翌日。中等部美術室
「なんだよこの絵は。どうやったらこんなのが書けるんだ」
「ふえ。今年の1年は凄いな。エロいわ」
裕太の回りに10人ほどの男子部員が集まる。同級生はもちろん本来は恐いはずの中3年の先輩まで驚きの声をだす。
少年にとってはいつものこと。周囲の反応も見慣れたパターンでしかなく当たり前のように振る舞っている。
「え……」
「でもあれって」
そんな騒動を尻目に女子部員たちは少し離れた場所に集まっていた。
あの絵を近くで見たい。その思いはあったが近寄りがたい。
それもそのはず。書かれた絵に抵抗があった
そんな中で背が高い一人の3年女子が男子の集まりに近づく。
絵の側まで来ると大きく溜息をつき、大声で言った
「いくら好きなものを書いて持ってきないと言ったからってヌードを書くなんてなに考えているのですか。いくら偉大な画家の孫だからといってヌードはまだ早すぎます」
中等部の矢野部長は絵をじっと見ながら言った。
確かに美術を志すものとして裸体は書かなくてはならないものだ。
たがしかし中学一年の繊細な思春期の時期に異性の裸を書くことがいいことだとは思っていないようだ
事実、少年の絵からは女性に対する驕りのようなものが感じられた。
裸を見て書くことによって女性を自分のものにしたと語っているかのような荒々しく男らしいタッチ。
「早すぎるって部長さんも冗談きついですよ。女の裸なんて小学1年の時からずっと書いているのに」
裕太の言葉に部員たちもどよめく。
奥手が多い美術中等部にとって異性の裸はまだ見ぬ神秘の世界。
それを小学一年から見ていることに驚き、流石はあの画家の孫だと感心の視線が向けられる
「え?でもこの絵って君江さんだよね」
女子の誰かが気がつくと視線が一斉に少女こと君江に向けられる。
ショートカットが似合う大人しそうな子だった。
背も低くまだ小学生が抜けきれていない雰囲気がした。
しかしヌードの絵はどう見ても彼女そのもの。
膨らみかけの胸の大きさから縦に長い薄い生えかけの下の毛の形まで全て暴露してきた。
「君江はうちで絵の勉強をするために住み込みで働いている姉の妹だ。俺の専属モデルもやってもらっているから気にしなくてもいいよ」
「専属モデル?まさかヌードになることを強制しているの」
部長がまるで自分の事のように裕太に迫る。
むりやりヌードモデルをやらされる。これではまるで高等部に導入されたヌードモデル制度のようだと思ったようだ。
彼女もいずれは高等部に進学する身。とても他人事とは思えないのも無理はなかった。
「もちろん強制ではない。こいつは自分の意思でモデルの勉強をしているだけだ。早く独立したいといつも言ってたし。な、そうだろ」
「はい。家にお世話になっているんだからこのぐらいはやらせてくださいと私からお願いしました」
無表情で話す君江。言葉通りに受け取るものは当然いない。
誰もが理解した。この絵の素晴らしさの正体を
「なるほどねぇ。ようするに高等部で導入されたヌードモデル制度みたいなものだな。あれも選ばれた生徒は学校から全面的なバックアップが用意されていて就職や進学が無茶有利になると聞くし」
「そういうこと。だから不憫だとは思う必要はありませんよ」
男子たちは改めて絵のエロさを認識していた。
少年の言葉とは裏腹にヌードモデルになることが本意でないことは絵からも伝わってくる。
そしてそんな本人の思いも知らずに晒された乳房。下の毛はリアルに書かれている。
絵から苦しみが伝わってくるようだった
会話を聞き部長は生唾を飲み込む。
やはりそうなんだとと思った。
この絵には写真を模写しただけでは決して生み出せない生々しさがある。
そう。まだ中学1年だと言うのに少年は女体を知り尽くしいるのだ。
「しかしこんな絵が書けるようになりたいわ。ほら全然駄目でさ」
といいながら林檎の絵を見せる同級生。
素人目にはとても上手いと言えなかったが。
