逮捕された姉 17話

17話 2本指検査

 「またね」
 初めて出会ったときと同じように愛が手を振りながら去っていく。
 姉は入り口の近くに置かれた大きな時計をちらりと見た。
 現在の時刻は14時45分。今日の運動は15時までなので時間はまだあった。
 愛はもう時間切れのようなことを言っていたが、実際にはまだ余裕がある。
 もう少しだけ話を聞こう。そう思った矢先にガチャリガチャリと聞き慣れた金属の嫌な音が2回した。

 音がした方を向くとおばさんたち2人が驚きの表情をしたまま固まっていた。
 両手には手錠が掛けられている。神崎刑務官がいきなりオバサン2人に手錠を掛けたのだ。 

「なにするのよ!」
 あまりの唐突さに激怒するおばさん。
 当然の抗議だと言うのに神崎はまったく気にせず、今度は腰縄をキツめに縛る。
 説明も何もない。相変わらずの手厳しさだった。そこには相手が可哀想とかいう考えはどこにもない。


 見たこともないオバサンが縛られただけだと言うのに姉は思わず目を逸す。
 手錠腰縄姿の屈辱は誰よりも理解していた。
 あれをやられるたびに自分は犯罪者だという言われもない自覚を植え付けられる。
 いくら冤罪を主張してももう無駄だとではないかとすら思ってしまう。

「10分経ったら連れてくるように」
「はい。わかりました」

 喜美が敬礼をすると神崎は項垂れだ2人のオバサンを連れて建物の中へと消えていった。
 どうやら5人同時に検査をするのは大変なので2つのグループに分けたようだ。
 
「10分じゃもう少し時間はあるわね。3人ともまだ遊んでいていいわよ」

 喜美はあくびをしながら眠たそうに話す
 先程の神崎とはまるで違い、恐怖とか威厳はまるで感じない。
 本当に学生のような姿だった


(今のうちに)
 これがラストチャンスと思った姉は愛に近づく。
 独房に入れられている彼女は当然のごとく愛と話す機会は少ない。
 今日を逃せば次はいつになるかわからない。その一心の思いで話しかけそうとするが。

「ここから出たら○○に行って○○に合いなさい」
「本当に助かります。ここにきてからアレがやれないから◯◯で」

 肝心の愛はもう1人の30代半ばの女性となにやら真剣に話し合っていた。
 その女性は軽くパーマ掛けており、外見だけ見るとそのあたりにいる若奥さんに思えた。

 後ろにいる気配を感じたのか愛が振り向く。

「丁度いいわね。紹介しておくわ。こちらは沙……いいえ、今は8番と言っておきましょう。うちのグループでセールスをやっていたこともある人よ」

 愛がそう言うと8番はペコリと頭を下げ、
「よろしくね」
 と、言った。少し年齢が感じさせるが綺麗な声だった。

「はじめまして。竹田久美子です」

 姉は番号ではなく、あえて本名を名乗った。
 自分は冤罪であり恥ずべきことや隠さなくてはいけないことはなにもしてない。
 だからこそ常に堂々と胸を張ってきた。そう。肌を晒す時ですら。

「久美子? ああ、あなたがあの冤罪の。突然こんなところに連れてこられて大変だったでしょう」
「……え? 私のこと知っているのですか。しかも冤罪だということまで」
「もちろんよ。私も愛さんも知らない人があんなにブツを持っているわけないじゃない。当たり前じゃないの」 

 自然と姉の顔に笑みが溢れた。やはり愛は事件の詳細を知っている。
 逮捕前にあれだけ探した真相がこんなところにあったのだ。

「でも愛さんはどこからそんなことを」 
 姉にとって必要なのは無罪の証拠。なんとかして聞き出そうと話を続けようとするが。
「ピーーーー。集合!!!」
 笛の音がなった。
 愛は8番の背中を軽く叩き「早く行きなさい」というと言うと走りだす
「あっ ちょっと」 
 もう話をする状況ではないのに姉はもう一度呼び止めようとするが愛は小さく首を振りながら言う

