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「話があります」
5時間目が終わりくつろでいると、大輔は1人の女子生徒に呼び出された。
女子は「こっちに来て」と言いながらすぐ横にある使われていない教室へ入る。
ワケがわからないまま大輔も教室の中へ入った。
その女子は同じ1年とは思えない背の低さがとても可愛らしく、ハムスターを連想させた。
男なら誰もが小動物系の外見に騙され、守ってあげたいと思うだろう。
しかし相手の力量を図る能力に長けた柔道選手の彼にはわかる。
この子の外見に騙されてはいけないと。
「えっと確か君は女子柔道部の……誰だっけ」
警戒しながら名を問う。
「梅宮神奈です。柔道部で挨拶して以来ですね」
ニコリと男心を擽る笑顔を見せた。
大輔は咄嗟に父が見せてくれた全裸自己紹介の写真の小さなお尻の子を思い出す。
ボリュームこそ無いがシミ1つ無い可愛らしい臀部だった。
「覚えているよ。何か用?」
大輔は記憶にあると言ったが実際はあの綺麗な尻の子ぐらいの印象しかない。
この神奈と名乗る女子がどんな人物なのかはまるでわからなかった。
「ちょっと話がしたくて。ズバリ聞きますけど大輔くんとよっちゃんは恋人ではないですよね?」
まったく予想していない単語に大輔は戸惑った
よっちゃんって良美のことか。って恋人?
この子はなにを勘違いしているのかと。
「違う違う。あいつとはそんなんじゃないよ。ただの幼馴染」
大輔は全力で否定した。
確かに異性として見ていないと言えば嘘になる。
実際に良美の胸を初めて見た興奮は今でも忘れられないし、あの時に撮った上半身裸のパンツ1枚の写真は何度も見直すほどお気に入りだ
でもそれが恋心かと言うと、やはり違うと言わざるを得なかった。
「本当ですかー」
疑いの目。なんと聞かれても答えは変わらない
「完全に誤解。もし、そんな仲だったら張り倒しても柔道部に入れさせない」
そう。良美の乳房を見た時に感じたものは純粋な性欲。
小刻みに震えていた真っ白な乳房。恥ずかしそうに顔を背け、悔しさを表すかのように噛み締めていた唇。
彼女の気持ちが手に取るようにわかる残酷なシーンにも関わらず、大輔は目が離せなかった。
これが恋のはずがない。
「じゃ神奈のお願い。聞いてくれるかな」
背の小さな神奈は上目遣いでじっと見つめてくる。
可愛い。まるで子供にねだられている親のような雰囲気が漂う。
柔道家としての警告より男の欲望が抑えきれない。
大輔はにやけた顔で、
「自分に出来ることなら」
と答えた。
「あ〜よかった。それじゃ言うね。部を辞めてくれないかな」
神奈はニコリと笑顔を見せながら、予想だにしないことを言った
「はい?」
唐突なお願いに大輔は思わず乾いた声が出た。
「分からないかなぁ。本当に鈍感な人ね。昨日ね。よっちゃんが泣いていたのよ。大輔にみっともないところを見られたって」
「は? あいつが泣いていた? 確かに脱いでいるときは恥ずかしそうだったけど、そこまで気にしてるようには見えなかったなぁ」
昨日は練習中に良美の乳房をガン見して怒られはした。
だがあれも本気の喧嘩ではないし、後腐れもなかった。
その証拠に尻を叩かれた翌日も、今日も彼女の態度は普段と変わらない。
流石に気が強いと感心したものだが。
「これ以上よっちゃんを悲しませたくないの。もちろん神奈もあんたなんかに裸を見られたくないし。だからお願い、やめてね(ハート)」
これだけ話してようやく神奈のことが少しわかってきたと思った。
この子は自分が可愛いことを自覚している。
上手く願えば男が断らないことを分かって行動しているのだ。
「やだよ。そもそも君の命令をなぜ僕が聞かないといけないの」
「ひどい! クラスの男子はみんな神奈の言うことを聞いてくれるのになんであんたはそんな態度を取れるの?」
芝居がかった言い回しに大輔はムッとした。
そもそも同じ1年なのになぜここまで言われないといけないのか。
