入院生活の日常


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 早朝。優奈は普段よりも早く目が覚めた
 今日から担当医や看護師も変わりリハビリも始まるという。
 復帰の第一歩と言える記念すべき日だったが、彼女の表情は冴えない。

 優奈の脳裏に一人の男の姿がよぎる。
 これまであった病院関係者とはまるで違う雰囲気を持つ男。
 端正な顔、スラっとした長身。何を考えているのか伺い知れない。
 それだけに不気味な感じがした。

 扉が開く。
 他の人よりも一回り高い身長。間違いない。昨日の看護学生の高木だ。
 高木は笑顔を見せながら近寄る。
 優奈は警戒心を顕にしながら「おはようございます」と言った。

 だが、返事は帰ってこない。
 高木はまるで昨日のリピートのように、無断で布団をめくり、優奈のパジャマの合わせ部を開く。
 すると、ちんまりした大きさの乳房がまろび出た。

「ま、また」
 優奈が息を飲む。
 またなんの説明も断りもなく、いきなり胸を露出させられた。
 男の理不尽な露出に顔を真っ赤に染める。

 そんな彼女の戸惑いも気にしない高木は遠慮なく乳房の丸み全体を見る。
 もちろん、乳房の有り様は昨日見た時となにも変わらない。
 手で覆い隠せる程度の膨らみ。儚く小さな薄いピンク色の乳首。
 本来なら誰の目にも触れされない16歳の乳房がそこにはあった。

 乳房の形を確認すると高木は満面の笑みで「はい、おはようございます」と言い、パジャマを開いたまま点滴をチェックを始めた。

 静まり返った病室。
 そこには点滴のラベルを見ながら10インチタブレットを淡々と操作している男と、胸元がはだけて乳房を露出している女が一人いるだけだった。

「し、質問いいですか」
 男がいる側で胸を出しっぱなしするという異常な状態に耐えかねた優奈が恐る恐る声を出した。

「どうぞ」

「なんで胸元を開けるのですか」

「うーん。難しいこと聞くね。あえて言えば患者のためかね」
 そう言うと高木は窓際にある机の前へ行く。

「私のため?」
 今のうちとばかりに優奈は力が上手く入らない手をなんとか動かし、乳首が隠れる状態までパジャマを戻す。

「そうですよ。だから信じてください」
 と、言いながら高木は再びベッドに近づき、やっと閉じたパジャマをまた開く。
 再び晒される乳房。
 心なしか乳房は先程よりも白く、乳首は赤みを増しているようにみえた。

「……」
 優奈は再びむき出しにされた自分の胸を悲しそうな顔で見た。
 確かに大きくはない。中学生の胸サイズと言われても反論できないかも知れない。
 でもだからといって白日のもとに晒されていいはずがない。
 恥ずかしいやら、悔しいやらと様々な感情が彼女を襲った。

「ところで体拭きですけど」

「!?」
 体拭きと聞き、優奈は息を呑む。
 そう。これから乳房を見られることなんか些細なことと思うようなことをやらなくてはいけない。
 全裸にされ、体中を拭かれ、あそこの中や肛門を覗かれるのだ。

 見れば高木の手には既にタオルがあった。
 もう準備は終わっているようだ。

「え、えっと」
 なんと言っていいのかわからず優奈は戸惑った。
 お願いしますなんて言えるはずがない。しかし拒否も出来ない。

 高木は顔を真っ赤にする優奈を見ながらタオルを右乳房の上にそっと置いた。
 
「ひぃ」
 一瞬、高木の指が乳房の肌に触れ、優奈は思わず悲鳴をあげた。
 高木はなぜかビニール手袋をしておらず直に男のゴワゴワした指の感触が乳房を通じて感じられた。

(あっああ)
 優奈、もう言葉も出なかった。
 別に高木は変なことをしているわけではない。体拭きのための手順をやっているだけだ。
 それでも優奈は言いたかった。止めてと。

 そんな彼女の戸惑う姿を見て高木はふと笑い、
「まだ恥ずかしそうなので今日は他の人に変わってもらいましょうか」
 と、思いもよらないことを言った。

 優奈は信じられない思いで高木の顔を見る。
 男は相変わらず爽やかな笑顔を見せていた。

「本当にいいのですか?」
 優奈はほっとすると同時に罪悪感も抱いていた。
 裸を見られることを気にしては駄目。
 そう何度も思い込もうとしたが、いざとなると羞恥心が先に出て感情のコントロールができなくなる。
 今回もそう。そんなことしなくても構いませんと言わなくてはいけないのに高木の提案に乗ろうとした。

