トップに戻る
これは数年前に公開した正月企画の短編です
あのキャラクターたち正月をどう過ごすかみたいな発想で書かれているため時間軸はいきなり飛んでいます。
ちょっと先の予告編程度に思ってくれれば幸いです。
「姉さん。あけましておめでとう」
「隆。おめでとう」
元旦。波乱に満ちた二学期も終わり、姉と弟は自宅のリビングで正月気分を堪能していた。
つまらないテレビ。たわいもない雑談。
毎年恒例の平凡な正月の日々でしかなかったが、半年以上ずっと恥辱にまみれていた姉にとっては、かけがえのない休息に他ならなかった
ぶるぶる。そんな幸せの時間を壊すかのように姉のスマホが鳴った。
「ちっ……」
スマホを見た姉の顔から笑みが消えた。
「メール? 誰から?」
嫌な予感を隠し切れないのか。弟が不安げな声で言う。
「白鳥よ。今すぐ来いって」
姉が立ち上がり厚着のジャンバーに手を通す。
思いっきり不機嫌な顔を見せながら玄関へと向かおうとする。
「ちょっと待って。まさか行くの?」
弟が姉の手を掴む。
どうやら行かせたくないようだ。元旦ぐらい姉弟揃って仲良く過ごしたい。
その思いが強く握られた手からも伝わった。
「もちろん行くわよ」
「どうして?。元旦ぐらい無視しても学校は問題にしないのに」
弟はまだ手を離さない。いつも距離を取る弟にしては珍しいほど真剣だ。
そんな弟を見て姉はふっと笑う。
「馬鹿ね。今更学校なんてどうでもいいのよ。ここで逃げたら白鳥から逃げることになる。それだけは絶対に嫌なの」
そう言うと姉は弟の手を振りほどく。
「あ、」
驚く弟を尻目に姉は目的地へ向かって走りだした。
-----------
10分後
佳子は町外れにある神社へとやってきた。
表通りの人混みを避けながらメールの指示通りの神社裏へと向かう。
そこは人っ子一人いない寂しい場所だった。
「来たわよ。早く出てきなさい!!」
誰もいないが時間に細かい白鳥が遅刻するなんて考えられない。
そう。あいつは人を待たせる行為が大嫌いだったはず。
必ず来ていると確信した彼女は大声で叫んだ。
すると右側にある森に近い場所から女の声が聞こえた。
「うるっさいわね。こっちよ」
声がしたほうには大きな木があった。
どうやらその裏側にいるようだ。
「え?」
木の後ろに行くと、そこには1人の着物姿の女子が立っていた。
目慣れない着物姿に驚きの声が漏れる。
佳子から見ても、着物はよく似あっており、まるで大人しいお嬢様のように見えた。
だが、この女子がそんな人ではないことは彼女もよく熟知していた。
「遅かったわね。早くこれを着て。初詣に行くわよ」
高そうな着物をゴテゴテと着た白鳥は持っていた大きなコートを放り投げた。
「なによこれ。いらないわよ。そもそもなんであんたと仲良く初詣に行かないといけないのよ」
渡された黒いコートを持ちながら佳子は怒りの声を上げる。
それもそれはず。コートは男物。サイズはやたら大きく、女子が着るにはまったく適さない。
そもそも前ボタンすらろくに残っていないほどボロい。
どう見てもただの使い古しのロングコートでしかなかった。
「ふふ、まだわかっていないのね。この初詣もヌードモデルの特訓なのよ」
「は?特訓。なにそれ……ってまさか」
「ようやく理解したみたいね。そんじゃ全部脱いで」
一瞬の沈黙が場を支配し、神社裏に寒い冬風が吹き抜けた。
白鳥の容赦無い脱衣命令に姉は唇を噛みしめ、肩を震わせる。
その顔色は、まるで寒空の下に肌を晒したかのように血の気が引いていた
----------
佳子と白鳥は裏道を抜けて、本通りがある神社前へやっていた。
