本編
あれから一ヶ月後
弟こと沢村ひろしは、某所にある特別拘置所の前にいた。
その建物は刑務所のように大きくはないが、周りは高い壁で囲まれており、 まさに世間から隔離された施設の雰囲気が漂っていた。
「こんなところに姉さんがいるのか」
弟はこんな古く汚そうな建物の中で姉が生活していると思うとやるせない気分になった。
姉の容疑は薬物の不正所持。つまり麻薬だという。
あの糞真面目で曲がったことが大嫌いな姉に限って、そんなことはありえない。
弟もこれは何かの間違いだと必死に訴えたが、その甲斐なく姉は起訴され、 麻薬関係の被疑者が集められるこの特別拘置所に送られてしまった。
周りの大人は早く罪を認めて、情状酌量を狙ったほうがいいという。
だが、それでは姉の人生が滅茶苦茶になる。大学だって二度と戻れなくなるだろう。
あんなに知的で、自慢できる姉が犯罪者になるなんてありえない。
なんとしても冤罪を証明しよう。そのためには、まず姉にあって事情を聞かなくてはならない。
ケータイのタイマー音が鳴る。
「そろそろ面会の時間か」
弟は拘置所の入り口に向かって歩き出す。
ようやく面会が認められた姉にあうために。
------------
面会室
弟は係員に案内され、狭い面会室に入った。
この面会室は一対一の対面方式らしく、弟の目の前には面会者が座る椅子。
そして中央を分断する分厚いガラスの向こう側には被疑者が座る椅子が見えた。
椅子に座りながら弟は待ち続けた。
するとガラスの向こう側にある扉が開き一人の女性が入っている。
-------姉さん
その女性は一ヶ月ぶりに見る姉だった。
「姉さん。体は大丈夫なの……って、なに」
弟は姉の服装みて驚きの声を上げる
姉は地味な女性だった。
家の中でも露出度が高い服を着ないし、外に行く時も短めなスカートや胸元を見えるような服なんて絶対に着ない。
そんな姉が白い薄地のTシャツを着て、下は太股がむき出しのショートパンツ、半ズボンと呼ばれるものを履いていた。
家でも滅多に見ない姉の輝くばかりの生々しい太ももを目のあたりにし、 弟は思わず生唾を飲み込む
「やぁ。よく来てくれたね。嬉しいよ」
椅子に座った姉は戸惑う弟をなだめるように喋り始める。
まるで町中で偶然あったみたい軽い口調だった。
「僕もあえて嬉しいよ。で、どうしてこんなことになったの?。なにか心当たりはないの?」
姉の格好は気になるが時間もないので、弟はいきなり核心の質問をした。
「それが私にもさっぱりわからないんだよ。大学の友人の友人が怪しいパーティーを開いて逮捕されて、 その捜査が自分のところに来たのは理解できる。薬物事件はかなり遠い関係者まで調べるのが基本だからね。 わからないのは、なぜ自分の大学ロッカーに薬物があったのか」
いつもの姉らしい冷静でサバサバした言い回し。
弟は確信した。やはり姉は、やっていない。
それは家族しかわからない確信めいたものだった。
「つまりロッカーで発見されたブツは身に覚えのなく、もちろん薬もやっていない。これで間違いないんだね」
念を押す弟。わかっていても姉の声として違うという言葉を聞きたかった。
「当たり前だろ。ひろしだって知っているだろ。私が医者嫌いなことを。なぜ医者が嫌いかというと注射が嫌いなんだよ」
少しとぼけたような表情。軽口を挟んで心配させないようにするいつもの姉の会話術。
それを聞いた弟は満足気に大きく頷く。
「わかった。必ず助けるから、もう少しだけ待って」
「信じてくれてありがとう。それじゃあと少しだけこの飯がまずくて朝が早い場所にいるとするよ」
姉は明るい表情を見せながら、冗談交じりに話した
あれから一ヶ月後