「いや、これはそれほど悪くないぞ。林檎のラインが綺麗だし筆運びにセンスがある。でもそのタッチなら裸婦画のほうがいいかも。一度書いてみたらどう」
「裸婦って裸か。俺も書いてみたいけど機会がなくてな」
裕太のアドバイスに興味を持った3年の男子が近寄ってくる
「マジかよww 全然上手そうにみえないのに。じゃ俺のはどうだ」
「ん〜。先輩のは駄目。かなり急いで書いたでしょ。こんなのジジイに見せたらぶん殴られますよ」
少年は上級生相手なのに物事をズバズバと言った。
だが不思議と同級生や先輩たちは腹をたてない。それは画家としての確固となる実力を見せたこともあるがそれ以上に生まれ持ったカリスマがあった
絵が上手いだけではこの世界は生き残れない。少年には周りを納得させる魅力も備えていた
「ぶはは。新入生に言われたらたまらんな」
「うるせーわ。元々俺は絵が得意じゃないんだよ。でもこの絵が適当に書いたなんてよくわかったな。流石は孫だ」
笑いが飛び、誰もが自分の絵を見せてアドバイスを貰おうと詰め寄った
「じゃ。大先生、私の絵はどう」
そんな中で先程の部長が嫌味っぽい言い方をしながら自分の絵を持ってくる。
風景画だ。スタンドに置かれると部員の誰もが息を飲む。
黙って頷くもの。まるで自分の事のように自慢そうな顔をするもの。
説明されなくてもわかる。この部長こそが美術部にとっての精神的な柱であり誇るべき人物であることを。
「では拝見……ってへぇ」
部室の空気を読むように裕太は真剣な目で絵を見つめた
それはジジイの傑作とされる城の絵と全く同じように書かれた模写だった。
もちろんジジイには遠くおよばないが細部まで熱意を込められた力作といえた
「うちの部長の絵はどうよ。こんなにすごい絵を描くんだぜ」
先程の先輩がまるで自分の事のように自慢した。
部員の誰もが絶賛の評価を期待していたが少年の口からは意外な言葉が出る。
「部長さんはジジイの絵が大好きなんですね。必死に真似て追いつこうとしているのがわかる良い絵です。でもなぜこの絵なのですか? ジジイの代表作ならほかにもあるでしょうに」
「なぜって」
言葉に困る部長。何故か顔を赤らめている
「ジジイの絵の8割が裸婦画だから避けたのですか。いくら技術と熱意があってもそんなことでは永遠にジジイはおろか僕の足元にだって追いつけませんよ。ほらこの塗り方もこんなに…」
裕太は自分の絵と比べながら丁寧に説明していく。
部長は言葉もなく黙って話を聞いていた。
最初は生意気なクソガキと思っていたが、実際に比較されると反論の余地はなかった。
圧倒的な差の理由が裸婦画を書いてきた差と認めたくないが現実の差を見せつけられると避けてきたことが間違いであったことを認めざるおけない。
裕太は年相応のいたずらっ子っぽい表情をしながら言う。
「さっきヌードは早すぎると言いましたね。早いどころか遅すぎることを今証明してあげます。」
「証明って何を」
「簡単なこと。実際に裸を見てもらえばわかります。君江、脱いで」
ざわっとなんとも言えないざわめきの空気が流れた。
またまだ冗談きついなと笑い顔を出す生徒もいたが誰も反応しない。
そう。見ればわかる。決して冗談ではないことを。
実際に君江は無症状のままスカートに手を掛けた
「おい……マジか」
「ちょっとやめたほうが」
するっと言う小さな着崩れの音とともにスカートを引き下ろし始めた。
誰もがまじまじと彼女を見つめた
戸惑いの声が広がりそうになるがそれも君江がスカートを下ろすと消えた。
目を疑った。晒された安物っぽい白のパンツに。抜けるような肌色をした細い太ももに。
昨日までのちらりとパンチラしただけでも大騒ぎしていた日々はなんだったのだろう。
こんなにも簡単に女子の下着を見られるなんて。
男子たちは股間も盛り上がりを隠しながらもなんとも言えない優越感に酔いしれていた。
「君江さん。それでいいの?」
上着を脱ぎシャツを脱ごうとした君江に対して部長を堪らず声を出す、
