ヌードモデルに選ばれた姉


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「藤沢先生、歓迎しますわ。美術部へようこそ」

 白鳥は相手が上半裸だと言うのに普段と全く変わらない。頭を下げ綺麗なお辞儀をした。
 その態度はまるで職員室で挨拶する生徒にしか見えない。
 だが教師である藤沢は大きな乳房を晒しているのだ。とても普段と同じとは呼べない。

「今日は【教師】としてしっかりと見学させてもらいます」

 藤沢は教師であることを強調しつつも乳房を隠すこと無く語った。
 胸を見られることは覚悟してきたのが伺える立派な態度だったがやはりどこか辿々しい。
 それなりに大きな乳輪すら晒しているだ。女として冷静でいられるわけがない。



「ほら佳子。あなたも早く脱ぎなさい。先生だけ丸出しじゃ可愛そうでしょう」
 
 嫌味っぽく白鳥が言うと姉は「わかっているわ」と一言だけ述べてからセーラー服に手を掛け、上着とタンクトップを乱暴にまとめて首から抜き取る。
 白鳥の指示通りにブラを付けていないため姉の可愛らしい乳房が弟の目の前で揺れた。

「つぅ」
 姉は晒された乳房を素早く腕で隠し恥ずかしそうに俯く
 いつものような強い決意はまったく感じられない。
 姉の乳房も平均を大きく下回るわけではないがやはり藤沢先生の立派なものと比べられるのが嫌なようだ



(なんだこれ……)

 隆は狭い準備室だというのに距離を取ろうと後ずさりをする。
 それだけ異様な状態だった。目の前にあるのは4つの乳房。
 学生とは明らかに違う教師の立派な膨らみを見せられると、これまで普通と思っていた姉の膨らみは何処か初々しさが感じられる。 
 何処を見ても女の乳房が視界に入り頭がクラクラした。

 彼が美術部に入ってからもう数ヶ月が経っている。
 クラスメイトである委員長の裸も見たし姉の裸も何度も見た。
 普通の学生ではまず体験できないほどの裸体を見たのだ
 もう女子の裸は見慣れているはずだった。今更大人の女性である先生の裸なんてみても動じるはずがないと。
 そう思っていた。

 しかしこの状況は彼の心を大きく動揺された。
 そう。これは女の匂い。狭い部屋にメスの香りが充満していた

 男の視線を感じた佳子がクロスで隠した腕をさらに絞め、じっと怒りの目を向ける。
 思いっきり批判の目に晒された隆は思わず姉から藤沢の乳房に視線を向ける。
 藤沢は男子に見られても乳房を隠そうとしない。
 それどころか必死に隠している姉に対してこう言い切った

 
「佳子さん。前を向いて堂々としていなさい。私達は何も悪いことをしていないだから負い目を感じる必要はないのよ」

 強い意思が感じられる口調。教師としての威厳を保とうとしているのがありありと感じられた。

「は、はい」

 姉は急いでガードを下ろした。
 恥ずかしがると負け。これは姉も十分理解してきたしそれを実行してきたつもりだったが、やはり人の本能にはなかなか逆らえない。
 むき出しの乳房に視線を感じるとつい隠してしまうようだった。

 白鳥の言う通り、やはり学生の姉と大人とは態度が大きく違っていた。
 あれだけ気が強くて堂々と裸体を晒してきたつもりの姉だったが藤沢先生とはまるで違う。


「ふふ、ご立派な覚悟だこと。これならヌードモデルに選ばれても問題ありませんよね」

「好きにしなさい。ただし教師である私を選ぶ言うことはどういう意味なのかよく考えて見なさい」

「まあ恐い顔。いつまでそんな顔をしていられるのかしら」
 

 白鳥はそう言いながら出入り口の扉に手を掛けた。
 ここまで必死に耐えてきた藤沢の顔色が変わる
 そう。この扉の向こうには全美術部員がいるのだ。
 その中には先生が担任をやっているクラスの男子もいる
 たった1枚の扉を開けるだけで藤沢の教師人生は大きく変わると言っても過言ではなかった

 そのことを十分に理解している白鳥が口を開く

「まだ間に合いますわよ。うちから手を引きなさい。今だったら書道部を潰すことはしません。うちの下位同好会にするだけで許してあげます」

「下位?」
 
 隆が思わず口を挟むと白鳥より先に姉が答えた

「ようするに書道部を部員ごと飲み込もうって腹でしょ。美術部にとって書道が得意な部員がいても役に立つわけがない。それなのにこんな条件をだしてくるってことは……」

 乳房を晒しながら姉が歯ぎしりをした。
 書道部員の体が目的なのは明らかだった

「正直なところヌードモデルを選ぶのも様々なルールがあって面倒くさいのよね。その点、下位組織になってくれればいつでも自由にモデルになってもらうことが出来る。女性の部員数は5人でしたっけ?楽しみよねー」

 白鳥のわざとらしい言い回しを聞いた隆はドキリとした。
 書道部には幼馴染の奈々がいるのだ
 もし書道部が白鳥部長の手に落ちれば彼女も今の姉のようにノーブラノーパンで登校し下着検査と言って乳房をあそこを美術部員に晒す。
 その検査をする美術部員というのは当然自分も含まれるのだ。
 

「そんなことさせない。そもそもヌードモデル任命のような強制力がないならそんな状態の書道部にいる必要がないじゃない。私しか残っていない部を乗っ取ってなにをしようというの」

 姉はムキになって白鳥を挑発した。

「ふふっ。佳子。あんたは頭はいいけど部長としてはまだまだね。自分が初代部長じゃ仕方がないけど部員たちの考えがまるで想像出来ていない。高校生にとって部というのはそんな単純なものじゃないのよ」

「どういう意味? 部なんて辞めればそれで終わりじゃない。辛い思いをしてまでやる必要なんてまったくない」

「皆がそんな単純な考えだったら部なんて成立していないでしょう。よく考えてみなさい。なぜ体罰だらけの運動部に人が集まるかってことを」

 反論に困った姉が言葉に詰まる。
 確かにこの学校は部の評価がそのまま生徒の評価につながる事情はある。
 だがそれだけであんなに必死になるものだろうか。

 運動部の脱衣罰は姉も何度か目にしたことがあった。それはまさに常軌を逸していた光景だった。
 姉自身もヌードモデルとして何度も人前で下着を下ろしたが、あそこまではとても出来ない。
 しかも彼女らは学校からの義務とかではなく、自らの意思で部に入り体罰を受け入れているのだ
 あの頑張りが学校の評価が欲しいためだけにやっているとは確かに思えなかった。

 

「さて先生。先程の返答は」

 姉を討論でねじ伏せた白鳥は気を良くして藤沢に問いかける。
 だが藤沢は静かに首を横に振った。
 美術部に自分の可愛い教え子を任せるなんて選択肢は端から無かった

「そうですか」

 白鳥が扉を開ける。角度的にまだ裸体は部員からは見えなかった
 それでもざわざわと興奮じみた声がこの部屋まで伝わった

「先生は私が守ります」

 足が進まない藤沢に変わって姉が一歩前に踏み出す。
 先生の人生経験はわからないがこんな大量の異性の前で裸になったことはないはず。
 裸体を晒した経験だけいえば姉は大人の藤沢よりもいくつも修羅場を踏んできたのだ。

「ええ」

 姉につられて藤沢も前に進む。どちらも前は一切隠していない。
 2人を視界に捉えたのか、隣の部屋からのざわめきが大きくなる。
 それでも歩みは止まらない。汚れた大量の視線に乳房を晒すため2人は歩き続けた。


 
 

 


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