裸体劇に目覚めた妹

裸体劇に目覚めた妹

「はいはい。今開けます。春木君、予定より早かったわね……って兄貴???」

 1年ぶりに実家に帰った高市は正月早々から面食らった。
 それは妹も同じなのか玄関で固まっている。

 いや、彼も妹の成長が早いのはわかっていた。
 妹も来年には中学2年。もう子供の頃とは違う。
 そう。このぐらい年頃の子は情緒不安定で何でも怒る
 実際に去年の正月はイヤらしい目で見ていると言われて大喧嘩になったぐらいだ

 それがどういうことか。記録的な暖冬で頭でもやられたのか妹は真っ白なパンツ一丁で玄関に現れた。
 膨らみかけを通し越した立派な胸も健康そうな若々しい生足も丸見えだ。
 
「な、なんだ。その格好は」
 思わず大声を出してしまった。
 すると妹は突然顔を真っ赤し、近くにあった花瓶を手に取る。
「見るなーーーばか!!!」
 妹の手から離れた花瓶が飛んでくる。
 一体何が起きているのか。顔をよく見ると1年前とは髪型も違う。
 似合っていた三つ編みではなく、今は男の子のような短髪だ。
 僕は男になるんだという謎の反抗期か?いやそれも違う。
 妹がつけているパンツは白の女物。そこから伸びるスラッとした足も男と思い込むには無理がある。
 そもそもこんな膨らんだ乳房を晒して男だというわけがない。
 わからない。そんなことを思っていると彼の頭に花瓶が直撃する。
 ごつん。
 あっさり体がひっくり返る。
「きゃぁぁ。兄貴。ごめん!!」
 妹の焦る様子を見ながら高市の意識は薄れていった


■ 
 リビングで横になっていると落ち込んだ姿の妹が現れた。
 相変わらずパンツ一丁だ。目を開けて体を見ても胸も隠そうとせず先程のように怒ることもない。
 どうやら単純に怪我をさせたのを相当気にしているようだった。

「事情を聞こうか」
 起き上がり静かに事情を問い詰めた。
「家の中では裸でいろと言われてその特訓なの」
 妹は腰に手を掛けて胸をやや突き出すポーズを取りながら答えた。
 この乳房を相手に見せることを心がける話し方には記憶にあった。
 そう。これは中学生の時に入っていた演劇部のしきたり。
 このポーズをした同級生、後輩の乳房を見て中学時代は過ごしたのだ。
 忘れるはずがなかった。

「え? お前、演劇部に入ったの」
 すると小さく「うん」と妹は頷く。
 なるほど。これで納得がいった。
 舞台役者は見られてナンボ。大量の視線を浴びても緊張しないようにと裸で演技させることがある。
 特に母校の演劇部は裸体演劇で有名な高橋美久も生み出したちょっとした名門。
 それだけに練習は厳しく実際に高市も3年までは残ることが出来なかった。

「しかしお前、演劇とか興味あったっけ?」
 あまりに当たり前の疑問をぶつけた。
 高市が部員だった頃の妹は自宅でやる全裸練習を見ると速攻で逃げるほど恥ずかしがりだったからだ。
 いったい、どんな心変わりなのか。

「友達に誘われて仮入部をしたらあの高橋美久が来ていたね。それがもう素敵すぎて」
 どこか遠い目を見ながら、妹は語る。
 なにやら、のぼせている感じすらした
「あー、そりゃ無理ないわ。あの人は本当に凄いよな」
 目を閉じれば、当時のことを思い出す。
 高橋はまだ今のような大役者ではなかったが、それでもすでに売れっ子だった。
 そんな女優が仮入部でしかない1年の前で裸体劇を見せてくれた。
 静まり返った体育館に見事なプロポーションを見せて完璧な演技をする高橋美久。
 今でも揺れる豊満な乳房や陰毛の形がはっきりと思い出させる。
 あれを感銘されて入部したものだったが

(結局才能がなくて2年でやめてしまったけどな)

 やはりあの世界は努力では埋められない才能の世界。
 チンコを女の子に見られただけでセリフを噛むような高市には最初から無理な世界だったのだ。

「しかしお前が演劇ねぇ」
 目の前にある乳房をじっと見た。
 乳首は小さく乳房の盛り上がりが大きい。学生当時は30人ぐらいの女子の乳房を見た彼から見ても、張りがありなかなか立派な方に思えた。
(いや、立派なのは胸の大きさではなくて態度か)
 そう。何よりも驚いたのはその態度だった。
 妹はパンツ一丁にもかかわらず、兄の目をしっかり見て話してきた。
 乳房をやや突き出し『どうぞ見てください』のポーズも様になっていた。

 女子が乳房を晒すことがそんな甘いことではないのは当時の体験でよくわかっている
 涙を流して乳房を見せに来た女子部員を何人も見てきた。
 それなのに今の妹は堂々としている。
 1年前にあったときはまさに我侭な子供と言う雰囲気だったが今はそれがない。
 精神的にも肉体的にも成長を感じられた。

(それでも突発的なことがあると素が出るようだが)
 ふと気になり、高市は妹の全身を見直す。
 ジロジロと眺めるが妹の体には傷一つなかった。
 卒業してから5年は経つがどうやら今でも演劇部は体罰禁止であるようだ。
 それはつまり妹はしごきや痛みにおびえて裸体練習をやらされているわけではないのが伺えた


「すみません。南さんいますかー」
 そんなことを考えているとチャイムが鳴り玄関から男の子の声がした。
「あ、兄貴、ごめん。友達が来たからしばらく席を外すね」
 裸の妹が玄関に向かって歩く。体を隠すものは何も持っていない。
 どうやらこのままの姿で会うようだ