こんな女子こそ脱衣の命令で教育すべきという考えが脳裏をよぎる。
スタイル抜群の金月先輩。乳房の形が良い良美。
制服の上から見るとかなり大きそうだがこの子はどんなおっぱいなんだろうか。
大輔が口を開こうとすると休み時間終了のチャイムが鳴った。
学生である以上、もうこれ以上ここにはいられない。
「はぁ。神奈わかってしまいました。私はあなたが嫌いです」
神奈は可愛らしくほっぺをプウとさせる。
どこまで演技でどこまで素なのかわからないが、先程までの緊張感が一気に崩されるのを感じた。
怒らせても決定的な破綻にはならない。こういうところも人から愛されやすい要素の一つなんだろう。
「奇遇だな。俺もお前のようなぶりっこな女子は苦手だわ」
この子は良くも悪くも計算高い。
もしかしたら悪気もないのかもしれないが、やはり好きにはなれなかった
「怒ったからもう帰る」
プンプンした表情をさせながら神奈は出口に向かう。
ちょこちょこ歩く愛敬のある後ろ姿を見ていた大輔は最後にちょっとだけこれまでの意地悪をしようと思った。
女子柔道部員の立場を少し思い出させるだけ。
「今日はお前も部活に来いよ。そのデカ胸をきちんと見てやるからさ」
言葉に反応するかのように振り向く神奈。
そして恥ずかしそうに胸の前をさっと腕で隠す。
「ううう」
つぶらな目には先程までなかった涙が溜まってきている
当たり前だが出迎えをやらないといけないことは相当なプレッシャーになっているようだ。
「あ、ごめん」
可愛らしい罵倒を言ってると思っていたが、予想外な反応に戸惑った。
結局、彼女は何も言わずそのまま顔を俯けたまま出ていく。
辛そうに扉を開けて出ていく後ろ姿は、どこか悲壮感が漂っていた。
(本当に掴みどころがない女子だな)
男子に女子の気持ちはわからない。服を脱ぎ裸になることがどれだけ辛いかなんて想像もできない。
それでも彼には確信があった。神奈もあの金月に認められた部員。
外見が可愛く性格が悪いだけではない。もっと凄いものを持っているはずだと。
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放課後。
大輔は珍しく一人で部活に向かった。
宮井は今日はどうしても早く帰らないといけないから休むと言って帰ってしまったからだ。
(あの子はまだ来ないだろうな)
先程の印象では一度決めたことから逃げたりする子には見えなかった。
しかしあれだけ険悪な中になったのだ。少なくても今日は来るわけない。
喧嘩したなりの男子の前で、わざわざ乳房を出しに来るなんて絶対にありえないと思った。
そう。曲がり角から聞こえる男子生徒と女子生徒の声を聞くまでは。
「いやぁこんな立派な一年がいるのは思わなかったな」
「本当に優秀な一年だ。男子でも初日は口も聞けなくなる人も多いというのに。大きいのは胸だけではないな。心もでかい」
男子の声が終わると続けて女子の声がした。
「……もう先輩ったらやだなぁ。恥ずかしいからアッチ向いてくれると嬉しいな」
「ははっ、わかったわかった」
(まさか)
聞き覚えがある声を聞いた大輔は急いで角を曲がる。
すると更衣室の前には三人のパンツ1枚の女子と数人の男子がいた。
一番右端には金月。相変わらず見事な乳房とプロポーションを見せている。
二年男子と話している後輩のことが気になるのか、珍しく不安そうな顔をしていた。
どこか影がある雰囲気と薄ピンクの乳首が妙にマッチしており、なんとも言えないいやらしさを感じされた。
真ん中にいるのは良美。金月とは違い硬い表情でじっと下を向いている。
ちんまりした乳房をさらけ出しながら他人のことまで気にすら余裕はまったくないようだ。
左端の女子の前に集まっていた二年生が言う。
「じゃ頑張れよ。なにか困ったことがあったらいくらでも言ってくれ」
「はい。頑張りますぅ」
二年生が女子の前から去る。
すると大輔の視界に初めて見る大きなバストが飛び込んだ。
(ぶっ!!)