「でもその代わり明日の入浴は僕がやるからね」

「……わかりました。それでお願いします」
 寝たきりの入浴は老人病棟の廊下奥の広場で行われていた。
 優奈も一度入ったことがあり、そこで何をされるか理解している。
 つまり今、先延ばしにしてもなんの意味もない。
 高木に裸を見られる時間が伸びただけ。
 それでも彼女は先延ばしを選んだ。
 一分でも露出が少なくなるようにの願いを掛けて。

 

 高木が代わりのものを呼んできますと言って部屋を去り数分後。
 パタパタと廊下を走る音が聞こえたと思ったら扉が開く。
 やってきたのはいつものベテラン看護婦長だった。

「はい。優奈さん。体を拭きますね」
 口調は優しいが明らかに怒っている。
 忙しい時間に余計な仕事を回されたんだから当たり前だった。 
 優奈は一言謝っておこうと思い、口を開こうとするが。

 看護婦長は素早く布団をずらし、パジャマの紐を解き優奈を裸にした。

「ふえ?」
 思わず優奈は変な声を出す。
 あまりに手早い電光石火な動きだった。
 彼女からすれば瞬きをしているうちに全て脱がされたようなものだった。

「よいしょ」
 看護婦長のおばさん臭い掛け声とともに優奈の膝は立てられ、脚は肩幅を大幅に超えるほど開かされた。

「な、な、な、なにをするんですか」
 優奈は顔を真っ赤にし戸惑いの声を出した。
 女が全裸のまま赤ん坊をおむつ交換みたいなポーズをとればどんなことになるのか。
 検査時の体位であるYのポーズなんて比べ物にならないほどモロに見えてしまう。

「これは寝たきり防止のためなので我慢してくださいね。ギブスを着けた左足以外も硬直したら大変でしょう」
 優奈の顔を拭きながら看護婦長はもっともらしいことを言った。

(寝たきり……)
 今一番怖いのは、このまま寝たきりになることだと優奈も医師からも聞かされてきた。
 健康な人でもベッドに縛り付ければ、すぐに筋肉が落ち体の関節が曲がらなくなる。
 ましてや、優奈は折れた左足だけではなく、あちらこちらに麻痺の病状が現れており状況はより深刻だった。
 それを防ぐために関節を定期的に動かさなくてはならない。
 彼女もそれは理解していたが。

(だからと言って全裸でやらなくてもいいじゃない)
 もっともな疑問が頭に浮ぶ。
 だが、口にすることはなかった。
 これがこの病院の方針と言われればそれまで。
 事実、体拭きと一緒にやれば時間短縮にも繋がっていたからだ。

 看護部長はいつものように優奈の体を拭いていく。
 相変わらず胸の扱いは酷い。固く絞った雑巾で乳首を擦られる。
 今回も乳首がピンと立つまで続けられた。

「少し開きますね」
 優しい言葉とともに優奈のあそこに指が触れる感触。
 クチャという軽い粘着音とともに女の壁を開けられる。

「ああ……」
 優奈は悲痛な顔でその行為を見ていた。
 時間こそバラバラだが性器と肛門チェックは毎日必ず行われていた。
 だいたい看護部長がやっていたが先日のように担当の学生がやる日こともあった。
 
「今日も綺麗ね。尿管に入っているカテーテルも問題なし」
 看護婦長はボソリと中の感想の述べた。
 中を見て綺麗、良かったわねといつも言われた。
 むろん看護婦のいう綺麗とは炎症が起きていないということ。
 優奈もそれは知っていた。この言葉に悪意なんてない。むしろ安心しているのだと。
 しかし、まだ高校生の彼女にとっては、毎日あそこの中の見られて感想を言われる痛みは耐え難いものだった。
 見る相手は日常業務の一環でしかないのかも知れない。
 だが、見られた彼女にとっては一生忘れることはない体験。 
 また一人、自分の全てを見た人が増える儀式でしか無かった。

 体拭きが終わり看護婦長が部屋から出ていった。
 服はきちんと着せられている。胸もあそこも見えていない。

「あと少しで朝の検診か……」
 そう。検診の時間が来れば、また裸にされる。
 優奈はあまりに虚しく恥ずかしい生活に疲れ果てていた。

 

看護婦姉妹 二人がかりのどきどき看護看護婦姉妹 二人がかりのどきどき看護
 
for / 2015年01月25日
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