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翌日。
まるで生徒たちの登校を妨害するかのように踏切の警報器が鳴り響く。
踏切が閉じて10分は経つが未だに開く気配がない。
「ああ、糞。今日は早く学校に行きたかったのになんだこの踏切は」
大輔は開かない踏切の前でイライラを募らせていた。
今日は朝1番で学校に行って良美と話をしようと思っていたのに、これでは全てが台無しだった。
また電車が通り過ぎるが、遮断器は開かない。
周りには同じく踏切に引っかかった生徒たちが屯する。
イライラは誰もが同じのようだ。側にいる女子が愚痴っぽい声を出す。
「本当に開かないわねー 壊れているじゃないの。これ」
「いつもはこんなに長くないから事故でもあってダイヤが詰まっているんじゃないかな……って良美? なぜここにいる」
しれっと真横に目的の人物がいて驚く大輔。
掃除担当ならこんな時間にいるはずはなかったからだ
「何を驚いているのよ。通学途中に合うことだって別に珍しくないじゃない」
「いや、だって今日から掃除をしないといけないんだろ」
「掃除なら8時からよ」
「8時?」
大輔は首を傾げる。
自分の時は7時だったからだ。この1時間の差は何を意味するのだろうか。
再び遮断器の向こう側に電車が通過していくがまだ遮断機は上がらない
「ええっと。昨日は大変だったな」
女子の掃除事情はわからないが、無事会えたのは好都合。
大輔は昨日のことを慰めようとした。
あんな目にあったのだから、さぞかし落ち込んでいると思いきや。
「散々だったわねー でもアイツを投げ飛ばした時は気持ちよかったわよ」
予想に反して冗談っぽくぺろりと下を出す良美。
昨日、尻を叩かれて半泣きになっていた人物とは思えないほど明るい。
まったく凝りていないようだ。
「あと、ごめん。まさか父さんが初日から脱衣を命じるなんて」
大輔からはろくに見えなかったが、あのとき父は女子の真正面にいた。
つまり良美は父に裸を隅々まで見られたはず。
「あ〜あれね。確かに恥ずかしくて泣きそうにもなったけど別に監督を恨んだりはしていないよ。こうなることは最初からわかって男子柔道部に入ったんだし……」
静かな口調で話す良美の姿に大輔は一瞬どきりとした。
強がりの裏に隠された女の哀しみが妙に色っぽく見えたからだ。
「今日から出迎えもやらないといけないんだよな。つまりその、なんだ」
大輔がゴニョゴニョと口を濁らす。
「ははっ、パンツ1枚で出迎えね。なるべく見ないでくれると助かるかなー」
良美は頬を染めながら恥ずかしそうに言った。
ようやく踏切が開き、詰まっていた通行人が一斉に歩き出す
「じゃ、私は先に行くね。Ciao!」
良美は元気よく走っていく。
慰めるまでもなく彼女は明るい。
だが、やはりいつもの元気とは違う空元気なような気がした。
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急ぐ理由が無くなった大輔はゆっくりと登校した。
校門をくぐると、見飽きた5階建ての校舎と目新しい体育館が姿を現す。
公開練習の時は体育館入り口に殺到する男子たちの姿もない。
今日はどの部も通常の朝練習をしていたようだ。
平穏な光景を眺めながら大輔はいつものように自分のクラスに入り、いつものよつに自分の席に着く。
「ふう」と安堵の息を吐く間もなく、宮井が駆け寄り話しかけてくる。
「なあなあ、今頃あの女子たちがパンツ1枚で床とか拭いてると思うと興奮するよな。おっぱい丸出しだぜ」
とても朝の第一声とは思えない話題に大輔は苦笑する。
色々と問題のある友人だが、宮井のこういう飾り気のない性格は嫌いではなかった。
本人たちは絶対に違うと言うだろうが、どことなく雰囲気が良美と似ていた。
