番台少年の片思い 05

05



「武、そんでね。委員長が銭湯に行こうかと言ってくれて」
「へえ。そりゃ助かるな。先生もあれから来ないし委員長ぐらいは新しい常連になってもらわないと困るわ」

 土曜の夕方にも関わらず客がいない古い銭湯で武と立花は雑談で盛り上がっていた。
 男子の武は高めに作られた番台に座り、女側の脱衣場にいる立花を見下ろしている。
 楽しげに話す立花は全裸だ。タオルもなく胸や下半身を手で隠す気配すら無い。
 武の視線は立花の中2らしい張りがある乳房や薄い陰毛をばっちりと捉えていた。
 恥ずかしい箇所を見られているというのに立花は何も言わない。言うはずがなかった
 近代風のフロント型の銭湯しか知らない人が見ればこの異常に見える光景も、昭和の時代から続くこの銭湯からすれば、ごくごく当たり前の日常。
 大昔はどこの銭湯でも行われていた番台と裸の客との付き合いがここには残っていた。

「あれ?お客さんみたいよ。こんな時間に珍しいわね」
 人の気配に気がついた立花がやや驚いたように言うとガラガラと扉が開く。
 入って来たのは制服姿の女子が3人。
「え、」
 そのうち2人は、あからさまに戸惑っていた。
 それは入口付近で全裸で話している立花に対するものなのか。それとも番台に座る少年に対してなのか。
 そんな驚く2人を尻目に1人の女子が番台に近寄る。
 その女子は背が一番高くちょっとだけお嬢様っぽい感じがした。
「番台さん。大人3枚。ここにお金を置いておきますね」
「はっ、はい。いらっしゃいませ」
 武は珍しく動揺していた。この銭湯に新規の客はあまり来ない。
 特に学生の初客なんて1月に1人いるかどうかのレアケースだった。
 それなのに3人も来た。しかも女子高校生。
 そんな武の驚きに拍車を掛けるかのように今度は男湯の扉が開く。
「大人1枚」
 入って来たのは武と同じ中学の制服を着た男子。
 男子がお金を払うと、例の背が高い女子が喋る
「正樹、迷惑を掛けずに大人しく入りなさい」
「うるっせー。わかってるって」
 正樹はそう言いながら男湯の脱衣室をキョロキョロと物珍しそうに周りを見渡す。
 現在、男湯に他の客はいない。借り切りのようなものだった

「前も来たお客さんたち?」
 相変わらず全裸のままの立花が聞くが武は首を振る。
「初めての客だな。しかし女子高校生が3人に俺達の同じ中学の男子が1人か。珍しい組み合わせだな」
「でもこれはチャンスじゃない。上手くいけば常連が4人も増えるわよ」
「確かに」

 銭湯の商売にとって4人の常連確保は大きかった。
 そこから動線となり、他の友人たちが来てくれる可能性もあるからだ。

「こんな銭湯初めて。木目しぶーーい。天井もたかーーい」
「私もーー 恵美は来たことあるの。なんか慣れている感じだけど」
「ここは初めてだけどローカルな銭湯はたまに行くことがあるわ」
「へえ。すごーーい。流石」
「静かにしなさい。銭湯は公共の場なのよ」

 どうやら恵美と言う女子は銭湯のこともよく理解しているようだ。
 少なくても問題を起こすような客には見えない。
「あの3人組、悪くないじゃない。それじゃ手本を見せてあげますか」
 立花がニコリと笑いながら少し番台から距離を取る
 裸体の全てが番台の前にさらけ出されるが気にする様子は無い

 武が「いつもすまんな」と礼を言うと立花は「いいってことよ」と返した。
 同性とは言え、立花は新規の客3人から注目の視線を浴びていた。
 初めての客はその店の雰囲気やマイナールールを把握しようとするもの。
 つまり立花の行動はそのまま銭湯のルールとして3人に伝わる構図になっていた。
「お先に」
 立花は3人に向かって頭を少し下げてから入浴の準備を初めた。
 タオルやジャンプが入ったお風呂セットを手に取り貴重品は預ける
 番台からの視線を気にせず、ごく自然体で裸を晒しながら作業を終えた。
 まるでこれがこの銭湯の流儀であることを示すかのように。

