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良美の尻を叩き終えた大輔は次の生徒の邪魔にならないようにそっと後方へ下がった。
そして感触を思い出すように拳を軽く握る。
男子の尻こそ飽きるほど叩かされたが、女子を叩いたのはもちろん初めてだった。
普通なら決して触ることもない女子の秘めた部分を叩いたその瞬間、何とも言えない快感と少しばかしの罪悪感が身体をかけめぐった。
「あう」
顔を真っ赤にした良美がまた尻を叩かれ声を上げた。
男子でも尻を5回も叩かれば音を上げるのに彼女は既に10回叩かれている。
しかも良美は女子だ。同じ年代の同級生たちにパンツを見られて、1人1人に叩かれる屈辱は男子の比ではない。
(尻を叩けば両者の意識が変わるか……)
大輔はふと新田主将が言ってたことを思い出した。
言葉の意味は未だによく理解できない。
だが、女子にも全裸練習と尻叩きは必要と言う新田の考えはなんとなくわかった。
これは部にとって1番大事な規律に繋がる問題。
仮に自分が主将を任されることになってもこの伝統は止めないだろう。
新入生の心を鍛えて支配下に置くにはうってつけの手段だからだ。
それは今現在リアルタイムでやられている自分自身が一番よく実感していた。
5分後
全ての回しが終わり良美はようやく開放された。涙目を軽くこすり、無言のままズボンを履き直す。
お尻が相当痛いのかその動作は辿々しい。
「ご指導ありがとう御座います」
無念さが全身から伝わってくるような負のオーラが漂いながら彼女はぼそりと言った。
その姿はとても先ほどまで男子を投げ飛ばしていた女子には見えない。
そんな良美を囲うように女子たちが集まる。
「大丈夫?」
「あはは……まぁなんとか」
強がってはいるが無理しているのは明らかだった。
「あの野郎」
身体の大きな2年優木桜子が1年男子を睨む。
いくら正当性があるとは言え、可愛い後輩が辛い目にあって黙っているわけにはいかないと言わんばかりの態度だった。
「何だ。やる気か。この巨乳ブス。次はお前の尻を叩いてもいいんだぞ」
良美の尻を叩いて気が大きくなっているのか普段は大人しい一年の1人が挑発じみたことを言った。
道場に不穏に空気が流れる。
このままではやばい。誰もがそんなことを思っていると、父こと監督の大声がした。
「全員整列!!」
ここまで椅子に座ってじっと見ていた監督が初めて行動を起こした。
監督の一言で先ほどまでの嫌な空気は吹き飛び、部員たちに緊張が走る。
誰もが素早く横一列に並んだ。
右から順に1年2年3年。そして1番左に女子が整列した。
「今日のお前らは何だ。弛んでいるなんてもんじゃないぞ!。わかっているのか」
監督は竹刀を床にバンバンと叩く。機嫌は最高に悪そうだった
「押忍!」
一斉に声を出す。男子の誰もが覚悟を決めた。
監督が弛んでいると言う時には決まって裸になって気を引き締めろの流れがあるからだ。
「全員脱衣!!」
「押忍!」
脱衣とは全裸になれと言う意味だ。
この学校の柔道部にとって脱衣命令は珍しくないので誰もが慣れていた
大輔も道着を脱ぎ、ズボンを降ろした。
(そういや女子はどこまで脱ぐんだろう)
男子は下着を付けていないので道着を脱げば全裸だが女子は違う。
同じ脱衣でも差はありそうだが、女子は真横の端っこにいるために全く見えない。
もちろん首を少し前に出して女子がいるほうを見れば見えるが、そんな行動はとても取れない。
監督のカミナリが落ちるのは間違いなかったからだ。
パタッと物音がやんだ。誰もが脱ぎ終わり、辺りは静まり返っている
竹刀を持った監督がゆっくりと右端から歩く。陰毛がない1年の前を通り過ぎり2年3年のほうへと歩いていく。
そして最後の女子の前で歩みを止めた。
大輔はそっと監督の姿を追うように女子の方を見た。
相変わらず身体はよく見えないが、床に白いブラとパンツか置かれているのが見えた。
(こんなところは男子と変わらないんだ)
女子もきちんと全裸になっていることに大輔は感心をした。
いくら良美が女子部も厳しいと言われても、この目で見るまでは納得していなかったからだ。
「ふん。あの新人の女教師も最低限の躾はしていたってことか。でもな。裸を晒しただけで顔を赤らめたり涙目になるようではまだまだ話にならん」
「はい!!」
