柔道部の伝統 06


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「せっかくなので軽く練習するか。金月、お前は今まで通り女子のまとめ役をやってくれ。出来るな」
 どこか含みのある顔で新田が言った
 すると金月は自信満々に「はい。出来ます」と応えた。
 

 2人を見て宮井が大輔に向かって小声で呟く。
『なぁ、新田主将と金月先輩って付き合っているのかね。確か同じクラスなんだろ』
『いや違うだろう。そんな単純なものじゃないと思う。もっと何と言うか……』
 先ほどの更衣室前のやり取りを見ても、ただならぬ関係なのは間違いない。 
 だがそれは愛情とかではなく、むしろ決して交わらない相反する存在のように思えた。


「二人一組になって約束練習。初め!!」

 下級生たちの下衆な疑問を打ち切るように練習が始まる。
 女子部員が加わってもやることは変わらない。
 男子は男子と。女子は女子と。普段と同じような組み合わせの練習を始まった。
 初日の顔合わせということもあり、誰も女子には手を出そうとしない。 

 そんなどこか余所余所しい雰囲気が漂う中で、1人の男子が良美に向かって話しかける。

「良美。乱取りやろうぜ」
 1年の宮井が声を掛ける。
 良美は下心丸出しのクラスメートを軽蔑の眼差しで見た。
 誰もが断るだろうと思ったが、

「いいわよ」
 と、良美はあっさりと承諾した。
 それを見ていた大輔は思わず舌打ちを打つ。

(何考えているんだ。あの馬鹿)
 挑まれたら受けて相手を叩き潰す。
 良美の悪い癖だった。 


「お願いします」
 二人が一礼をする。
 本校の全女子生徒でもトップクラスの身長を誇る良美と言っても1年男子と並ぶと殆ど目立たない。
 高校生の男女の体格差はそれだけ大きく、長身の良美も平凡な男子に埋もれてしまう。
 結果がわかりきった対決なのに、なぜか他の練習の音が止む。
 どうやら、この対決を見守るようだ。

 そう。誰もが知っていた。4月に1年男子が1年女子に大敗を喫したことを。
 あれから数カ月がたち、身体も大きくなり技術も付いた。
 もうあんなことはないはずだと男子の誰もが思った。

 
 勝負が始まる。乱取りなので素早く技を掛けなくてはならない。
 宮井が変な手つきで良美に迫る。
 まるで、胸か尻でも揉みに行くような技とは程遠いキモい動作だった。
 大輔は頭が痛くなった。いくら相手が女子とは言え、良美は1年最強だ。
 そんな素人臭いエロ目的の動きが通用するはずがない。 

 宮井の手が良美の柔道着に触れた瞬間、男の身体が宙を舞った。
 なにをすればあんな綺麗に男子の身体を投げられるか。恐るべき早業で宮井は叩きつけられた。

「はははっ。宮井、情けないぞ」
 1年から笑い声が響く。あまりに恥ずかしい負け方だった。

「くそ、もう一回だ」
 再び宮井は勝負を挑む。
 今度は先程のようなふざけた動作ではない。まるで本戦のような真剣な顔つきで良美を倒しに行く。
 宮井は速攻で距離を詰め、良美の胸元を掴み、強引に投げを打つ

「おーー」
 2年から感心したような声が漏れる。
 先ほどが力なら今度は技。良美は体位をくるりと入れ替え、宮井の右腕を掴む。
 やばいと思った時はもう遅い。宮井の身体が滑り落るように床へと落とされた。


「もういいわよね」
 大の字になっている相手を見ながら機嫌よく良美が戻ろうとする。

 毎日鍛錬をしていた良美と真剣さが足りない宮井。
 数カ月たった今も差は全く埋まっていなかった。
 練習とは完璧な勝利。何一つ彼女が責められることはないはずだが、それでも負けたほうはそう思わない。

「待て。まだやってもらうことがある。指導だ!!お前は弛んでいるから俺が指導してやる。ここに立て」

 宮井が良美に向かって指を指す。
 何処から見ても負けた腹いせだった。

「何で負けた人に指導されないといけないのよ。馬鹿じゃないの」

 良美の言い分を聞いて大輔は自分の不安が的中したことを悟った。
 やはり女子部には、理不尽な指導は存在しない。
 先輩の気分次第でイビられる男子とは違うのだ。

「お前自分の立場が分かっているか。逆らえる立場かよ」
「宮井と私は同じ1年じゃない。アンタこそなにを言ってるのよ」

 騒ぎが大きくなると新田主将がゆっくりと2人の側に行く。
 突然怒っているようだ。

「おい!お前らなにやっているだ!!」

 その声を聞き、良美も宮井もピタリと黙り込む。
 いくら2人とも普段はイキがっていても所詮は1年。
 柔道部のドンとも言える3年男子主将に逆らえるはずがない。

「まったく。初日だから大目に見ているがお前らはなんなんだ。良美! お前は指導を受けたら、きちんと実行しろ。立てと言われたらすぐ立て。尻を出せと言われたらその場ですぐ脱げ。そこが廊下だろうが教室だろうが関係ない。命じられたことは必ずやる。それが柔道部員の規律と言うものだ。わかったか!!」

