ヌードモデルに選ばれた姉

プロローグ 破滅の前兆


 とある町に全国から注目される私立学校があった。
 その学校は中曽高校。創立15年の学校でありながら、優秀な生徒を生み出す高校として知られていた。
 スポーツ活動では全国有名校と互角に戦い、コンクールでは次々と賞を取った。
 なぜ、この学校が短期間でここまでの結果を出せたのか。
 理由の一つとして、学校側の徹底した結果主義があると言われている。
 結果を出した部の要求はほぼ無条件で受理され、逆に成績不振が続く部には予算すらろくに与えられない。
 優秀な部活こそ勝利者。行き過ぎた結果主義。
 この学校は一種の権力社会にも似た構図になっていた。

 そんな学校に小さな美術部があった。
 部員30名の目立たない部であったが、女部長が書いた絵が全国コンクールで優勝。
 日陰の部から一躍勝ち組の座に駆け上がった。
 この結果に喜んだ学校側は、美術部の強化に乗り出す。
 美術部員数の増加や、部費の大幅アップと部にとって魅力的な提言を、次々としてきたが女部長は全て拒否。

 女部長が出した要求はただ1つ。
 美術部が選んだ女子生徒をヌードモデルとして使いたいので学校側から説得してほしい。ただそれだけだった。
 学校側は当然戸惑った。
 学校からの説得は生徒にとって事実上の強制。
 つまり美術部とは関係がない一般生徒が、半ば強制的にヌードモデルをやらされる。
 普通に考えたらとても許可は出来ないが、貴重な未成年のヌードを書くことによって部員の技術向上が期待できるのもまた事実だった。

 先生たちは悩んだ。
 躊躇う学校の反応を見た部長は妥協案として、
[モデルを選ぶのは月に一人だけ]
[モデルの絵と収集した個人情報は全て学校側に提供する]
[部外者は一切立入禁止]
[モデルの名前は公表しない]
の条件を提示。
 これなら選ばれた生徒のプライバシーが守られ、学校側にも情報メリットがあると部長案を受理。
 この瞬間から生徒の誰もがヌードモデルになる可能性を秘めた学校生活の日々が始まった。

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 それから数カ月後。
 今日は美術部の発表会。
 月一回のペースで行われる、この発表会は数多くの生徒が注目する恒例のイベントになっていた。
 なぜなら、この発表会で公開されるのは、美術部が選んだ女子生徒の裸体画。
 今回は誰が選ばれたか。思春期真っ盛りの生徒に取っては気になるものだった

 美術部の前に貼りだされたのは部員30人の中でも優秀とされた15枚の絵。
 油絵調。スケッチ。抽象画。
 色々なタイプがあるが一般生徒たちの目を引いたのは、一番写実的かつ現実に近い部長の絵だった。

「これ、誰なんだ。子供っぽい顔をしているわりには胸がデカいな。2年生か?」
「1年のどこかの委員長という噂だけど本当かどうかはしらん」
「体もいいがこの暗く俯いた表情がいいな。モデルの絶望感が伝わって来るようだ」
「そりゃいきなりヌードモデルをやらされたんだから絶望もするだろう」

 裸体画とは言え所詮は絵。
 芸術に興味が無い一般生徒にとって絵の価値はわからない。
 それよりこの絵のモデルは誰なのか。脱いだ生徒はどんな体をしていたのか。
 そちらのほうが興味の的だった。
 選ばれた女子生徒は複数の男子生徒が見ている前でその裸体を晒す。
 表向きには生徒の意思となっているが、学校側からの要請を拒否するものはいない。
 この子に彼氏がいようが、誰にも見せたことがない処女の肌だろうが、選ばれれば、裸体を美術部員たちに晒さなくてはならない。
 部員の中には、顔見知りやクラスメートがいる場合もある。
 いくら限定された部員だけが見るヌードモデルと言われても、選ばれた女子生徒にとっては、生涯で一番辛い体験になるのは間違いなかった。
見られてなんぼ!?