トップに戻る /
愛の肛門にガラス棒が突きつけられたその瞬間、姉は思わず目を瞑った。
とても見ていられない。この後に聞こえる苦痛に満ちた声も聞きたくない。
人として当たり前の感情だったが、実際に聞こえたのは意外な音だった
カランと物を投げ捨てた独特の音が狭い部屋に響く。
「え?」
姉は床の隅まで勢い良く転がるガラス棒を見て唖然とした。
思いもかけない事態に神崎すら驚きを隠しきれない。
「こんなの間違っている。こんな必要もないことをするなんてやはりこの拘置所はおかしいです」
喜美はかつてみたことないほど厳しい顔をしていた
先ほどまで見せていた学生のような軽い雰囲気が何処にもない。
自分の意志をはっきりと主張していた。
(喜美さん…)
姉も彼女の意外な一面に驚きを隠せないがそれでも気持ちは理解できた。
そう。ここは正常な人間がいられる場所ではない。
それはやられる側もやる側も変わらない。
毎日、他人を裸にし、あそこを眺め、肛門の穴を見る仕事なんて精神を病まないほうがどうかしている。
こんな仕事に抵抗感があるのは、それだけまだ正常な証とも言えた。
「喜美刑務官。ここはもういいから事務の書類整理をお願いします」
思いがけない部下の反乱にも神崎は特に怒ること無く普段通りの口調で退室を命じる。
そこには囚人たちの前で刑務官同士が言い争いを始める醜態を避ける合理的な判断が感じられた。
「はい。失礼します」
喜美もそのあたりはわかっているのか素直に部屋から出ていった。
「ふふ、あんな新人が入るなんて神崎センセも大変ですわね。あれは嫌なことをやりたくない自分が可愛いだけのおバカさんか、変な理想を持つ大バカさんかどちらかでしょう」
こんな騒動にもかかわらず愛は指示された体位である自らの両手で尻の肉を鷲掴みし左右に大きく引っ張るポーズを維持していた。
犬のように顔を汚い床に付け、女性として決して他人に見せない2つの部分を突き出しながらも挑発的な行為が出来る愛を見て姉は恐怖すら覚えた。
「口の聞き方に気をつけなさい」
言った後に神崎の親指が愛の無防備な尻の穴の周りをぐりぐりと刺激した。
「ちょ、なにを」。
反射的に腰が引ける愛。いくら検査慣れをしていても人の急所とも言える穴を触られる嫌悪感は消えるわけではない。
ビニール手袋を付けた親指が肛門に沈むと愛の全身に痙攣が走ったように崩れ落ちる。
そんな姿もベテランの彼女には見慣れたものなのか素早く愛のお尻を持ち上げ、左手に持っていた透明なガラス棒をズブリと肛門に突き刺した
「あうっ………!!」
なんとも言えない苦痛な声が響き渡る。
あの冷静沈着な愛の口から出ているとは思えない叫び。
(あああっ……)
姉は太いガラス棒が愛の肛門を限界まで広げながら中に潜り込んでいくところを恐怖の眼差しで見つめた。
非人道的な検査なのは身を持って知っている。
だが実際に見せられるインパクトはある意味やられるよりショックなものだった。
こんなことが定期的に行われていたなんて信じられない
喜美がやりたくないというのも当然だと思った。
「指定の位置に戻りなさい」
「……」
「返事は!!」
「ハイ」
流石の愛も相当応えたらしく足取りもフラフラしながら戻っていく。
「次。2番」
姉は呼ばれた声を他人事のように聞いていた
今日もまた自分も知らないところをジロジロ見られて探られる。何回やられてもあまりに現実味がなかった。
一歩ずつ歩きながら彼女は生まれて冷たい分娩台に載せられ性器内部の有様を調べつくされたときのことを思い出していた。
全裸のまま若い男性医師にあそことお尻の中を徹底的に検査された。
あそこに刺さる熱い視線。男の太い指の感触。冷たく無機質な器具。断りもなく切られるシャッター音。
何もかもが未知の体験だった
知らず知らずに涙がこぼれ落ちた
その時、姉は誓った。今後もこんな検査はあるだろうが落ち込むのはこれが最後にしようと。
だからこそ毎朝裸にされても耐えてきた。
こんなこと大したことない。そう言い聞かせた
壁際まで来た姉は先ほど愛がやったのと同じ両膝を床に付け、顔を床に擦り付けるポーズをとった。
そしてお尻を突き上げ、自らの両手で尻タブを広げた。
(くっ)
この検査姿勢は入監の翌日に教えられた。
初めてやった時は涙がポロポロでた。
普通の全裸検査とは違い自分の手の力で性器や尻の穴を開き、剥き出しにする。