「はい!!」
 真剣な顔で良美が返事をする。
 なんだかんだで彼女も女子部で鍛えられた身。
 どんな理不尽なことであれ、規律への反論は許されないのは分かっていた。

「宮井、お前も1年を指導する時は覚悟をしろ。愛のない指導は必ずしっぺ返しが来る。常にやりかえられることを考えて行動しろ」
「押忍!!」

「2人とも今からやることは分かっているな。すぐ実行しろ!」

 新田のどなり声が響くと2人は再び向き合い対峙する。
 先ほどの宮井の命令は前に立つことだった。
 良美は見事なまでに綺麗な姿勢で直立不動を取る。

「ほら。ビンタなら早くしなさいよ」
 不満そうな顔をしながら良美は頭を斜めに下げて頬を差し出す。
 今、前にいる宮井は先ほど完膚なきまでに負かした相手であり、しかもクラスメート。
 屈辱を感じて当たり前だった。

「何を言ってるんだ。ビンタなんて朝の挨拶だろ。罰は尻叩きと決まっている。もちろん生尻のな」
 良美の気持ちを、せせら笑うように宮井が言った。

「じょ、女子を脱がしてお尻を叩きたいなんて……アンタ変態じゃないの」
 良美は彼を避けるように後すざりをした。
 ドン引き、軽蔑。当たり前の反応だった

「クラスメートに向かって変態とは失礼なやつだな。ただの柔道部の伝統だ。俺が決めたわけでもない」

 完全に形勢が逆転した宮井が偉そうに喋る
 良美が大輔の方を見る。今の言葉が本当なのかと眼差し。
 大輔は静かに首を立てに振ると、彼女の顔が見る見るうちに青ざめで行った。

 そんな2人のやり取りを側で見ていた新田が金月に向かって話す。

「女子柔道部はどうやって尻を叩いているんだ」
「尻叩きはズボンの上から竹刀で5発叩きます。ズボンも下着も下ろしません」
「下着? 女子って柔道着の下にパンツをはいているのか?」

 新田が驚いた顔を見せる。
 男子柔道部では道着の下は素肌であり、下着すら履いてはならないと教えられてきたからだ。

「はい。女子はズボンの下は無地のパンツ。上着の下は半袖丸首の白シャツとブラを付けることが認められています」 

 確かに良美の胸元から白いシャツが見える。
 もちろんブラもパンツも付けているだろう
 やはり同じ柔道部でも男女の差は大きいようだ。

「なるほど。ならこうしよう。今日は初日と言うこともあり普段の罰は無しだ。生尻も竹刀もなしとする。良美はズボンをおろして下着のまま尻を突き出せ。宮井は平手で2発叩け。残りは1年の回しとする。金月、これでいいだろ」

「はい。それで構いません。ご配慮、感謝します」
 金月はちらりと1年女子を見て、頷いだ。

「そんな……」
 良美の口から絶望を感じされる声が漏れる。
 新田の妥協案は何一つ女性への配慮がなされていなかった。
 結局のところ、男子の前で下着を晒すことには変わらない。
 竹刀を使わないってことは、男子にお尻を触られることでもある。
 しかも回しとなれば同学年の1年男子全員にだ。

 だが、良美はこれ以上の文句を言わなかった。
 何を言っても無駄であり、金月主将にも迷惑がかかることは間違いなかったからだ
 唇をかみしめ、拳を握りしめ、壁際まで歩く。
 無言のまま紐を緩めてズボンを下ろそうとするが、手を掛けただけ動こうとしない。
 よく見れば手が震えている。
 無理もなかった。いくら女子部でも脱衣の練習が行われているとは言え男子の前でやるのとはわけが違う。

 このままでは追加の罰が言い渡される。
 そう誰もが思った時、良美はズボンから足を抜き、白色のパンツを男たちの目に晒した。
 

「おお、デカイ尻だな。凄いわこりゃ」
 誰かが揶揄うように言った。
 言われるまでもなく男子の誰もが思った。
 薄い生地のパンツに覆われた尻はかつて見たことが無いほどのボリューム感だった。
 はちきれんばかりとはまさにこのこと。
 この年の尻なんて男子も女子も同じという考えが一瞬で否定された。

「えへへへ」
 薄ら笑いをした宮井が近づくと思わず良美の眉が歪む。
 パンツ丸出しで悔しそうな顔をする姿はどこか色っぽく見えた。

「早くやりなさいよ」
 彼女は壁に手を付けて腰を曲げるお尻叩きのポーズを取る。
 すると呆れたように宮井が言った。

「男子柔道部のお尻叩きの姿勢はそうじゃない。こうだ」
 宮井は良美の肩をグイと押し、頭と手の支点を床まで下げさせる。
 そして足を無理やり大きく開かせた。

「ああ、そんな……」
 良美の暗く絶望に包まれた声が聞こえた。

(あー。この姿勢はヤバイな)
 良美の尻写真を見ている大輔ですら生息を飲んだ。
 もし女子が生尻でこのポーズを取れば良美の女が丸見えになるのは間違いない。
 今の状態ですら薄いパンツの布の上からうっすらと女性器の形が浮き上がっていた。

