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「大輔 !!」
ぼーと神奈の着衣シーンを見ていたら、後ろから新田主将の呼ぶ声がした。
気がつけば先程までの聞こえていた規則的な音が消えている。どうやら良美の気合い入れが終わったようだ。
大輔は幼馴染がようやく尻叩きから開放されたことに安堵し、急いで振り向く……が、
(げっ)
先ほどと何も変わらない肌色の固まりが目に飛び込み、思わず天を仰ぐ。
良美はまだ立ち上がろうとしている段階で、先ほどとまったく変わらない全裸のままだった。
目が合うと当然のように睨みつけてくる。
このまま近寄って真正面から全裸を見てしまえば、後から何を言われるかわかったものじゃない。
「早くしろ」
仕方がないと思った大輔は少し遠回りをすることにした。
良美の背中に向かって駆け寄る。
近くで見ると良美の尻は予想以上に酷い有様で真っ赤に腫れ上がっていた。
先程まではあった肌色の部分も、前日の打身のアザも一切見えない。
「ありがとうございました!!」
良美は全裸のまま直立不動のポーズを取り、決められたとおりのお礼をいって顔を上げる。
彼女はかつて見たことがないほど恐い表情をしていた。
裸を晒しながら頬や尻を叩かれて興奮したわけでもないだろうが、全身は熱っているように赤みを増し、いつもは小さな乳首がピンと立っている。
目つきの鋭さの相まっていつもとは明らかに雰囲気が違う。
(って俺は何を見ているんだ)
近距離で乳首をガン見していた大輔はようやく気がついた。
いくら背後から近寄っても真横にまで来てしまえば殆ど意味がないことを。
おそるおそる良美の顔を見直すと予想通り凄い顔をして睨みつけている。
よく見ると手足がプルプルと震えている。
裸を見ていたことに怒っているのは明らかだった。
「なんだ。まだ恥ずかしいのか。まったく仕方がないな」
そんな態度を見ていた新田は一年女子らしい柔らかな左右の頬にパン!パン!パン!パン!と今日何度目かもわからない往復ビンタをする。
先ほどのパンツ脱ぎの練習にしても良美が僅かでも乳房やあそこを隠そうとするとすかさず体罰が与えられた
それは、たかが裸を晒すことすら躊躇う甘ったれた心を叩き直す男子柔道部の伝統に他ならない。
良美の体はよろけること無く理不尽なビンタを受け入れた。
少し腫れた両方の頬。ほんのり赤く染まった全身。ピンと立っている乳首。真っ赤に腫れ上がり普段より一回り大きく見える尻肉。
なんとも言えない独特の凄みを纏った良美が大きな声で言う。
「いえ、もう恥ずかしくありません!!」
この学校の運動部員として当たり前の宣言をすると新田は着衣の許可を出した。
すると良美は急いでパンツに足を通し、ぐっと引き上げた。
あれだけ尻が腫れていれば痛みは相当あるはず。それなのにパンツを履くことを優先する。
先程の恥ずかしくない宣言が嘘っぱちであることは間違いなかった
「まったく。もう少ししっかりしてくれよ。前も言ったがお前は監督が期待する優秀な部員なんだからその自覚を持たないといかんぞ」
「優秀? 私がですか? 」
「そうだ。もちろん俺も同意見だ。お前も金月も実力を認めているからこそ俺が自ら指導をしている。無能の尻を叩いてやるほど暇じゃないからな。それを忘れるなよ」
道着を着なおした良美は僅かに考え込む仕草をする。
しかし、それ以上追求することはなかった。
話の違和感よりも監督や主将と言った実力者2人から優秀と言われたことが嬉しいようだ。
一気にモチベーションが上がったような声を出す
「もう少しだけ付き合ってください。今度こそは負けません!!」