「とりあえず、その弛んだ心を叩き直す。明日から女子は道場の掃除と出迎えを命じる」
「はい!!」
「掃除、出迎えはパンツ1枚。練習中も道着の下はパンツのみ。インナーとブラの着用を禁止する。その真っ白な乳房にたっぷり外気を吸わせてやれ」
「はい!!………ってえ?」
女子から当然のように戸惑いの声が出た。
明日からは男子に胸を見せてから部活をやれというのだから心中穏やかでいられるはずはない。
「何を驚いているか! まったく女子柔道部は脱衣の練習こそしていたようだが、肝心なことは何一つして来なかったようだな。お前たちは全裸でグラウンドを走ったことすらないだろ」
「ハイ。やったことありません。すみませんでした!」
「すみませんでした!」
金月の声に続いて女子が掛け声を出す。
監督は無茶苦茶なことを言ってるのに先程見せた不満そうな声はもう聞こえない。
「しかし安心しろ。この俺がその軟弱な心を鍛えてやる。俺の言うとおりにすれば校外練習だって平気な顔でこなせるようになる。しっかり付いてこい!」
「ハイ」
ちょっと弱々しい声。グラウンド以上にありえない不吉な単語を聞いて流石に不安が隠せないようだ。
「今日はここまで!! 2年、3年、女子は道着を着てよし。1年男子はそのまま全裸でグラウンド10周!」
「押忍!」
掛け声は出したが大輔は気が重くなった。
いくら慣れているとは言え、フルチンで外に出るのは当然抵抗があったからだ。
だから言って、モタモタしていたら怒られるのは間違いない。
1年は見苦しいものをブラブラさせながら出口へと向かう。
「なぁ、あれ見てみろよ」
一年の誰かが意味深なことを言った。
言葉につられて大輔はふと後ろを振り向く。
すると視界に肌色に覆われた女子たちの後ろ姿が飛び込んできた。
ちょうど良美は監督の指示通りに上半身裸のまま道着の袖を通しているところだった。
斜め後ろからなので全体の形はわからない。
だが、それでも服の上からは決してわからない丸みの帯びた柔らかそうな横乳がしっかりと見えた。
(あ、まず)
幼馴染の秘めた部分を見てしまった大輔は逃げるように目を逸らし外に出た。
もちろん見たいのは山々だったが、自分自身も全裸のため照れくさい。
そして何よりも覗き見したことがバレて嫌われることが怖かった。
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外に出ると、夕方だと言うのに真夏のような日差しが庇っていた。
木の上からはセミの声。グラウンドからは練習中と思われる人の声。
下校時間こそ過ぎたが、生徒の姿はまだあちらこちらにあった。
大輔は股間を隠しながらうんざりした顔をしていると、なぜか笑顔を見せながら宮井が近づいてくる。
「とっとと終わらせて帰ろうぜ」
宮井は無駄にデカイちんこを隠すこと無く言った。
恥ずかしがるわけでも隠すわけでもない。散々全裸で走らされたせいで完全に羞恥心が飛んでいるようだ。
「ああ、わかっている。嫌なのはわかるけど走るぞ」
大輔が言うと1年男子は文句を言いながら走り出す。
あまりに異様な光景だった。全裸の生徒が走っているだけでも異常なのに、どの男子も下の毛が無かったからだ。
「まったくこの部は好きだけど全裸特訓は勘弁してほしいわ」
大輔は思わず愚痴を言った。
グラウンドの回りには野球部やテニス部が練習をしている。
テニス部の中には女子の姿も少なからずいるが、あちらも全裸練習の経験者だけに慣れたもの。
全裸の男子がグラウンドを走っていても驚きもせず、ただ無言のまま目を逸らした。
これは見られている側としてはほぼベストの対応だった。下手な同情心は余計辛く感じるからだ。
「でも全裸特訓のおかげでアイツの尻も叩けたしオッパイも見れたんだから悪いことばかりじゃないと思うぞ」
「ん? 良美の胸が見えたの?」
「あまり大きくなかったけど乳首までばっちり。まぁ凄い睨まれたけど今更アイツ嫌われてもこちらもなんとも思わないっていうの」
「……」
2人の仲が悪いことは大輔は把握していた。
だから良美には柔道部を辞めるようにと忠告した。
でも良美は忠告を聞き入れず男子柔道部に入り、そして憎き相手に尻を叩かれ胸を見られた。
どこから見ても自業自得。大輔としてもだから言ったのにの思いは強かったが
「明日からはあれが見放題だからな。楽しみだわ」
仲のいい幼馴染が辛い目に合うのはやはり彼の心をチクリとさせた。