「私達も入りましょう」
 その姿を見た恵美は軽く頷きながら脱衣を初めた。
「はーーい」
「了解っす」
 すると他の2人も脱ぎ始めた。
 常連になると番台の目の前で脱げるようになるが、始めて来た3人にそんなこと出来るはずも無い。
 誰もが番台から一番遠くのロッカーに行き、背を向けて脱いでいた。

 武が女湯の脱衣所のほうをなんとなく見ていると男脱衣場にいる正樹が番台に近寄って来る。
 服はまだ脱いでなく制服姿のままだった。
「俺は木本正樹。○中学3年だけど君は」
「武。同じ中学の3年。クラスは違うけどよろしくお願いします」
「ははっ堅苦しい挨拶はやめようぜ。客相手とは言え同学年だろ」
 なんとなく繊細そうに見えたが、人見知りするタイプではないようだ。
 ここは友人のように相手したほうが良いと判断した武は軽い口調で喋ることにした。
「了解。ところであの3人は知り合いなの」
「あの中に背の高い女子がいただろ。あれが俺の姉。他は女子は姉の友達。色々あって一緒に来ることになった」
「なるほど」
 武が女湯をほうをみると丁度3人が制服を脱ぎ終えてブラを外すところだった。
 既にスカートはない。白や黒、水玉と綺麗にバラバラなパンツに包まれた尻の形が見える
 女子2人は相変わらずキャキャと騒いでいた。
 武も番台の仕事は長い。このハイテンションが恥ずかしさの裏返しなのは理解していたのであえて注意もしなかった。
 
「ここだけの話、俺の自慢の姉なんだ。成績もいいんだぜ」
 正樹はまるで自分の事のように話す。先程の軽口の応酬といい姉弟の関係は良さそうだった。
「ああ、自慢するだけのことはあるな。なかなか立派だ」
 女湯の脱衣場を見ていた武は思わず同意する。
 他の2人はタオルで前を隠しながら片手でブラのを外そうと悪戦苦闘していたが正樹の姉である恵美はそんなことはしない。
 変に前を隠すこと無く、両手でしっかりと背中のブラのホックを外す。
 着痩せするタイプなのか、かなり大きい乳房が溺れ落ちるのが見えた。

「ちょっと何を見ているの」
 視線の方向に気がついた正樹が言った。
「やはり人の本質は脱ぐ時に現れるものなんだよな。うんうん」
 そんな声を気にせず武が1人で納得していると、もう一度正樹が小声で言う
「だからなにを見て……」
「正樹の姉のおっぱい」
 武がストレートに答えると正樹はなんとも言えない顔をした。
 怒るべきなのか、羨ましいと言うべきなのか。
 それすらわからないような感じだった。

「まぁ、番台に見られるのはわかって来たんだから仕方が無いけどさ。あまり見ないでやってくれよ」
 結局、正樹は怒ることは無く、愚痴を言うかのように話した。
「ん?ここが番台方式だと知ってて来たの?」
 番台を見てすぐ帰る一見さんも珍しくは無い。
 こんな古いタイプの銭湯はマイナスの効果しか無いと思っていただけに意外な言葉だった。

「この前、向こうのスーパー銭湯で盗撮騒ぎがあったのは知ってるだろ。それで皆警戒しているのよ」
「そのことか。うちも警察から警戒するようにと言われたわ」
「そんで盗撮魔が来そうも無く安心出来る銭湯を選びたいという話になってここが選ばれたわけ」
「なぜ?ここは防犯設備も無いクソ古い銭湯なのに?」
 監視カメラなんてハイテクはもちろん無い。 
 30年以上配線を弄っていないのだから当たり前だった。
「それそれ。女性たちが困っているのはそれ。盗撮防止に力を入れています。でも監視カメラで全て記録されていますは嫌なんだって。その点、このタイプの銭湯は番台の人が全てやっているだろ。それなら見られるのは1人だけなのでまだ我慢出来ると」
「なるほど。そんな考えもあるのか。それは盲点だったな」
 武はこの銭湯の古さを常にデメリットとして考えていた。
 だが、いいところもあると聞いて嬉しくなった。
「だから、なるべく見ないでくれよ。姉は男もいないしあまりそういう方面に強くないんからさ」
 そう言って正樹は番台から離れて行く。
 どうやら奥で脱ぐようだ。男子とは言え恥ずかしいのは当たり前。
 番台の前で脱ぐ勇気はなかったようだ。

