「向こうのベットに移すからちょっと僕の首に手を回してみて」
高木はにっこり笑いながら自らの頭を近づけて指示を出した
これまでやったことがない指示に少し面食らいながらも、優奈は彼の言う通りに手を伸ばす。
「ちょっときついかな……辛うじて動くだけなのでまだ力が……」
「いいのいいの。首の後ろに置くだけでもいいから」
言われるまでもなく力は全く掛けられない。ただ首に手を回しただけに過ぎないが。
「行きますよ」
高木はそう言うと背中とひざ裏に腕を通し裸体の優奈をお姫様抱っこのように持ち上げる。
(わわわっ)
思いがけない移動の仕方に焦った。
それもそのはず。これまでベット間の移動は二人がかりが原則だった。
普通の人なら医療ドラマでのシーンでしかないイチニチサンの掛け声も彼女にとっては日常のひとコマ。
当然今回もそうだと思っていた。それなのに高木は1人で優奈の背中と足を持ち、お姫様抱っこで移動させようというのだ。
「ちょ、ちょっと高木さん。こんな格好で」
なにしろ今の彼女は全裸。手も使えないし何も隠せない。
小さな胸も毛も剃られた割れ目も剥き出し。
本能的に体を高木の方に寄せて隠そうとするが、当然のごとくバランスを崩しかける。
「よっと」
そんな動きを高木は素早く察知し、背中に通していた腕を更に伸ばす。
抱きしめるように優奈の体を固定する
(ひっ)
むにゅという感触が全身を巡った。
みると背中から回された高木の手のひらが優奈の右側の乳房をガッチリと握っている。
「人手が足りないので我慢してくださいね」
「え、えぇぇぇ」
優奈も年頃の女の子。イケメンにお姫様抱っこをさせる夢も何度も見たことはあるが、この状況はあまりに違う。
なにしろ、今は全裸なのだ。
足の方から見れば、色々と見えてはいけないものが晒されてしるし、乳房まで握られている。
「ちょっとごめんなさいよ」
そんなことも気にせず高木は軽々と優奈の体を抱きかかえながら移動する。
「手伝おうか」
「いやいいよ。あと少しだから」
男性の姿が何人も通しすぎていくのが見えた。
隠すこともできない。
ようやく入浴用のベッドに降ろされる。
このベットはそのまま浴槽がセットされているような構造をしていた。
「さて始めますよ。いいですね」
「はっ、はい」
今更嫌とも言えない。しぶしぶOKを出すと高木は優しくお湯を掛け、優奈の体を洗っていく。
この高木という男は女の扱いに慣れているようだった。
敏感な乳首を拭く際はそっと触れる程度にする几帳面なところを見せてきた。
周りには同じことをされている老人ばかり。
先程までそばにいたキレイなお姉さんは奥にいるのか見えない。
こんな開けた場所にも関わらず、優奈の裸を見るものは高木しかいない。
思えばこんな時間はいつ以来か。看護部長のような乳房を乱暴に擦られ、肛門まで拭かれる体拭きとはまるで違う
全裸である恥ずかしさよりも入浴の気持ちよさが勝っている。
温かいお湯を全身にかけられ、意識が薄くなっていく。
数分後
『……どうだ。様子は』
『はい。安定しています。先程指示通りにカテーテルを外しましたが尿が止まらないといったこともなく血圧の変化も見られません』
『よろしい。最後に尿の出方を調べて問題ないようだったら明日からトイレのリハビリもやってもらうことにしよう。君たちもよく見ているように』
『はい』『はい』『はい』『はい』
(複数の男の人の声?……なに……)
下半身に風を感じた。
優奈が目を開けると自分の股が開かれ固定されている姿が見えた。
まるで、幼児がおむつを変える格好そのままに。
足元には5人ぐらいの男子に囲まれている。
誰もが開かれた足の間をのぞき込んでいた。
「いっーーーー」
悲鳴が喉仏まで上がったが必死に堪えた。
もしここで叫び声なんて上げてしまえば周り中の視線が集中するのは間違いない。
いや、それどころかナースセンターから何事だと人が集まってくるのは目に見えていた。
そうなれば余計な恥を書くのは自分自身。
どんなに恥ずかしくても大声を出すわけにはいかなかった。
「少し痛みますけど我慢してくださいね」
ベテランと思われる年齢の男性医師は優奈のヘソより下にある下腹部に親指を置く。
また性器を開かれるのか思って体を固くしたがどうやら違うようだ。
指はちょうど割れ目の真上あたりを触れていた。
こんなところでなにをするつもりなんだろうか。
そんな疑問を考えるよりも前に強い圧迫感が優奈の体をかけめぐる
(え?なに?)