この体位の屈辱感は他と比べ物にならない。
「そのまま待て」
神崎は尻穴の目の前で座り込む。
この角度だと小さく可愛らしい肛門はおろか、半開きの割れ目の奥にあるクリトリスとピンクがかった小陰唇すら覗けていた
この検査の厭らしいところは服従心を調べられる要素が強いことだった。
もしここで恥ずかしさのあまり体位を崩したり嫌がったりすれば次に行われる検査はもっと過酷なものになるからだ。
今、姉に出来ることはただ一つ。じっと秘部を晒し続けることのみ
長い長い一分。いや実際には30秒ぐらいが経つと神崎は晒された姉の肛門に親指を入れた。
「あう」
普段の検査とは違うやり方ためか、彼女の体中に鳥肌が出てたが、幸か不幸か指はさほど深く入ること無くすぐに抜かれた。
肛門の感触を確かめた神崎は汚れたビニール製の手袋を取り替えながらボソリと言う。
「やはり硬いか。この前も気になったけど4番はガラス棒検査をあまり受けていないよね。最後はいつ?」
「……一週間ほど前です」
「妙だな。いくら模範囚みたいな扱いでもそんなに開くはずがない。もしかして喜美刑務官からガラス棒検査をやられたことないんじゃ」
「……そうです」
神崎は黙り込む。
喜美が4番と馴れ合っているのはわかっていたが、まさか必要なこともやっていなかったとはと驚いているようだった。
「4番の境遇はわかっているが、これは絶対に必要なことだと理解して欲しい」
そんなこと言われても、とても承諾できることではなかった。
神崎の言ってることは冤罪なのはわかっているが、それでも凶悪犯と同じ扱いを受けろということ。
規則に例外はない。それが身体検査のような防犯や健康に関することならなおさらだ。
当たり前の話だったがそれを受け入れられるほど彼女は大人ではなかった。
いくら頭がいいと言われていてもたった一ヶ月前までは普通の大学生だったのだから。
「動くな」
まず最初に狙われたのは穢れ無き性器だった。
神崎の2本の指が乱暴に突っ込まれると姉は「ひぃ」と言葉にもならない悲鳴を上げ、整った顎が跳ねあがった。
額には汗が次々と浮び、ぽたりぽたりと雫のように垂れさがる
姉自身の指すら知らない箇所まで念入りに触れられ、かき回されていく。
(どうしてこんな……)
彼女にはこの2本指検査の理由がさっぱりわからなかった。
異物検査ならいつも通り割れ目を開いて中を覗き込めばいい。どうしても指を使うなら一本で十分なはず。
わざわざこんな検査をする理由。心の何処かでは理解していたがやはり信じられなかった。
ここは拘置所とはいえ公的な施設なのだ。こんな拷問じみたことが行われていいはずないのに。
そんな疑問に答えるかのようにクリトリスの皮が剥かれた。
尻の穴を穿られている時とはまた違う独特な信号が背筋を駆けあがり姉は顔を真っ赤にしながらいやいやと首を振った
いくら彼女が心の底から検査を嫌っていても女体の本能には逆らえない。
姉のあそこは部屋の照明に照らされ、キラキラと濡れ光っていた。
「2本指検査終了。問題なし」
そう言いながら神崎は冷たい視線で姉の肛門を見つめていた。
次に何が行われるか明らかだった
「もうやめてください。なにも隠していないし逆らう気もありません。だからこんなことはやめてください……」
姉は肛門を晒しながら必死に訴えた。そう。ここに何も入っていないのは先ほど指を入れた神崎が一番わかっているはずだった。
そもそも姉の肛門は子供のように小さく狭い。異物検査なんて必要ではない。
こんなくだらない規則を守るなんて馬鹿げていると必死に訴えた
「正直なところ私も4番にここまでの検査は必要ないと思っている。規則もきちんと守っているし刑務官の言うこともよく聞いている。でもここは拘置所。1人依怙贔屓をしたら二人目もしなくては行けなくなる。だから例外は作らない。それは大原則なんだ」
神崎は自分に言い聞かせるかのような重い言葉を発しながら愛の時と同じ太めのガラス棒を手に取る。
姉からは後ろの神崎は見えない。気配しかわからない。
それでも次に何が行われるかは理解できた。
数秒後。無機質なガラス棒が姉のきゅっと締まった健康的な菊の蕾にねじ込まれる。
絶望や苦痛が混ざりあった悲しげな声が口から漏れた。
声は本当に小さく近寄らなければとても聞こえない。
だがそれは冤罪の姉に対して10回目のガラス棒検査が行われた確かな証でもあった。
forr / 2015年04月20日