ヌードモデルに選ばれた姉

07話 変わりゆく日常


翌日 放課後

 美術部が生徒をヌードモデルとして使えるのは2日間のみ。
 この2日間で概ねの形にして後はモデル抜きで仕上げをやる。
 それがこのヌード画の製作方針だった。

 今日も美術室は満席で欠席者は無し。
 集まった部員たちはいつになく明るい。
 それもそのはず。これまで数多くの生徒をヌードモデルにしてきたが佳子みたいなモデルはいなかった。
 ただ裸が美しいだけではない。何かを特別なものを持つモデル。
 それが何なのかは分からないが、あの裸を書ける喜びは誰もが感じるものだった。
 皆、上機嫌で昨日の感想を話し合っていた。

「しかし、いいモデルだったな。この絵を見ろよ。もうここまで出来たぜ」
「妙に書きやすい裸をしているんだよな。あの体はヌードモデルをやるために生まれてきたんじゃね」
「俺は裸より吸い込まれるようなあの目付きがいいな。あれは自分の裸を見たものを呪い殺そうとするような怨みが篭った目だ」
「あんな美人に睨まれたら余計に興奮するよな。だってスゲー睨んでいるくせに胸は丸出し。あそこはもろ見えなんだぜ」
「俺の位置からだとビラビラの中まで見えていたけどあんなのが名器というんだろうなぁ。あの部分だけドアップで書きたい気分だったよ」
「やだー、田中先輩のエッチ」

 隆は仲間たちの会話に入ることもなく自分の書きかけの絵を見ていた。
 ほぼ真っ白な絵。殆ど進んでいない。
 書かなくてはいけないと分かっているんだが、やはり他の皆と同じように書くことは出来なかった。

 部室の扉が開き、佳子がやってくる。
 相変わらずスラっとした体型。女らしい歩き方。
 見た目は昨日と何も変わらないが、なにか雰囲気が違う。

 やってきた佳子を見た部長は、
「やっと来たわね。じゃ別室に行って素早くバスローブに着替えて」
と命令調で話す。

「わかっているわよ」
 部長が命令すると佳子は軽くイラっとした表情を出す。

「へぇー。私にそんな態度をとっていいのかな。わかっているでしょうね」
 部長が意味深な言葉を言う。
 すると佳子の顔色が変わり急いで別室へと入っていった。

「?」
 隆は姉の行動を見て首を傾げる。
 なにかがおかしいと思った。

 バスローブ姿となった佳子が部屋から出てくる

「き、着替え、終わりました」
 佳子はそのまま部長の前に行き、直立不動で立った。
 少し動いただけで着崩れるヒモのないバスローブ。
 昨日は必死に合わせ部を抑えていたが、今日は直立不動しているので、前が大きく開いている。
 形のいい乳房の大部分は露出し、乳首が辛うじて隠れている程度。
 下半身に至っては見えてはいけないはずの黒い陰毛が確認出来るほど前がはだけていた。

 上級生を除く他の部員たちが佳子の格好を見てざわめく。
 昨日だったら、バスローブ姿にさせられただけで怒り心頭で今にも喧嘩が始まりそうだったが、
今の彼女は乳房や陰毛が見えているはだけたバスローブ姿をまるで隠さない。
 ただ部長の前に立ち、次の命令を待っている。
 その姿はまるで親に怒られるのが嫌な子供のような態度だった。

「着替えたわね。次は何するかわかっているでしょう。昨日と同じなんだから言われなくても自分から裸になってモデル台まで行く」
 部長は右手を腰に当てて、かなり偉そうに命令する。
 その姿はとても同じクラスメートに話す態度ではなかった。

「……」
 佳子は一瞬だけ悔しさを表情に出したが、結局何も言わずバスローブを取り裸になった。
 そして全裸のままモデル台と椅子がある窓際まで歩いていく。
 目の前に佳子が通り、ざわめく部員たち。
 普段から裸を見慣れている美術部員といえども乳房も下腹部も隠さない女子が目の前を歩いていく姿は、あまりに官能的な光景だった。

 モデル台まで来た佳子は女の全てが見えるあの恥ずかしいポーズを取る。
 部長は胸も股間も露わになっている佳子の姿を見て満足そうに頷く。
「ようやく自分の立場がわかったようね。あなたはもう裸を見せながら生きていくしか無い女なの。どんな場合でも、すぐ裸になれるように心がけなさい。常に体を開く気持ちを持つことが大事。わかったわね」

 佳子は悔しそうな表情を見せながら「はい」と答えた。

―――やはりおかしい。
 隆は姉の姿を見て疑念を抱く。
 朝、挨拶した時は普段通りとまでは行かなかったが、姉は近い状態まで戻っていた。
 それなのに部長を前にしたとたんこの変わり様。
 姉と部長の間にヌードモデル以外のなにか致命的なことがあったのは間違いない。
 そしてそれがあったとすればやはり昨日の別室の件。
 そこで姉を縛り付ける何かが行われたんだと隆は確信した。
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