「ほら、言うことあるだろ。女子部には無いとは言わせないぞ」
 宮井が耳そばで囁く。

「指導、お願いします!!」
 良美はヤケクソのような大声を出した。
 もちろん納得しているわけではないが土壇場になれば開き直れる心の強さ。
 スポーツ選手としての良美の精神力を表すものであった。

「俺はな。前からお前のことが気に入らなかったんだよ。いつも男子を馬鹿にする態度ばかりとるお前がな」

「文句があるなら直接言えばいいじゃない。こんな形でうっぷんを晴らすなんて馬鹿じゃないの」 

 強がりを言っても事態は悪化するばかりだと言うのに、良美はこの期に及んでも相手を挑発した。
 その声を聞いた宮井の手が大きく唸る。
 パシーーーン。右の尻に平手を食らうと良美の肩がバネのように大きく飛び跳ね、目がギョロと開く。

「あ、あぁ」
 予想を遥かに超えるショックに彼女の心は震えた。
 痛みそのものは大したこと無い。同級生の憎き宮井に尻を叩かれた現実が身体と心を蝕んだ。

「鬱憤?そんなんじゃねえよ。クラスメートとしてその性格を直してやろうと思ってな」

 宮井の手が尻から離れた。相当気持ちよかったのか顔がニヤけている。
 二発目が同じ場所に放たれる。パッシーンの音と共に宮井のごつい指が尻にめり込む。
 今度は先程よりも音が大きかった。
「あーー」
 かつて聞いたことがない良美の声が響く。
 今度ははっきりと痛みを感じているような叫び。

「これが本物の尻叩きだ。同じところを叩かれると脳天まで痺れるだろ」
 宮井は1年に向かってこっち来いと指示を出す。
 8人の1年が立ち上がる。大輔も仕方がなく良美のもとへ行った。

「うわ。すげーエロいな」
 良美のパンツを間近に見た1年の1人が言った。
 確かに側に来ると予想以上にヤバイ格好だった。
 女がお尻を持ち上げて足を開くとここまでエロくなるのか
 ある意味、生の尻を写した写真よりも嫌らしく思えた
 
「や、やだあ………」
 良美の顔が真っ赤に染まる。
 パンツ丸出しでお尻を突き出した姿のままこれだけの男に囲まれたのだから当たり前の反応だった。

「俺からかよ」
 パーン。まずは1人目が叩く。
 弱かったのか良美の悲鳴は聞こえない。ピクリと反応しただけだ。
 続いてパン、パンの音とともに2人目3人目と順調に回しが行われる。

 良美は唇を噛み締め、声を出さないように耐える。
 だがどれだけ本人が我慢しても叩かれている尻は無傷では済まない。
 当然のように彼女のパンツからハミ出ていた真っ白な臀部はみるみるうちに真っ赤に染まっていく。
 尻は叩かれるたびに、まるでつきたての餅のようにぷるんぷるんと波を打った。

 回し罰そのものは週に何回か行わるもので特に珍しいものではない。
 誰もが慣れたものなはずであったが、明らかに人によって強弱が違っていた。
 それは同情心の有無の現れ。1年男子にとっても同学年の女子の下着を間近に見て尻を叩く行為に抵抗感を持つ生徒は何人もいた。
 いくら尻叩きの話で盛り上がっていても、実際にやるとなるとやはり次元が違う。

 微妙な空気が漂う中、程なくして大輔の番がやっている。
 彼はゆっくりと良美の真後ろに立った。

(う、)
 パンツに包まれたお尻を真後ろから見て大輔は思わず言葉を失った。
 叩かれたせいなのか。それとも極限まで高められた羞恥のせいなのか。 
 良美のパンツは汗を吸い、お尻の色や中央にある裂け目までもがうっすらと透けて見えていた。 
 誰がやったのか真っ白な太腿にまで綺麗な手形が付けられている。
 それは男として性的な意味を感じさずを得なかった。

 良美は軽く頭を持ち上げると大輔と視線がぶつかる。

「大輔……ごめん」
 目が合うとなぜか彼女のほうが謝った
 大輔は言葉の意味が理解できなかった。
 今、パンツを見ているは自分であり本当なら烈火のごとく怒られるはずだったからだ。

 マジマジと見ているとピクンとお尻が震え、肉が僅かに締まった。
 パンツに覆われているため外見は殆ど変わらないが、必死に耐えている感じが伝わった。

(意地っ張りが……)
 こんな目にあっても良美は泣き言を一切いわなかった。 
 『見ないで』『許して』と言えば手心を加える男子ももっと増えただろうにまったくしようとしない。
 大輔はそんな乱暴者で気が合う幼馴染に敬意を払った。

 敬意を感じるからこそ……彼は力いっぱいに彼女の尻を叩いた。
 手を抜くのは逆に失礼だと思ったからだ
 ぱっちーーーんと叩かれた打撃音が聞こえた瞬間、良美の悲痛な声が場内に響いた。

敗北乙女エクスタシー Vol.24敗北乙女エクスタシー Vol.24
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