「新入部員名物の掃除か。俺達も入部早々にやったよな。全裸で」
大輔は数ヶ月前にやらされたことを思い出す。
ちんぽをブラブラさせながら床を拭く作業は今思っても情けない姿だった
「初めての全裸作業だったから恥ずかしかったよな。窓掃除とか外から筒抜けだし本当にありえねーわ」
「俺は出迎えのほうが嫌だったな。なぜ毎日毎日、裸で挨拶しないといけないんだ。この部はふざけているのかと本気で思ったものだよ」
「でもその伝統のおかげで今度は見る側になったわけだ。あのクソ生意気な女も毎日おっぱいを見られて尻を叩かれれば自分がどれだけ小さな存在かわかるだろう」
「まあ……な」
宮井の酷い考えに思わず大輔が頷く。
経験者だからこそ新入部員の儀式の過酷さがわかっているからだ。
出迎えをやらされたのはたった一ヶ月間。
その一ヶ月で安っぽいプライドや反抗心は完膚なきまでに破壊された。
休み時間が終わるチャイムが鳴った。
ぞろぞろと教室に入ってくる生徒たち。その中には掃除を終えた良美もいた。
良美は大輔に向かってニコっと笑い、手を降って自分の席へと歩いていった。
「そうだ大輔。今日から毎日、良美のパンツの色を掛けようぜ。初日は慎ましく水玉と予想するがお前はどうよ」
良美の姿を見て思いついたのか、松井が最高に頭の悪い賭け勝負を提案してきた。
クラスメイトの下着の色なんて確認できないのだから普通ならこんな掛けは成立しない。
そう。良美が出迎えや脱衣の義務を背負っているからこそ成り立つ掛けだった。
「俺は白だな」
大輔は無意識のうちにボソリと呟く。
いくら綺麗事を言ってても年頃の少年。
幼馴染の下着の色は何度も予想し妄想してきた。
「よし。決まり。期間は俺達が二年に上がるまで。負けた方はジュース1本な」
少なくても良美が1年のうちは彼女の下着を見ない日はないはず。
もし、出迎えが無い日があっても脱衣の指示を出して下着の色を確認すればいい。
宮井の出した掛けの内容は大輔が考えているよりも遥かに残酷で卑劣なものだった。
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夕方。
全ての授業が終わり、雑用も全て片付け終えた大輔と宮井は急いで部室へと向かった。
「くそ、余計な用事のせいで遅くなったな。何で今日に限ってあんなもん運ばせるんだよ。あの教師は」
宮井が駆け足で息を切らしながら文句を言った。
時間的には遅刻ギリギリ。既に『出迎え』が終わっていてもおかしくはない。
「間に合うかな」
大輔は間に合って欲しいような欲しくないような微妙な気持ちを抱えながら道場がある体育館横の廊下を駆け抜けた。
次の角を曲がれば更衣室。もし終わっていなければ、そこには4人の女子がパンツ1枚で立っているはずだった。
急いて角を曲がり、2人はようやく目的の場所に辿り着いた。
息を切らしながら更衣室の出入り口を見る大輔たち。
そこには予想に反して1人の男子と2人の女子が立っていた。
女子の1人は金月。もちろんパンツ1枚だ。
そしてもう1人。飾り気のない純白パンツを履いた背の大きな女子。良美だった。
「遅かったな。なにをしていたんだ。早く来い」
2人の指導をしていたらしい新田が手巻きをする。
どうやら女子たちの前に立って真正面から見ろと言いたいらしい。
「うわ、すげ」
宮井が興奮しながら女子2人に近づく。
大輔もおそるおそる良美の前に立つ。
すると彼女は下唇を噛み締め、目をそらした。
普段はあまり見ないしかめっ面な表情。そのくせ顔全体は赤い。
なぜか頬が腫れ上がっているように見えた。
ゆっくりと視線が頭部より下に向けられる。
やや筋肉質なむき出しの肩。鎖骨のライン。遠慮がちに盛り上がった初々しい2つの乳房。
乳首に近づくにつれて肌色がどんどん白くなっていった。