目の前には騒ぐ子供から酔っぱらいのふざけた大人まで多種多様の人が集まっている異様な空間が広がっていた。
「いやー、凄い人ね。この街でこれだけの人が集まる日なんて他にはないよね。佳子もそう思わない」
上機嫌の白鳥が佳子の右手を掴みながら人混みに入っていく。
「ちょっと引っ張らないで。あ、やだ」
ボタンが無く、すぐにでもはだけそうなコートの合わせ部を左手で必死に握った佳子がこれまでとは違う熱を含んだ声を出す。
「あら、どうしたの。そんなに顔を真っ赤にして」
白鳥はクスクスと笑い出した。
佳子の狼狽ぶりがよほどおかしいようだ。
「ううぅ」
何も言い返せずに黙りこむ佳子。
彼女がヌードモデルをやらされるようになって数カ月。
毎日のように肌を晒す辱めにも耐えてきた。
たとえ、どんなに辛くても平然とした姿をみせることで、白鳥の期待を打ち砕いてきたつもりだった。
それなのに今回は……
「おっとゴメン」
男が佳子の体を擦りながら横を通る。
「ああ、ダメ」
コートの下の部分がめくれ真っ白の足が露出する。
佳子は急いでコートの乱れを治そうとするが動きが鈍い。
(はぁはぁ)
どこか甘い感じがする吐息を繰り返し、頬も紅潮している
見るものが見ればすぐ分かる。今の彼女は性的な刺激と戦っていた。
再び人とぶつかる。
「あっ……」
またどこか艶っぽい声が漏れた。
佳子は恥ずかしさのあまり下を向く
今、彼女を苦しめているのはコートの裏地だった。
肌に触れることを想定していないざらついた裏地は佳子の敏感な部分を刺激した。
人とぶつかるたびに裏地が乳首を擦る。
剃られて剥き出しになっている割れ目も同様だった。
(もうダメ)
コートの上や下が乱れて開かないように常に閉じながら性的な刺激にも対処する。
そんなことが出来るはずもない。糸が切れたように佳子の視界が歪む。
もう限界だった。いくら裸を見られることに慣らされていても今回はあまりに状況が違う。
ここまで多くの人に見られる可能性がある緊張感は彼女の許容範囲を超えていた。
ありえないぐらいの視線の洪水。人との接触。そしてコートが生み出す性的な刺激。
まるで免疫がない部分を徹底的に責められ、佳子の体がぐらりと傾く。
「おっと」
横から白鳥が体を支えた。
コートが乱れ、むき出しの肩が露出する。
上から覗けば胸の形や乳首もはっきりと見えた。
「おー彼女ぅ。大丈夫?」
軽そうな若い男たち数人が近寄る。
1人の男が佳子の胸元を見ながらニヤつく。
男が視線はまろび出た白い乳房の全体を捉えていたが、驚く気配はない。
どうやら声を掛ける前から佳子がコート1枚の裸であることに気がついていたようだ。
声にもならぬの佳子の吐息が洩れる。
今の状況がまるで理解できていないようだった。
「気分が悪いなら俺達の車で休ませよう。ミニバンだから横にもなれるし。ほら、早くその子をこちらに」
邪悪な笑みを見せた男が手を差し出す。
手慣れている。おそらくいつもこんなふうに女子をナンパしている連中なんだろう。
この連中に佳子を渡せば、彼女が車の中でどんな目に合うのかは明らかだった。
「佳子、走って!!」
白鳥が佳子の手を掴み、強引に走りだす。
着物姿にも関わらず人をかき分け走る白鳥。意識が朦朧とする中、佳子も懸命に走る。
人混みの中を走ったため数多くの人とぶつかったが、強く強く握られた二人の手が離れることはなかった。
------
二人が神社裏に戻ると、息も絶え絶えな佳子が倒れるように座り込んだ。
「まったく。せっかく盛り上がっていたのに馬鹿な男たちのせいで台無しよ。あんなに楽しかったにね。佳子もそう思うでしょう」
