モアレ検査と裸の写真
1話 由利
昼の暑さが残る校舎に下校を促すチャイムが鳴り響く。
「あーようやく終わった。さて、帰りますかね」
小柄でショートカットな由利が背伸びをするように手を伸ばす。
クラス委員長としての後片付けも無事に終わり、上機嫌な彼女はカバンを取り出す。
帰り仕度を始めていると、背後から背の高い女子が近づいてきた。
「ねぇねぇ。由利、このプリント見た? 今年はモアレ検査があるんだって」
長身の女子はお知らせ用紙を手に持ちながらやや大声で話した。
「え〜 モアレ検査ってあのパンツ一枚で骨の形を見るやつ? 中3にもなってあんな検査をするの?」
モアレ検査と聞いて由利は眉をひそめる。
先ほどまでの上機嫌は何処へやら。彼女はウンザリした顔をしながら背の高い女子こと友達の理香子に不満を漏らす。
「なんでもグループ順にまとめて検査するんだって。骨の形を調べるために裸の写真を撮るなんて書いてあるし本当に冗談じゃないよね。学校は何を考えているのかしら」
理香子は手を広げて呆れたようなポーズをとる。
「えー裸の写真まで撮るの?」
思いっきりウンザリした顔をする由利。
誰が見ても検査を嫌っているのは明らかだった。
「そんな嫌な顔をしないで。心配しなくてもそのちんまりした裸は私がバッチリ見てあげるからさ。あー、でも由利はアタシの裸を見たらだめだよー だって見られたら恥ずかしいしー」
理香子は由利が本気でこの検査を嫌がっている雰囲気を察して、冗談を交えながら語った。
それはいかにも体育会系の理香子らしいサバサバした口調だった。
「言ったなぁ。私だって理香子のデカイ体を隅々まで見てあげるから覚悟しなさい」
由利は笑いながら挑発を返す。
やはり持つべきものは友人だ。由利は理香子の気遣いに感謝した。
背も低くて地味な由利。
長身で体つきもよくスポーツ万能の理香子。
性格も全然違うのになぜか気が合う2人のいつもの雑談。
だが、この出来事は破滅へと繋がる予兆でしかなかった
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検査当日
「もうこんな時間じゃない。由利、急ごう」
「ええ」
理香子に手を引っ張れながら由利は急いで保健室に向かう。
放課後の後始末が長引き、検査の予定時間はとっくに過ぎていた。
保健室の扉を勢い良く開けると、いきなり「遅い!!」と女の怒鳴り声が響いた
あからさまに不機嫌そうな女医と看護婦が由利たちを睨みつける。
どうやらイライラしながら待っていたようだ。
「他のみんなはもう終って帰ったわよ。後はあんたたちだけなんだからすぐ準備する。パンツ一枚になって順番を待ちなさい」
太りぎみのおばさん看護婦は強い口調で指示を出す。
(ここまで来れば覚悟を決めるしかないか)
由利は指示されたとおりにセーラー服を脱いだ
続けてスカートを下ろし下着姿なると横から声がした
「うわー由利は肌きれいね」
「理香子、この前はあんなこと言ったけど恥ずかしいから見ないで。私も見ないから」
ブラパンツ1枚の由利は顔を赤くし体を震わせながら理香子に頼み込む。
「着替え中もいつも隅っこだし本当に由利は恥ずかしがり屋だね。ごめんごめん。もう見ないよ」
そう言って理香子は後ろを向いた
親友の配慮に感謝しつつ、由利は手を回しブラのホックを外す。
ブラをカゴに入れ、両腕をクロスさせながら立ち尽くしてた。
胸も小さく細っそりとしているわりには妙に曲線が綺麗な体が顕になる。
「右の人から来てください」
「おっと、アタシが先か。じゃ由利、お先に失礼」
理香子が女医のもとに歩いて行く。
(筋肉が付いた綺麗な形の背中……)
由利は前に歩いて行く親友の裸から目が離せなかった。
スラっとした長身。胸も大きく高1といっても通用しそうな体つき。
普段は見ることがない親友のパンツ一枚の姿はため息が出るほどきれいだった。
そんな後ろの視線に気がつくことなく、理香子は椅子に座り女医の診察を受ける。
ちょうど真正面のため相変わらず由利からは理香子の背中しかみえない。
それでも飽きることなく由利は診察を受けている理香子の背中をじっと見た。
やがて診察が終わり理香子はゆっくりと振り向いた。
お互いに裸のまま視線が合う理香子と由利。
気まずい雰囲気が漂い、由利は急いで視線を床に向ける。
