番台少年の片思い


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番台少年の片思い


「今日も客が少ないなぁ」
 とある古い銭湯の番台に座る武は不満気にグチを漏らす。
 武は今年で中学3年になるこの銭湯の跡取り息子だったが、
肝心の銭湯は時代の波に流されすっかり寂れ果てていた。


 ガラッ。
 銭湯の古いドアが開き、白いブラウスを着た中学生ぐらいの女の子が入ってくる。

「学生一人。お金はここに置きますね」
 女の子は大きな帽子を深々と被っているために番台の上からはよく顔が見えない。

「確かに。ごゆっくり」
 貰った代金を確認し武はいつものように接客すると女の子は武の顔を見ず、
俯いたまま足早に脱衣場がある奥へと行った。

「本当にあの子はなんなんだろうね」
 誰にも聞こえないほどの小さな声で武は独り言を呟く。
 彼の疑問はもっともだった。
 この銭湯に新規の女の子は殆ど来ない。
 なぜなら近くにもっと大きなスーパー銭湯があるからだ。
 こんな築50年は経っているオンボロ銭湯に来る理由がない。
 そんな状態なのにこの女の子は繰り返しやってくる。
 武にとってこの客はまさに謎であり興味を惹かれる存在になっていた。
 帽子を深く被り、手で顔を隠しながらやってくる女の子。
 風呂場から出る時すら、顔を隠しながら歩くので誰だかわからないが、
あの膨らみかけの乳房や薄い陰毛を見る限り、武と同じぐらいの年齢なのは間違いなかった。

 女の子は番台から離れた奥の右側へと行き、周りをちょろちょろ見渡す。
 誰も見ていないことを確認したのか女の子はようやく服を脱ぎ始めた。

 武はその様子を番台の上から見て、フッと笑う。
 おそらく女の子は番台からの障害物を考えて、見えにくいあの場所を選んでいる。
 実際に女の子からはロッカーとぼろい扇風機が邪魔をして番台の人物は殆ど見えない。
 でも実際にはあそこで脱いでも、裸は見える。
 確かに番台からは障害物が邪魔で直接上半身は見えないが、
少し頭を下げるだけで、背中もお尻も丸見えの場所でもあった。
 しかも右の壁にある大きな鏡が斜め横から反射しており、鏡を見れば正面の胸部分から下半身の陰毛の有様まではっきりとわかる危険地帯だった。

 武はあの場所を恥ずかしがり屋の銭湯初心者が飛びつき、
その初々しい裸体を前から後ろから全てさらけ出す公開ストリップゾーンと呼んでいた。

 そんなことも知らずに女の子は今日も公開ストリップゾーンでスカートを脱ぐ。
 当然のごとく番台からは綺麗な太股と白いパンツが丸見えになる。

(今日は白なのか。シマシマの日だと思ったんだが)
 これまで確認した女の子のパンツの色は5種類。
 武は女の子が来るたびに、今日のパンツの色を予想するのが密かな楽しみになっていた。

 女の子はシャツを脱ぎブラを外す。
 そして周りを少し気にしながらパンツも下ろした。
 鏡には膨らみかけの綺麗な胸とまだ生え掛けの陰毛が映る。

(うんうん。今日も小さいけど、いい胸の形しているねえ)
 満足そうに武が頷く。
 この子が銭湯にやってきたのは二週間ほど前。
 武はすでに10回近く女の子が脱ぐところを見ており、
その脱ぎ方から裸の特徴にいたるまで全てを把握していた。

 女の子は脱いだ服をロッカーへ入れようと手を伸ばす。
 公開ストリップゾーンで脱いだ子は、服を目の前にある背が低いロッカーに入れるが、
これがまた罠であり、背を向けて腰を曲げることにより番台から性器が丸見えになる。

 武の目には女の子の綺麗な割れ目と、少しはみ出たピンク色のビラを捉えていた。

(あの割れ目の形がいいんだよな。成長途中のせいか他の人とは違うビラの歪みがあるのがいい)
 武は本人が決して見られたくない部分をマジマジを見つめながら、
失礼すぎる批評をしていた。

 女の子は、いつものように顔を伏せ、タオルで体を隠しながら風呂のドアへと向かっていく。
 人は前ばかり隠したがるが、一番危険なのは後ろからの視線。
 ここでも本人は完全に隠していると思っているんだろうが、
実際は後ろから尻がチラチラと見える。
 武は脱衣の時と浴槽に入る時の見える、この綺麗なお尻が大好きだった。
 女の子のお尻の右側にホクロがあるのも知っている。
 今日も女の子のお尻を眺めながら幸せを感じていると、

「こら、なにジロジロと見ているのよ」
 入口のドアが開き、小学生と間違えそうな身長の幼馴染が声を掛けてきた。
 幼馴染の名は立花。
 武が番台に座るようになってからは、同級生たちは男女問わず来なくなったが、立花だけはずっと来てくれる。
 立花の心境はよくわからないが、武にとってはありがたいお客だった。

「いや、ちょっとあの女の子の行動が……」
 女の裸に夢中だったことを知られるのは困ると思った武は、いかにも気になることが、あったみたいな言い方をした。

「女の子って、さっき入っていった、りっちゃんのこと?」
「え、あの子は知り合いなのか」

「同じクラスじゃない。何を言ってるのよ」
 なにをバカなことを言わんばかりの声を出す立花。

「いや、いつも顔を隠しているし誰なんだ」
 武は想い人の正体がわかると思い、立花に詰め寄った。

「そういや風呂屋に行かないといけなくなったけど恥ずかしくてとか言ってたっけ。
なるほど。それで顔を隠しているのか。うんうん」
 立花は一人で納得し、少し意地悪そうな顔をする。

「だから誰なんだよ」
 武は番台から身を乗り出しながら立花に聞く。

「でも、そんな裸を見られたくない子を、エロい目で見ている人には教えてあげない。
私も今から入るけどこっちを見ないでよね。このエロ魔人め」
 少し怒ったような表情を見せながら立花はお金を置き、脱衣場のロッカーへと向かっていった。

「誰がエロ魔人だ。それにお前の裸には興味がないから見ないよ」
 武は本当に立花の裸には興味なかった。
 もちろん脱ぐところは何百回と見ているし、裸も見飽きるほど見ているが、
なぜか面白くない。
 これは見飽きたから面白くないわけでは無く最初からまったく面白くなかった。

 武が初めて立花の裸を見たのは3年前。番台の仕事を始めた2日目のこと。
 立花はまるでいつもどおり『遊びに来たよ』みたいな雰囲気で銭湯にやってきた。
 緊張する武を後目に立花はまるで自分ちの風呂に入るがごとく、なんの躊躇いもなく服を脱ぎ、裸になった。
 長年遊んだ幼なじみ。
 始めてみる幼なじみのブラ。パンツ。そして男のものとは明らかに違う膨らんだ胸。
 武はもし立花の裸が見られればどれだけ感動し興奮するだろうとずっと思っていた。
 これは番台の仕事を受けた理由でもある。
 しかし実際に立花の裸を見ると何一つ感じるものは無かった。
 理由はわからない。わからないまま今日まで来てしまった。
 今では裸を見ることより、今日のパンツの色だけ確認して、すぐ視線を外す。
 武にとって立花の脱衣シーンはその程度の扱いになっていた。

 ロッカーの前に立った立花がガサツにスカートを脱ぐ。
 武からはパンツに包まれた丸く張りのあるお尻が見える。

(今日はいちご柄か。相変わらず立花はお子様だな……)
 武は軽くため息をつきながら立花のパンツ姿を眺めた。

for / 2014年12月12日

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