弟こと沢村ひろしは、某所にある特別拘置所の前にいた。
その建物は刑務所のように大きくはないが、周りは高い壁で囲まれており、 まさに世間から隔離された施設の雰囲気が漂っていた。
「こんなところに姉さんがいるのか」
弟はこんな古く汚そうな建物の中で姉が生活していると思うとやるせない気分になった。
姉の容疑は薬物の不正所持。つまり麻薬だという。
あの糞真面目で曲がったことが大嫌いな姉に限って、そんなことはありえない。
弟もこれは何かの間違いだと必死に訴えたが、その甲斐なく姉は起訴され、 麻薬関係の被疑者が集められるこの特別拘置所に送られてしまった。
周りの大人は早く罪を認めて、情状酌量を狙ったほうがいいという。
だが、それでは姉の人生が滅茶苦茶になる。大学だって二度と戻れなくなるだろう。
あんなに知的で、自慢できる姉が犯罪者になるなんてありえない。
なんとしても冤罪を証明しよう。そのためには、まず姉にあって事情を聞かなくてはならない。
ケータイのタイマー音が鳴る。
「そろそろ面会の時間か」
弟は拘置所の入り口に向かって歩き出す。
ようやく面会が認められた姉にあうために。
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面会室
弟は係員に案内され、狭い面会室に入った。
この面会室は一対一の対面方式らしく、弟の目の前には面会者が座る椅子。
そして中央を分断する分厚いガラスの向こう側には被疑者が座る椅子が見えた。
椅子に座りながら弟は待ち続けた。
するとガラスの向こう側にある扉が開き一人の女性が入っている。
-------姉さん
その女性は一ヶ月ぶりに見る姉だった。
「姉さん。体は大丈夫なの……って、なに」
弟は姉の服装みて驚きの声を上げる
姉は地味な女性だった。
家の中でも露出度が高い服を着ないし、外に行く時も短めなスカートや胸元を見えるような服なんて絶対に着ない。
そんな姉が白い薄地のTシャツを着て、下は太股がむき出しのショートパンツ、半ズボンと呼ばれるものを履いていた。
家でも滅多に見ない姉の輝くばかりの生々しい太ももを目のあたりにし、 弟は思わず生唾を飲み込む
「やぁ。よく来てくれたね。嬉しいよ」
椅子に座った姉は戸惑う弟をなだめるように喋り始める。
まるで町中で偶然あったみたい軽い口調だった。
「僕もあえて嬉しいよ。で、どうしてこんなことになったの?。なにか心当たりはないの?」
姉の格好は気になるが時間もないので、弟はいきなり核心の質問をした。
「それが私にもさっぱりわからないんだよ。大学の友人の友人が怪しいパーティーを開いて逮捕されて、 その捜査が自分のところに来たのは理解できる。薬物事件はかなり遠い関係者まで調べるのが基本だからね。 わからないのは、なぜ自分の大学ロッカーに薬物があったのか」
いつもの姉らしい冷静でサバサバした言い回し。
弟は確信した。やはり姉は、やっていない。
それは家族しかわからない確信めいたものだった。
「つまりロッカーで発見されたブツは身に覚えのなく、もちろん薬もやっていない。これで間違いないんだね」
念を押す弟。わかっていても姉の声として違うという言葉を聞きたかった。
「当たり前だろ。ひろしだって知っているだろ。私が医者嫌いなことを。なぜ医者が嫌いかというと注射が嫌いなんだよ」
少しとぼけたような表情。軽口を挟んで心配させないようにするいつもの姉の会話術。
それを聞いた弟は満足気に大きく頷く。
「わかった。必ず助けるから、もう少しだけ待って」
「信じてくれてありがとう。それじゃあと少しだけこの飯がまずくて朝が早い場所にいるとするよ」
姉は明るい表情を見せながら、冗談交じりに話した