「写真を撮りますのでパンツを脱いでからこちらに立って。手で胸を隠さないで。足を広げて……」
理香子が裸の写真を撮られるようだ。
撮影場所はここからやや右側。多少死角になっているが全体像は把握できる。
そう。今、顔を上げれば背中なんかではなく理香子の全てが見られる。
興味がないといえば嘘になるが先程の気まずさもある。
結局彼女は友人の裸を見ることなく、視線は最後まで床から上がることはなかった。
しばらくして理香子が少し涙目になって戻ってきた。
「理香子、大丈夫?」
「ちょっと辛かった。由利も頑張ってね……」
由利の順番が来る。
胸を手で隠しながら恐る恐る医者の前に行き椅子に座る。
女医さんなのはいいけど何か怖い感じがする人に思えた。
「手を下ろして」
女医の冷たい声に少し戸惑っていると突然腕を捕まれ強引に降ろされる。
小ぶりだが形の良い由利のオッパイが顔を出す。
女医はなんの躊躇もなくむき出しになった淡い膨らみを持つ右胸をガッシと掴む。
(え。なにを)
由利が文句を言う間もなく女医の右手な胸を揉み始めた。
乱暴に揉まれ形が変わる乳房。爪で乳首を何度も弾かれる。
乳首を弾かれるたびに由利の肩がピクンと持ちあがり「あぁぁ」と泣くような声がもれた。
女医は胸揉みに満足したのか突然手を離す。
そして何もなかったように肩の骨の形を見始めた。
由利は今の無意味な胸揉みが現実の出来事だったのかわからないほど戸惑っていた。
しかし生まれて初めて他人に揉まれた感触はじわりじわりと彼女の心を蝕みはじめた。
「後ろを向いて。骨の形がわからなくなるので手は決して下から動かさないように」
言いたいことはあるが、早く検査を終わらせたい一心から女医の指示通りに後ろを向く。
後ろを向くと理香子の視線を合う。
手は上げるなと言われているので胸が隠せない。
(わわ。理香子そんなに見ないでよ)
そんな思いを知ってか知らずか理香子はじっと由利の乳房を見つめ続けた。
「もういいわ。写真を撮るのでそちらに移動して」
「はい」
「まずは後ろ姿から撮ります。足は肩幅まで広げて。パンツは片足だけ足首まで下ろして」
(昔はお尻半分隠れる程度だったのに、今はパンツを全部降ろされるの? そもそも足首にパンツを引っ掛けておくのって何の意味があるの?)
戸惑いながらも次々と写真を撮られてしまう由利。
「次は横向いて。それでは一枚撮ります。」
(パシャ)
「正面向いて」
パンツは情けなく足首に引っかかっている状態で正面を向いたら全裸を見られてしまう。
足をこれだけ広げていると危ないところも見えてしまうのではと考えていると、看護婦がやってきて、体の向きを強引に変えられ、足も肩幅まで開かされる。
足を開いてまま正面を向くと、普段は感じないはずの冷たい風が股間にあたり、否応無しに全裸で立たされているのを実感した。
女医は何度も何度も繰り返し由利の裸体に視線を走らせた。
股間に3回目ほどの視線を感じたあたりで由利の目には涙が溜まってくる。
その目を見た女医はようやく満足したのか「撮影お願い」の指示を出して由利から離れた。
「正面のレンズを見て」
看護婦の言われた通り前を見ると冷たいレンズ。
すかさずフラッシュが炊かれる。由利はシャッターを切られるたびに自分の大切な物が奪われていくような気分を感じた。
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放課後。すっかり下校時間が過ぎて静かな玄関口
その静かな空間で理香子は一人怒りをあらわにしていた。
「酷い検査だった。思い出すだけであの女医に腹が立つ。乙女の胸や裸をなんだと思っているんだ」
理香子は自分がされたことより由利が同じ目にあったのが許せないのか、歩きながら近くにあった空き缶を蹴飛ばし当たり散らす。
「あーもうヤメヤメ。こんな話題やめようよ。私も忘れるから理香子も忘れて」
由利は空元気いっぱいモードで理香子に頼む。
「うん。それでいいわ。お互いに忘れよ」
「やっぱ理香子はわかっている。やはり持つべきものは友達だね」
理香子は由利の肩をポンポンと叩きながら一緒に校門へと歩く。
その姿を校舎の窓から見ている一人の女性がいた。
女性はいかにも面白くないという顔をしながらボソリと独り言をつぶやく。
「幸せそうなことで。あんな子は少し辛い目にあったほうがいいわね」