「おい。服は着ないのか」
「あーこれも部活動だから。兄貴もやっ出たでしょう。1日1回は異性に裸を見せて練習するアレ。服を着たら意味なくなっちゃうよ」
「そりゃそうだけど今来る男は恋人が何かなのか?」

 特訓は毎日全裸を見せることが要求される。
 必然的にカップルでやる部員が多かったが妹の口から聞こえたのは予想外の言葉だった

「全然、クラスの隣の席に座っているだけの男子。事情話したら協力してくるというから手伝ってもらっているの」
「はい?」

 パタパタと妹が玄関に走る
「お邪魔します」
 男子の声が聞こえて部屋へと2人が上がっていく。

 しばらくすると発声練習の声がした
「あえいうえおあお」「わえいうえおわお」
 あー俺もやったなと高市は懐かしい気分になると同時に当時の辛さを思い出していた。
 いま妹は全裸になって男の前で声を出しているのかと思うとやはりなんとも言えない思いが過ぎった
 
 
30分後

「あけましておめでとうございます。クラスメイトの春木です」
 男子学生がわざわざ挨拶にやってきた。
 なかなか美男子あり、好青年といえる雰囲気。
「おめでとう。これからも妹と仲良くやってくれ」
「もちろんです」
 お辞儀をすると、ポケットからスマホが落ちた。
 春木は焦ることなくスマホを拾い、玄関へと向かう。妹も一緒だ。
 ただそれだけだったのに、なぜかスマホのことが引っかかった。
 あの中にどんな画像が入っているのか。妹の恥ずかしい写真はないのかと。


「つかれたー」
 妹が戻ってくると椅子に崩れるように座り込んだ。
 息が荒い。そのせいかほんのりと肌には赤みが増し乳首も心なしか大きくなっていた。
 無理もないと思った。異性の前で全裸になるプレッシャーは相当なものだ。
 
「なぁ。辛かったらやめてもいいんだぞ。俺だって途中でやめたんだし」
 常に乳房をさらけ出す妹が不憫に思えて、つい口に出してしまう。
 そんな権利は何もないのはよく理解していたのに。
 
「何?嫉妬なの? ご生憎様。僕は兄貴と違って才能があるのよ」
「才能?」
 そう言えば妹に才能があるかなんて考えもしなかった。
 あの恥ずかしがりやの妹がこうしてオッパイをさらけ出していることを考えても、すでに相当の修羅場は潜ってきたんだろう。
 だがそれだけだ。
 あの世界は見られる覚悟があればいいってものじゃない

 そんな思いが顔に出たのか妹はキッときつい目つきを見せてから障害物が少ないスペースに移動する。

「兄貴、見てて」
 そして下着を躊躇いもなくスルッと下ろした。
「え?」
 妹のあそこには毛がなかった。大昔に見た記憶のように閉じられた割れ目があるだけだ。
(いや、よく見ればやはり昔とは違うか)
 兄は実の妹の割れ目を冷静に分析していた。
 確かに毛がなくても、小学生のものではない。
 今の妹の割れ目は土手のような盛り上がりもあり年齢相当の成長を感じさせた。

 妹はそんな兄の反応を気にすることなく演技を始めた。
 演技と言っても声は出さない。その場も動かない。
 ただ手を動かし、表情を作り、全身で表現をする。

 全裸の妹がひざまずき、顔を上げる。
 ぷるんと乳房が揺れると同時に手を天井へと向ける
 
 台詞もあらすじもないので話はわからない。
 それでも妹が演じている役の気持ちが理解できた。
 足を開いたり腰を曲げたりととても全裸でやるポーズではないことも顔色一つ変えずにやってのける。
 小さく灰色掛かった肛門の有様すら晒しても演技はぶれない。
(凄い……)
 胸元から汗が流れ落ちてくる。それでも疲労も羞恥心も感じられない。
 役に入り込んでいる完全なトリップ状態

 妹は最後に足を肩幅まで開き両手を水平にし体をすべてを兄の方へと向けた。
 乳房の震え。割れ目の形。全てがセリフを語っているようだ。
 役者は顔で演技するという。だが裸体劇は体で演技をする。
 見せているもの全てで伝えるのだ。
 そう。今の妹は1年の時に見た高橋美久の裸体演技そのものだった。

「へへぇ。どう兄貴。大したものでしょう」
 演技を終えた妹は急いでパンツを履きながらそういった。
 演技中は集中力で誤魔化されるが、下半身を見せるのはまだ慣れていないようだ。
 顔も赤いし相当恥ずかしかったのが伺える

「すごかった。びっくりした」
 素直な感想を言った。
 妹の実力とともに覚悟も予想以上だった
 妹の割れ目はむき出しだった。これは妹が生えていないからではない。
 見せるためにあえて剃っているのだ。今思えば短髪にしたのも体を隠す要素を少しでもなくすため。
 妹の本気度が伝わってくる。

「それでね。卒業したら高橋美久さんに弟子入りしようかと思っているの。そのためにも演技力を磨かないとね」
 乳房を晒しながら偉そうに夢を語る妹。
 妹も数ヶ月後には2年生。それはつまり1年間演劇部の様々な露出練習に耐えきったことを意味する。
 1年の演劇部の練習は本当に過酷だ。
 特に2学期に行われるパンツ1枚の公開劇のテストがきつくて当時ですら1割も残らなかった。
 そんなメニューをこなした妹。おそらくクラスメイトで妹の乳房の形を知らない男子はいないだろう。
 そんな辱めを受けても妹はやり続けた。それは途中で挫折した兄としても誇らしいことである。

「頑張れよ」
「うん!!!」
 いい返事が帰ってきた。来年の正月にはどんな立派な姿を見せてくれるか。
 今から楽しみな兄であった

おしまい
 
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