それはこの部分が決して日が当たらない秘めた部分であることを否応無しに感じさせた。
大輔の喉がゴクリと鳴る。彼はついに乳房の全体を見た。
予想より彼女の胸は小粒な大きさだった。小さなお椀ぐらいのなだらかな膨らみでしかなく、乳首の色も薄ピンクで小さい。
背が高さを考えると乳房も育っていると思われがちだが、そんなことなく子供っぽい未完成な体つきだった。
(よく見ると右の胸のほうが僅かに大きいんだな……)
男からすれば多少の期待外れ感がある乳房だったが、それでも大輔は初めて見る幼馴染の身体から目が離せない。
本人が気にしているであろう小さな乳房もアンバランスさも全てが愛しく思えた。
「やだ……」
真剣になってマジマジと見ていると声がした。
大輔が視線を戻すと、そこには苦悶と屈辱感を表した良美の顔があった。
あまりに暗い目つきに彼は戸惑った。とても覚悟の上でやっている姿には見えなかったからだ。
そう。これではまるで力ずくで脱がされた女の目。
「こらこら、お前ら。女の裸に夢中なのはわかるが何か言うことあるだろ」
突然背後から新田主将の楽しそうな声がした。
そうだった。先輩に出会っていたのにまだ挨拶をしていない
「押忍! 女子のご指導お疲れ様です」
オッパイに気を取られていた2人は不味いとばかりに挨拶をした。
いつもなら怒られるパターンだが今日は機嫌がいいのか笑ってる。
「ははっ。本当にコイツの指導は大変だったぞ。最初は男が来るたびに胸を隠そうとしてそのたびにビンタだから手が痛くなったわ。でもようやく見られても姿勢を維持出来るようになったな。偉いぞ」
「ハイ」
良美のぶっきらぼうな声。不満を感じさせる声でとても褒められているような感じではない。
「こいつそんなに大変だったですか。そんな大した胸でもないくせに」
宮井が良美の可愛らしい乳房を見ながら言った。
「ああ、酷かったな。特に同じ1年が来たら殴りに掛かったりと大暴れだったぞ。でも10人目ぐらいからは諦めたのが普通に身体を開き続けるようになった。今ではこの通りクラスメートのお前らが来ても胸を隠さない。成長を褒めてやってくれや」
新田は自分の指導の成果を自慢気に話し、宮井は良美のピンク色の乳首を指差し「お前も偉いぞー」とよくわからないことを言ってる。
「その点、金月は立派だ。最初からまったく隠そうともしない。流石は県を代表する柔道選手。そのあたりの女とは体も心も違う」
新田の言葉につられて大輔が金月を見る
自身の心臓がドクンと鳴った気がした。
そこには見事なプロポーションの裸体があった。
「うわぁ…」
思わず変な声が出た。彼の目は金月の豊満な乳房に釘付けになっていた。
デカイ。それでいてスポーツ選手として邪魔になる感じでもない。
これが3年の身体。女子柔道部の主将の裸。どこか子供っぽい良美の身体とはまるで違う。
見事なまでに形の整ったお椀型の乳房を見せられ、大輔たちは言葉を失った
「お見苦しいものを見せてすみません。今日もご指導よろしくお願いします」
あからさまに言わされている感じがする台詞を言いながら、金月は挨拶をした。
乳房はもちろん水色のパンツもまるで隠さない。まるで服を着ているかのような
見事なまでの綺麗な姿勢でのお辞儀だった。
新田の言う通り一見すると冷静そのもの。完璧に出迎えをやっている。
だが、よくよく観察してみるとやはり女子の恥じらいは完全に隠しきれていない。
その証拠に抜けるような白い乳房の頂点にある乳首は慄えているし顔の表情も硬い。
表にこそ出していないが後輩である1年男子に胸を見られて屈辱を感じているのは間違いなかった。
「あ、ああ」
大輔は思わず後ずさりをする。自然と距離を取った。
今の金月は先輩ではなく1年と同じ存在。裸になっているのも部のルールに則ったもの。
彼女の胸を見ることは何1つ問題がない行動のはずなのに異様な罪悪感にかられた。