥の雰囲気はこれまでも何回かあった。
 そして、この先起こることも想像できた。

「スカートをめくりなさい」
 白鳥がそう言うと佳子はキッと睨みつける。
 だが反抗はそこまで。彼女は両手でゆっくりとスカートをまくりあげた。
 太ももから割れ目まで露出すると女のツンとした匂いが漂い始める。
 それは佳子が下着を付けずに1日過ごしている証
 何とか言えない匂いが白鳥の鼻腔をくすぐる。

「割れ目ちゃんも厚みが出て開き気味になってきたわね。まだ濡れてはいないけど下着なしの生活に体が対応し始めたってところか。感想はどう?そろそろ色々な人に裸を見せたい気分になってきたじゃない?」
 白鳥が根拠不明なこと言いながら挑発をするが、佳子はあっさりと聞き流した。
 あまりにもバカバカしいと思った。今あるのは屈辱と恥ずかしさのみ。
 どんなに脱がされても自ら脱ぎたくなるなんて感情が生まれるはずがない。

 無言のままスカートを持ち上げ続けると飽きたと言わんばかりに白鳥が扉に向かって歩き出す。
 どうやら帰るようだが廊下に出る直前になると、なぜか歩みが止まった。
「そうそう。最後に一つ忠告ね。1日の火照りを取るための自慰をやるなら胸よりもあそこに指を入れたほうがいいわよ」
「なっ!!」
 なんて下品な女なのか。いくら誰もいないとは言え、教室で言っていい話じゃない。
 思わず机の上にあった筆箱を投げるが既にその場所には白鳥はなく、筆箱の中身だけが虚しく床にぶちまけられた

「はぁ〜 まったくなんなのよ。あいつは」
 怒りも隠さず佳子は床に散乱した鉛筆を1本1本拾う。
 苦手な性の話題を振られて彼女は我を忘れていた。
 もし普段通りの冷静さがあれば気がついたはず。白鳥が出した不吉なヒントを

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