「な、何をするんですか」
佳子が当然の抗議をすると、鈴木は動じず角度を変えてもう1枚取る。
「あ、ごめんごめん。1枚目はモロ見え過ぎた。録りなおしたからもう大丈夫」
「そういうこと言ってるんじゃなくてなぜ撮ったのですか。早く消してください」
「この画像は美術部の部長との交換条件だから消せないんだ。ごめんねー」
鈴木はわびながらも顔は笑っている。どう見ても悪いとは思っていなかった
佳子は問い詰めるように言う
「部長が写真を要求した?またどうして」
「えっと確か学級新聞の活動写真に使うとか言ってたような」
「は?」
佳子は再び固まった。ここで学級新聞が出てくるなんて予想もしていなかった。
彼女も書道部の部長。もちろん学級新聞の存在はしっているし、部活動の報告義務があることも把握している。
でも、だからといってこの仕事が学級新聞のためでもあったなんて寝耳に水もいいところだった。
(つまりオールヌードでなかったのも新聞に載せやすくするためだと。やってくれたわね)
様々な思考をしながら彼女は駆け込むかのように更衣室に入り服を着直す。
そして出口に向かって走り抜けようとした
「今日はありがとうね」
「佳子ちゃん良かったよ」
声が聞こえたが佳子は一目散で外に出る。
もう1秒足りともここにいたくなかった。
後方では感謝の言葉が聞こえたが、彼女は余計に居た堪れない気持ちになった。
いくら芸術のためと言われても、わざわざ席を立ち、あそこを覗きに来た男性は結局20人ぐらいはいたからだ。
もちろんそんなことせず、真面目に絵を書いていた男性もいたが、圧倒的に少数だった。
つまりそれは近所の男性たちにあそこの形を知られたことにほかならない。
朝の挨拶のたびに見た見られた関係を思い出すことになる
「……」
学校でやるモデルとは次元が違う恥ずかしい体験をさせられ、写真まで撮られた佳子は無意識のうちに空を見上げる。
空は彼女の行く末を暗示するかのように曇っていた