この子がブラをつけているのかどうかはわからない。だがこの1枚を脱げばもう女子として取り返しが付かないことになるのは間違いない。
「ありがとうございます。優しいんですね。でもいいのです。私慣れていますから」
君江はほんのりと桜色に染まった顔色でそういいながら決して大きくない育ちかけの乳房を見せた。
部長には彼女の過去はわからないしそこに踏み込む資格もない。
しかし慣れているという言葉には説得力があった。
この子はこんな目に何度もあってきたのだ。
だからこそ男子の目がある前でも感情を出すこと無く脱げる。
「うわーすげー」
先程まで恐る恐る声を出していた男子達の声が大きくなっていく
それは下着をおろし陰毛がむき出しになると最高潮を迎えた。
陰毛はまだ薄く秘部を覆い尽くすことが出来ていなかった。縦一文字の秘裂もくっきりと見えている。
そんな男子の様子を見て少年はニヤリと笑う。
彼の思惑通りに男子たちは始めてみる女子生徒の裸に熱中していた。
本当なら毎日顔を合わす女子が裸になれば当然のように悪い、気の毒の気持ちが生まれるはずなのにそんな思いは目の前にある裸のせいで吹き飛んでいる
だがそれだけでは足りない。
少年がもっとも嫌う同情心の気持ちを潰すため更なる手を打った
「19世紀の画家ギュスターヴ・クールベの『世界の起源』って名画を知っていますか。今から似たようなポーズやらせるのでよく見ていてください。君江、いつものあれだ」
「はい……」
そう言うと君江は冷たい床にも関わらずお尻を落とし座り込んだ。
足は生徒たちが集まるほうを向けられている
なに?と誰もが思う中で少女は両手で両足を持ちながらぐいっと手前に引っ張りお尻が上に向くまで体を折りたたむ。
俗にいうマングリ返し。少女の割れ目はおろか、薄葉色の尻の穴まで無残にもさらけ出されていた。
「オリジナルは足を開いてあそこを書いただけの絵だけどそれだと尻の穴が見えないので僕流にアレンジしてみたポーズです。いいでしよ」
シーンと美術室が静まり返った。
女子の気持ちを何も考えない少年の恐ろしさに皆が飲まれていた。
天才とキチガイは紙一重とはまさにこのこと。
ここまでやれるからこそ偉大な画家になれるのだと
「さて部長さん。ひとつ提案があります。僕を副部長にしてください」
部長が言葉に詰まる。
裕太に向かって話そうとすると否応なしに君江の割れ目の有様が目に入り思考力を鈍らせているようだ
「なにをいって」
確かに裕太の実力は折り紙付き。頭も切れるし将来の部長候補なのは間違いない
だがまだ入部二日目の新入生なのだ。
「もちろん、ただとはいいません。僕が副部長になった証には君江をこの部の専属モデルとして使っても構いません。あとはそうですね。部長さんをジジイに紹介してあげるっていうのはどうです?」
尻の穴を晒しても無表情のままだった君江の表情が曇る。
許されるならここで猛反対をして部長を引き止めたい。
そんな思いが体を掛けめくるが当然のごとくそんなことは出来なかった
やれば全てを失う。どんな命令も聞いていたことが無駄になる。
「私1人では決められないので顧問と相談しないと」
「構いませんよ。ジジイはきっとあなたの絵も『体』も気に入ると思っているのでいい返事を待ってるよ」
少年の家の影響力は学校にも及んでいる。顧問が駄目と言うはずがないのでこの時点で副部長就任は決まったようなものだった
その少年に部を任せればとんでもないことになるとわかっていても部長は偉大な祖父に会える魅力には敵わない。
彼女もまた芸術の言う魔物に囚われた1人でしか無かった。
「さあて明日から忙しくなるぞ」
ここまで好き勝手に生きてきた裕太が笑う。
少年に挫折とか苦難とか言う試練はない。見たいと思った女の裸を書き、股を開かせる。
それは数年後に中等部を卒業し高等部に入っても変わらない。
人生イージーモードで生まれた少年だからこそ許される生き方だった。
おしまい