『これ以上はお友達になってくれるなら教えてあげてますわよ』
 笑みを浮かべながら愛は刑務官の元へ走っていった
 意味がわからずポカーンとする姉。
 
(どういうこと?)
 助けてくれるのかと思えば突き放す
 彼女は愛の行動パターンがさっぱりわからない。
 そもそも、なぜ愛は自分に興味があるのかすらわからなかった
 もし、愛の正体が予想通りなら声を賭ける理由すらないからだ。
 愛にとっては誰かの代わりに捕まった馬鹿な大学生でしかないのだから。

『お友達』『セールス』
 言葉自体は日常的に使われる単語でしか無い。だが愛の口から出たその言葉は決して触れてはいけないモノのような気がした

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 数分後。3人の縛られた女性が検査室と小さく書かれた扉をくぐった。
「けっ」
 手錠腰縄姿にも関わらず8番は唾を吐くような仕草をし、愛ですら嫌悪感を隠さない。
 姉も真っ青な顔で机の上に置かれたモノを見つめていた。
 そこにはせっかく希望の光が見え始めたと言うのに、それをぶち壊すような冷たい物体。

 今思えば、今週の姉は前向きな気分だった。
 おかげで愛と対等に話が出来て、色々なことを聞き出すことにも成功した。
 ここに来てから封じられていた本来の頭脳の良さや、積極性が遺憾なく発揮されたのだ。
 それはなぜなのか。彼女自身も気がついていなかった。
 しかし、目の前の現実を見て悟った。あーそうだ。もう週末だと言うのに今週はこれをされていなかったのだと。

 3人の視線が集まる先。人が当たり前に持つプライドや反抗心を打ち砕き、服従させるモノがあった。
 金属のトレイに入れられた3本のガラス棒。
 この冷たく長いものがここにいる3人に使われるのは間違いなかった
 
 神崎刑務官は扉の鍵を掛けた
 ガチャと響く音。重い施錠の音はそれだけここで非人道的なことを行われる証拠のように思えた。

「ですから。今日は◯◯なのであれを」
「え? 2本指をやるんですか。◯◯◯は必要な……いえ異論は……はい。わかりました」

 神崎が喜美に向かって厳しい口調で指導をしているのをみて姉は悟った。
 このメンツは偶然に選ばれた3人ではない。
 学生気分が抜けない喜美に覚悟を決めさせるつもりなんだと。

 事実、集められた3人は多種多様だった。
 冤罪の可能性があり普段から仲良くしている19歳の姉。
 刑務官からも恐れられている20代の愛。30代の主婦っぽい女性。
 このメンツを冷静に検査できるなら合格という意図があるのは明らかだった
 
 喜美は似合いもしない強い口調で脱衣を命じる。

「服を脱いでくだ……いや脱げ」

 だがナメられているのか8番が反応的な質問をした

「脱げってどこまで脱ぐのですかー」
 釣られて愛が軽く笑い声を出す。とっさのことで返答に詰まる喜美。
 やはり刑務官としての経験が足りていないのだ。
 マニュアル外のことが起きるとまったく対処が出来ない。

 少し呆れた顔をした神崎刑務官が助け舟を出す

「上着もズボンも下着も靴と靴下も全部だ。3人とも早くしろ!!」

「ハイ!!」
 恐怖を感じたのか8番が急いで脱ぎ出す。
 さほど大きくないのにやや垂れている乳房がポロリと顕になるがあまり気にしている様子はない。下着を下ろす際も戸惑いを感じていないようだ。
 刑務所暮らしも長く羞恥心がかなり麻痺している人物であることを感じさせた。

 しかし姉はまだそうはいかない。いくら毎日独房で全裸検査を受けているとは言え、複数の人前で裸になるのは慣れていないのだ。
 いくら心では堂々としようとしても勇気がいた。

(早くしないと)
 ガラス棒検査の恐怖も加わり、上手く服が脱げない。
 震える手でなんとか上着を脱ぐと真横からほんの小さな声がした。

『大丈夫よ』と

 既に全裸になり直立不動のポーズを取った愛が殆ど聞こえないような声で励ましてくれた
 そのおかげでと言うわけでもないが、落ち着きを取り戻した姉は小さくうなずき、身に付けているものをすべて外す。
 ここの床はフローリングしてあるたけの塗り床だ。
 独房のような畳の部屋ではなく裸足でいるようには設計されていない。
 床から伝わる冷たい感触。乳房に当たる空気の流れの感触が姉の心をより惨めにさせた。