「今のお前じゃ結果は見えているが……まぁいいだろう」
「ありがとうございます!!!」
連日の全裸罰と尻叩きで切れたのか、良美からは異様な勢いと殺気のようなものが漂う。
女のプライドに掛けて倒す意気込みがありありと感じられた。
「お願いします!」
「お願いします!!」
掛け声とともに良美が一気に攻める。
しかし新田は相変わらずのらりくらりと躱す。
前に踏み込めばその分だけ下がる。掴みどころのない動きだった。
焦った良美が強引に投げを打とうする。しかし新田はその力を利用し彼女の道着の襟元をズルリとずらす。
狙い通りに右肩と素朴な大きさの右乳房が露出する。
大輔の目にもピンク色の乳首がはっきりと見えた。
先程までならこれで良美の動きが鈍った。だが、今回は違う。
むしろ新田が仕掛けた余計な動きの隙を逃すまいと、更なる攻めへ動こうとするが。
「あっ。まずい」
思わず大輔が声を出す。その隙ですら罠だったのだ。
新田は不安定になった良美の体をあっさりと投げ飛ばして終わった。
「ツメは甘いが踏み込みは悪くない。今のタイミングを忘れるな」
形のいい右乳房を出しながら大の字になっている良美に新田は手を差し伸べた。
会心の攻めを軽く返されて相当ショックのようだが、それでも道着を素早く直し立ち上がる
「ハイ!!ありがとうございました!!」
大声でお礼を言うが、やはり負けた悔しさは滲み出ていた。
胸元に手をやり考え込む仕草を見せる。
「なぜ負けたかわかるか? 理由は簡単だ。お前は胸を見られたって構わないつもりで突っ込んできただろ。でもそれでは勝てない。なぜなら構わないと言う思いそのものが、隠しきれていない羞恥心に他ならないからだ。そんな勢いだけの攻撃が格上に通用するはずがない」
新田の勝ち誇った態度に良美は黙りこくる。
彼が言ってることは全て事実だった。理不尽な尻叩きをやられて頭に血がのぼり、意識が半分飛びかけていた。
それはただのトリップ状態。今なら勝てるという根拠のない自信。
しかしそれは冷静さを欠いただけの勘違い状態でしかなかったのだ。
「胸を出せ」
「は?」
新田が唐突に指示を出したが良美は動かない。
数秒が立ち、ようやく言葉の意味を理解したのか彼女は顔をやや歪ませながらも胸元を開き、左右の乳房をこぼれさせる。
相変わらず乳首はピンと尖っていた。先ほどの対決の激しさを物語るかのように汗が首筋から流れ、健康的なエロスを感じさせた。
命じてから5秒ぐらいで曝け出させた乳房を見て新田が深いため息を付く。
女子部員が男子部員たちの前で乳房を出す行為そのものが物凄いことだと言うのにまったく満足していないようだった。
「やはり駄目だな。この間が試合では命乗りになると言ってるのに話にならない。そこでだ。良美には我が部の連絡係をやってもらう。心を鍛えるには丁度いいしな。大輔もあれをやって随分たくましくなった。そうだろ」
「ええ…まぁ」
大輔は思いっきり嫌な顔をした。
連絡係は将来主将になると思われる有望な1年にやらせるのが通例。
だからやっておけと言われて引き受けたのが運のつき。
確かに他の部活にも顔を聞くようになった。今後のメリットは大きかったのも事実。
だが、連絡係の仕事は悪夢でしかないのもまた事実だった。
大輔が厳しい顔をしているとオッパイ丸出しのままの良美が小声で囁く。
「どういうこと?さっきから話が見えないけど」
「連絡係は部活終了後に全運動部主将たちが集まる部屋に行って一日無事に終わったことを報告をする仕事なんだが」
「他の部の主将なんて1年からしたら雲の上の存在じゃない。そんな人たちが集まるところで報告するのは少し怖いわね」
「そう。本当は1年ごときが声を掛けてもいい先輩たちではない。だからそれ相当の格好が要求されて……その」