みれば医師の親指が優奈の柔らかい下腹部を深く突き刺すように押し込んでいた。
「あっ」
指が完全に埋没するとどこが艶っぽい声が漏れ、しばらく忘れてきたなんとも言えない感覚が彼女の体をかけめくる。
この感覚はなんだったか。そう。トイレに行こうと急ぐ時。
急ぐ……どこへ。トイレ……トイレ!?
「ああっちょっと待って」
こんな人前で漏らすなんてそんな恥ずかしいことは出来るはずがない。
優奈は必死に下半身に力を入れようとするが医学知識を持った医師の指が正確に膀胱を捉えているのだ。
我慢なんてできるはずがない。
医師は捻りこむように膀胱をさらに圧迫させると、なんとも言えない甘い声とともに優奈の頬が色っぽく赤く染まる
割れ目が本人の意思とは無関係にぴくりと動く。
「良し。出てきた。学生の皆さん見てみなさい」
医師はもう片方の指で優奈の割れ目を開いた。
すると透明の水が流れ落ちる。
「そ、そんな」
優奈は声を殺して心の中で泣いた。
人として決して見せてはならなかったのに我慢できず出してしまった。
「ここで見るべきは尿の勢いと量。汚いとか恥ずかしいとかそんな感情は捨てるように。わかったね」
医師は手が尿で濡れても気にせず割れ目を開き続けた。
「はい」
学生たちの視線に晒されながらも尿は流れ続ける。
尿は空中を飛ぶこともなく、優奈のお尻へと伝わり、濡らしていく。
それはまるで男の手によって強引にオシッコをさせられた女の悔し涙を表しているようだった。
10分後
「そんなに落ち込まないで。あんなもんはみんな見慣れているからさ」
高木は病室に戻っても泣きっぱなしの優奈をずっと慰めていた。
例によって胸は丸出しにされているが、今の彼女はそこまで気が回らない。
「見慣れているってそんなもんなの……」
確かに女子高生が目の前でオシッコをしたというのに物珍しさで見ている人はいなかった。
結構若い学生も多かったのに慣れている感じだった
「そうそう。僕達には練習台になる患者がいるから。ほらさっき話をしていたあの子」
高木は意味深に壁を指差した。
「それってもしかして」
「そうだよ。あの子は隣の病室にいる山崎真由さん。5年ぐらい前に交通事故にあってずっと入院している患者。確か年齢は23歳じゃなかったかな」
あまりにさらっと患者の個人情報を喋る高木に少し不思議がる。
この病院は患者の羞恥心は全く考慮してくれないが、個人情報をないがしろにする感じはしなかったのに。
「あ、あの子は学用患者で献体にもサインしているからそのあたりオープンなんだよね」
「学用患者?つまりどういうこと?」
「うーん。なんていえばいいかな。治療費を免除するために体を差し出すと言ったら誤解されそうだし」
「体を差し出す?それって変な検査をされても文句は言えない立場ってことなの」
優奈も散々な目にあってきたが、これらはあくまで治療の過程。
そんな不必要な検査等はされていないが真由さんの場合はそうではないようだった。
「余計な検査とはちょっと違うけど僕たちの勉強台だからまぁそう思ってくれていいかな」
「そういえばさっき言ってた献体って」
「制度を聞いたことぐらいあるだろうけど死後は自分の体を病院に提供し医学生たちの勉強のため『使う』ってこと。その代わり火葬費等は全部病院が出すシステム。結構利用者多いんだよ。真由さんみたいな20代は珍しいけどね」
話を聞いて優奈は血の気が引いていくのを感じた。
真由と初めて出会ったときは裸を晒してもまったく動じない精神力に感心していた。
自分は裸にされれば、すぐ狼狽えて醜態を晒す。
それに比べてなんてカッコイイんだろうとまで思った。
しかし背負っている覚悟が違いすぎたのだ。
(もう一度あって話をしたいな)
優奈は壁を見つめた。壁の先には真由さんがいる。
面識があるとはとても言えない関係であったが、それでもどこか親しみを覚えていた。