「2番前へ」
 
 愛が最初に呼ばれた。
 裸体にも関わらず愛はまるでモデルのような歩きで机の前まで行く。
 すらりとしたプロポーションを全て晒しながら歩く姿は美しさすら感じた。
 無尽蔵に生え、手入れされていない陰毛も女体の素晴らしさを損なうことはない。
 流石に表情は硬いが、今から地獄の検査を受ける女性とはとても思えなかった。
 

「足を大きく開いて腰を曲げる。両手で尻を開け」

 検査は普段と手順が違っていた。
 効率が求められる時は自らの手で秘部を開かなくてはならない。

 愛が腰を曲げ、言われたとおりに自分の手で尻を開く。
 複数の目に愛の秘部が晒されたその瞬間、なんとも言えない空気が部屋を覆った。
 姉の目が大きく開く。愛のあそこから目が離せなかった。
 顔を背ける。目をつぶるという行為すら忘れていた。
 それは検査する側の刑務官も同じだった。あまりの光景に固まっている。
 それはこのポーズがどれだけ女にとって残酷であるかを示していた。

 丸見え

 まさに女の全てを晒すポーズ。両方の手で尻を開いているため肛門も性器も半開きになって中が覗ける状態だった。
 愛のあそこは年相当にやや黒ずんでおり、それなりの性体験があることを伺えた。

(うそ……)
 姉が驚いたのは性器より肛門の有様だった。
 愛の肛門は灰色をしており、穴がぱっくりと覗けていた。

 思わず額から一筋の汗が流れる。
 その穴は一番太いガラス棒が無理なく通過する大きさに思えるからだ。
 愛から聞かされた刑務所は地獄だと言う話が脳裏をかすめる
 この肛門の有様を見ると、どれだけのガラス棒がこの穴を通過したのか見当も付かない
 

 数秒の時が流れた。

「ごほん」
 神崎刑務官がわざとらしい咳ばらいをすると喜美がビクリと体を震わす。
 神崎が怖いのは囚人ばかりではない。刑務官の間でも恐れられる存在なのを表すかのように喜美は作業を初めた。
 ビニール製の使い捨て手袋をし愛の足元に座り込む。
 そしてペンライトを使い、のぞき込んだ。

 近い。目と鼻先とはこのことか。鼻息が直接当たるほど喜美の顔は愛のあそこに接近していた。
 左手で女の壁を大きく開いた。ここまでは数日に一回はある性器内検査通りの工程。

 検査を行っている喜美の顔が苦痛で歪む。
 やりたくない。でもやらなくてはいけない。
 そんな思いが交差したような顔をしながら右手の人差し指と中指をピンと立てる。
 1本の槍となった2本の指。喜美はゴクリと生唾を飲み込む。そして己を指をズブリと愛の膣粘膜の深みに突き刺した。

「かっ……あぁぁぁ…」

 指が柔らかな肉の壁をかき分けて奥まで到達するといつもはクールの愛の口から悲壮感が漂う声が漏れる

 姉も驚きのあまり悲鳴を出しそうになる。
 こんな乱暴な性器検査はやられたことなかったからだ。
 普段から全裸検査を受けているとは言え性器の内部まで触れられるのは稀だった。
 あったとしても女の壁を開き、人差し指で中をなぞる程度なのにこれはいったい。

「あれは2本指検査。うちでは刑務官の自主判断で行うことになっているけど刑務所ではガラス棒とともに毎朝行われている定期検査の一つなのよ」
 
 真横で監視をしている神崎が独り言のようにボソリと言った。

(うそ……)
 もちろん姉も性器内の精密検査を何回かやられたことがあるが、それは分娩台を使用し医師が行う検査だった。
 女性の性器は神聖なもの。だから刑務官と言えめったに触らない。
 そう勝手に解釈していた。しかしそれは大きな間違いだった。
 必要とあればこのように奥深くまで調べる権利すら与えられていたの
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