大輔の目が泳いだ。目の前の乳房と喋りづらい話に戸惑いが見られる。
「???」
良美はさっぱりわからないという顔をすると新田がずばりの答えを出した。
「ようするに他の運動部の主将と合う時は素っ裸になること。廊下ですれ違った時も同じ。きちんと脱いで挨拶。連絡係は部の顔だから失礼がないように最大限の敬意を示す。ただそれだけ役目だ」
「ふーん。連絡係は裸なのね。なかなか厳し………って、裸???」
大輔は俯きながらいう。
「だから嫌なんだよ。みっともないなんてもんじゃないからな。良美も見たことあるだろう。俺がやっているのを」
「あっ」
確かに良美は大輔の裸を見たことがあった。
一緒に廊下を歩いていたら大輔が突然制服を脱ぎ全裸になって先輩に挨拶した時に股間にある小さなものが見えてしまったのだ。
始めてみた幼馴染の男のモノに頭が混乱した。
すると大輔は伝統のせいだから今のは忘れてくれと恥ずかしそうにいった。
部活の先輩は絶対。だから裸で挨拶。
男子柔道部の伝統とはなんてくだらないのかと当時は思っていたが、あれは柔道部の先輩ですら無かったのだ。
「でも女子にそんな役目はやらせないよね」
事情は理解した。だがやはり全裸で挨拶なんて冗談じゃない。
良美はなんとか回避しようとあがくが新田は軽く鼻で笑う。
「そんなことはない。女子の連絡係と言えば陸上部の1年もそうだが、あいつは凄いぞ。廊下で合ったら瞬時に脱いで、頭を下げて、瞬時に着直す。女子のセーラー服でよくあれだけのスピードが出せると思うわ。ブラのホックを外す動作とか早いのなんのって。よほど部外者に見られたくないんだろうな」
「でもでも、女子柔道部ではそんな話を聞いたこともない。全運動部参加ならうちの部もやっていないとおかしいじゃない」
「ん?なんだ。聞いていなかったのか。女子柔道部は……」
新田が説明する前に女子の声が割り込む。
「うちは優木桜子が連絡係をやっていたのよ」
いつから話を聞いていたのか金月が冷静な声で言った。
「え?」
初耳だった。優木は2年の先輩だ。いかにも柔道家らしい太めの体格と後輩の面倒みがいい先輩として1年の間でも人気者だった。
そんな先輩が裸で挨拶する役目をしていたなんて想像も出来ない
「優木は後輩にこんなことさせられないと言って志願してくれたのよ。自分なら見たい人も少ないから平気だからって。2年になっても連絡係をやる生徒なんて他にはいない。本当にあの子は……」
金月が自分の事のように辛い顔をした。
おそらく相当な葛藤があったのだろう。いくら優木がやると言い出してもそれを許可するのは金月なのだから。
真っ青になっている良美に向かって新田が最後の追い込みを掛けた。
「これでわかっただろ。どれだけぬるま湯な環境にいたかってことを。お前は先輩たちに守られていただけの甘えん坊なんだよ。だから弱い」
良美は自分のむき出しになったままの乳房をじっと見た。
男子柔道部に併合されてから、もう何人の男子の目に晒されたかわからない。
なんで自分だけこんな目にと思っていた。併合なんてなければ今も楽しく柔道をやっていたのと恨み妬みを積もらせていた。
しかしそうではなかった。先輩はもっと辛い目にあっていたのだ。
自分はただ守られていただけの新田の指摘は正しい。
「わかりました。新田主将。やらせてください」
もろん良美もそんな役目はやりたくない。しかし先輩がやってきたことをやらない選択肢もまた待たなかった。
『与えられた役目は必ず果たすものだぞ』
優木先輩がよく言ってたことを思い出す。
そうだ。守りきろう。たとえそれがどんなに恥ずかしいことでも。
彼女は心の中で強く誓った。