何か言わなくてはいけないのに彼は言葉を失った。
なんだ。この子は。なぜこんなこと出来るのかと疑問が渦巻く、
「あ、先程はどうも。来てしまいましたぁ」
神奈はどこか含みのあるドヤ顔をしながら手を降る。
すると乳房はぽよんと見たことがない動きで揺れた
でかいと大輔は思った。
こんなに背が小さいのに良美よりずっと大きい。
形こそ負けるが単純なバストサイズなら金月よりも大きいかもしれない。
なんでこんなちんちくりんなのに乳房だけここまで立派なのか
体の線も華奢で細い体だというのに、2つの膨らみはまるで風船のように膨らみ、肉質も重量感もある。
少し大きめの乳首と合わさってまさに塊。
「ああ……よ、く来たな」
大輔は迫力ある巨乳を見せてくる神奈の迫力に完全に飲まれていた。
視線が丸みを媚びた乳房に行き、少し大人っぽい黒のパンツを行く。
そして最後に目をそらした。
普通、喧嘩した相手に裸は見せない。
人間の本能とも言える当たり前の行動原理をこの子は逆手に取ったのだ。
どうせ見せることになるのだったら相手が最大限驚き、反撃できるタイミングを狙った。
それはまさに喧嘩をした直後の今しかない。
恥ずかしい気持ちよりも男を手玉に取る方を選ぶ。
小さな外見からは考えられない恐ろしい女子だった。
大輔の頬に冷汗が浮かんだ。
「なに? 神奈と大輔って面識あったの?」
顔を真っ赤に染めた良美が言う。
こんな格好で話しかければ余計見られるのは間違いなかったが、それでも聞きたかったようだ。
「いや、さっきちょっと合っただけだよ」
大輔は少しだけ見慣れた彼女の可愛らしい乳房と初めて見るシマシマのパンツに視線を走らせながら普段と同じように話した。
「ふ、ふーん」
乳房を見られながらも良美は普段通りに喋ろうとしているが、うまく行かない。
裸体を震わせ、手をモジモジとさせた。
恥ずかしさで頭が回転していないようだ
(やはり俺達とは違うか)
男子の場合、出迎え二日目となれば笑い声を出るぐらいの余裕が生まれたが、やはり女子は同じようにはいかないようだ。
昨日のように胸こそ隠そうとしないが、それでもパニクっているのがわかる。
「そう言えば新田主将は?」
大輔はぼそっと疑問を口にした
「主将でしたらここはもう見なくてもいいだろうと言って先に行かれました」
すると半裸だというのに金月は普段通りっぽく喋った。
立派な乳房に視線を向けても動じる様子は見えない。
「なるほど」
出迎え中だと言うのに主将がいない。
それは主将がこの女子たちなら監視してなくても問題ないと判断したことに他ならなかった。
見ていなくてもインチキはしない。
実際にあれだけ胸を隠そうとして殴られていた良美も今日は口をへの字にさせながらも乙女の乳房を晒している。
大輔は3人を見直した。
冷静そうに振る舞う金月。男子への見栄が全てのような神奈。
誰もが胸を晒している。本音を言えば今すぐにでも隠したいだろうに誰もしようとしない。
それはまさに女の意地。
肌を晒す覚悟の根拠は一人一人違うだろうが、信じる心は同じだった
(主将も大変だな。これは)
この部の育成法はいたって単純。
新入部員のプライドや心を折って一から鍛え直すだけ。
しかしその伝統はすでに女子柔道部で鍛えられている金月たちにはなかなか通用しない。
裸にされても尻を叩かれても時間とともに回復してしまう。
いや、回復どころかより強固になりつつある感じすらする。
やはり女子柔道部の考えは正しかったと思いとともに。
これは男子柔道部にとっても都合が悪いことだった。
先程の2年男子のように女子に賛同する流れが生まれる可能性もあるからだ。
話し声とともに更衣室から2年が出てくる
もう時間のようだ。大輔も着替えるために急いで更衣室へと向かった。
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それから5分後。
本日参加の部員は全て道場に集まっていた。
しかし先に来たはずの新田主将はまだ現れない。
その代わりのように道場の中央には見慣れない汚いダンボールが置かれていた。
一部の男子はダンボールの中を見ながらざわざわと騒ぐ。
「なんじゃこりゃ。ゴミ箱か」
一緒になってダンボールの中を見た大輔は目を細めた。
箱そのものが相当な年期物なのかホコリだらけ。
中には使い古しの大量の縄跳びや紐。まるで雑巾のようなタオルの山。
汚いガムテープやら玩具のシールまである。
大半はなぜここに置かれているのかわからないものばかりだった。
これらを使った練習は一度も行われていなかったからだ。
そう。一つを除いては。
「おい、冗談じゃないぞ。またアレをやるんじゃないだろうな」
「いや待て。俺達一年はもうやった。やるなら女子だろ」
大輔は冷や汗を流しながら良美たちを見た。
女子は当然なんのことがわからない。
男子の騒動を不思議そうな顔で見ているだけだった。