「盗撮魔ねぇ。まぁあれだけの美人なら狙われるよな」
 武はふと友人に立花の裸を撮らせた出来事が頭をよぎった。
 あの時は立花なら入浴写真の1つや2つ別に気にしないだろうと軽い気持ちだったが、盗撮魔の話を聞くと軽率な行為であったことはいがめなかった。
 立花だって『一応』女子なんだからそんな画像を撮られていいわけがない

(女を守るのも番台の仕事か)
 明日もう一度友人に画像を消したか確認しよう。
 そんなことを思いつつ武は何気に女脱衣場を見る。
 すると前も隠さず全裸体で番台の元へと歩やっている恵美と前をタオルで隠しながら付いてくる2人の姿があった。

「始めまして。私は木本恵美といいます。この2人は竹田明子と長野美穂。まだ銭湯に慣れていないのでマナー違反を見逃してくれると助かります」
 恵美はその体を惜しむこと無くさらけ出した。
 少しも形くずれしない大きな乳房。きちんと手入れされている陰毛。
 裸を見慣れている武から見ても一級品と言える裸体だった。
「よ、よろしくお願いします」
 後ろの2人もペコリとお辞儀をした。今、2人の体を隠しているのは喉元から垂れ下がっている小さなタオルのみ。
 相当恥ずかしいのかタオルを抑える手に力が入っているのがわかる。

(マナー違反?)
 武は一瞬なんのことかと思ったが、どうやらタオルで体を隠す行為のことを言ってるようだった。
 おそらく隠すことを一切しなかった立花を見て勘違いしたんだろう。
 でも実際は前を隠すはマナー違反でも何でもない。
 この銭湯はそのあたり気にしない客ばかりでそう見えるが、前を隠すのが常識な銭湯もある。
 つまりどちらでもいいのだが、武はあえて言わなかった。
 裸を見せてくれるなら、それはそれで損をしない話だったからだ

「ええ、ご親切にどうも。ごゆっくりしていってください」
 挨拶を終えた恵美が女湯に向かって歩き出すと、ちょこちょこと他の2人も付いて行く。
 番台からは3人の尻が丸見えになるが当人たちは何のリアクションも取らなかった。
(尻の形もいいな)
 3つのお尻を並べると違いがよくわかった。
 正樹の姉より見劣りするとは言え、明子の尻も決して悪くはない。
 お尻の形を作る盛り上がりも綺麗で艶もある。
 逆の美穂のほうはやや小ぶりが魅力的と言えた。 
 体のラインも未熟であり裸体を男子が見れば守ってあげたいと思うだろう。
 そして一番目立つ正樹の姉の恵美。
 彼女は別格だった。細くくびれたウエストや腰の曲線は女子高生のものとは思えなかった。
 両脚も長く、突き出た真っ白なお尻のかっこよい。

 3人が女湯に入り扉を閉めるとようやく緊張が解けたのか美穂と恵美がタオルを外した。
 やはり美穂は発育がイマイチなのか陰毛も薄く胸も小さかった。
(おお、)
 明子のほうを見た武は思わず声をあげそうになった。 
 特に特徴が無い平凡な女子と思っていたのに陰毛が濃い。
 しかも幅が広くて剛毛のようだった。
 人は見た目によらない。あんな平凡な顔をしているのにこんなもんを隠し持っているとは。

「まぁ約束だしあまり見ないでやるか」
 3人の胸の大きさと陰毛チェックを終えた武は視線を女湯から外した。
 面白い3人だと思った。体つきも性格もバラバラ。下着の好みも違う。
 それなのに仲が良い。おそらく恵美がいい意味で周りから浮いており他の2人が慕っている構図なんだろう。
 
 などと考えていると女湯の扉が開き、立花が出て来る
 武は立花のあまりに見慣れた貧相な裸を見てため息をついた
「なによ! 今何か凄い失礼なこと考えたでしょ!」
 何という感の良さなのか。立花が怒りながら向かって来る。
 全裸のまま、がに股で歩いているため色っぽさは欠片もない
「考えていない考えていない。ただ女子高生とは違うなと」
「きーーー!!」
 普段は静かな銭湯に立花の元気な声が響きわたった。
アソコ洗い屋さん!【単行本版】1〜俺とアイツが女湯で!?アソコ洗い屋さん!【単行本版】1〜俺とアイツが女湯で!?
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