「ハァ……ハァ……」
いつもならすぐに反論する佳子だが、今回はなにも言えなかった。
それだけ今日の特訓の苛酷さが伺えた。
「なんか白けちゃたしそろそろ帰りましょう。そんじゃ最後にもう1回、体を見て終わりにしようか。佳子。脱いで」
「……いや……よ」
佳子の口が僅かに動く。
右手でコートの前をぎゅと合わせるように掴んで脱衣拒否を全身で表した。
「えーどうして。いつもは素直に脱いでくれるのに」
今、裸を見せたくない理由が分かっているのか、ニヤニヤした白鳥が迫る。
「ほら、早く見せなさいよ。問題がないかじっくりと調べてあげるから」
諦めた佳子はゆっくりと立ち上がる。
そしてコートを開き、その裸体の全てを憎き白鳥の前に晒した。
白鳥の舐めるような視線が佳子の体を伝っていく。
熱っている首筋、染まったふくよかな乳房。剃られてむき出しな割れ目。
視線は何度も何度も佳子の体を往復していった。
「うん。思ったとおり乳首は立っているわね。愛液が垂れていないのは残念だけどいい感じに肌が火照っていて素敵よ。で、どうだった?なかなか刺激的な体験だったでしょう。あれは『やらされた』ものじゃないとわからないよね」
白鳥は佳子の髪を撫でてから顔に触れる。
モデルの体の触診は部長にしか許されていない。
それをいいことに白鳥の手が乳房へと降りる。
「……ねぇ。白鳥、私達はいつからこんなに憎しみ合うようになったの?」
乳房を触れられ、鳥肌を立てた佳子がボソリと言う。
「そんな昔の話はもう忘れたわ」
と言いながら白鳥は乳首をまじまじと見る。
真っ赤になりピンと立っている乳首がよほど気に入ったようだ。
「私も喧嘩の切欠は覚えていない。出会った当初はそれなりに仲良くやっていたわよね」
佳子は遠い目をした。
一年の時は二人で遊びに行ったこともある。
あれからたった数年で一方的に裸を晒し、命令される立場になるなんてとても信じられない現実だった
「3年近く前の出来事なんて覚えていないわ」
「もしかしたら、今日も二人仲良く初詣をする未来があったかもしれないのに……」
それは心体ともに疲れきっている今だからこそ漏れた佳子の本音だった
「仲良く初詣ねぇ。そんな可能性は本当にあったのかしら」
白鳥の右手が佳子の柔らかな乳房を握った。
指に力を入り、形の良い乳房はグニグニと形を変える。
「ちっ、ちょっと止めて……あ、やだ」
乳房を揉まれ続けている佳子の体が更に赤く染まる。
「でもね。佳子。私は今の関係も好きよ。こうして私の玩具になっている姿も素敵。悪くないわ」
「そ、それが望んだ未来なの。もう出会った時とは別人……って痛、ぐぅぅ」
佳子の声が途切れた。
白鳥が敏感になっている佳子の乳首を2本の指で潰し捻ったのだ。
「ようやくしおらしくなってきたと思ったのにまだそんな口が聞けるのね。好き勝手に裸を見られて触られている女が生意気いうじゃないわ」
「……い、いえ。やはりアンタは可哀想な人よ。だからこそ私も今のあなたが大嫌いなの」
でたらめな性的信号が佳子の体を駆け巡る。恥辱のため目が涙で濡れた。
それでも佳子は言いたいことを言い切った。
「つまらない。帰るわ」
突然、白鳥が手を離す。
開放された佳子はバランスを崩し全裸のまま座り込んだ。
むき出しのお尻に冷たい地面が触れ、顔をしかめる。
「冷たいじゃない!」
素早く胸を隠しながら文句を言う佳子。
だが、白鳥は振り向くことはなく、落ちていたコートを拾い、そのまま歩き出す。
「?」
去っていく白鳥を見て、佳子は軽い違和感を覚えた。
なぜか、白鳥の背中がいつもより小さく見えたからだ。
終わり