ヌードモデルに選ばれた姉

10話 抵抗勢力の影


 放課後 教室

「おーい。白鳥。廊下で先生が呼んでいるぞ」
 まだまだ騒がしい放課後の教室に男の声が響き渡る。
 男子は椅子に座っている白鳥を見ながら「ほら、あそこ」と、教室の入り口のほうを指差す。
 白鳥は面倒くさそうに、男子がいっている方を見る。
 するとそこには見たこともない女性の教師が手巻しているのが見えた。

「誰だろ?」
 白鳥は男子に礼を言って教師が待っている廊下へ出た。
 彼女が廊下に出ると、先ほどの女性教師がやや駆け足で近づいてくる。
 若い。白鳥が謎の女性教師を見た第一印象は若いだった。
 事実、目の前に立つ女性教師は大学出たての新人教師に見えた。
 背こそ高いが、やや童顔の顔つきといい、高校教師と言うより小学教師のほうが似合う感じすらする。

 しかし、その優しそうな瞳の奥にある確固たる意志の力を白鳥は感じ取っていた。
 この新人教師を見た目で判断してはいけない。白鳥は警戒しながら相手の反応を探ろうとする。

「白鳥です。なにか、御用でしょうか」

「私は古文の藤沢です。あなたが美術部部長ね。さっそくで悪いけど今すぐヌードモデルを選ぶのをやめなさい」
 藤沢教師はその若い顔つきからは考えられないほど強い命令口調で話した。

「理由を聞いてもいいですか」
 白鳥は自分の感が当たっていたことを確信する。
 やはりそうだ。この教師は敵だ。
 
「理由ってあなたはなんとも思わないの、美術とは無関係な生徒がヌードモデルになるのよ。こんなの間違っている」
 やや声を張り上げる藤沢教師。

「私はお願いをしているだけです。ヌードモデルをやるかやらないかは本人の意志です。実際にやった本人からの抗議とかはないのでしょう」
 白鳥はマニュアル通りの説明をする。
 そう。事実上の強制だろうが、このヌードモデルは合意のもとで行われていた。

「それは……」
 藤沢が口を詰まらし、あからさまに困った表情を見せる
 その反応を見て白鳥は思った。
 この新人教師は誰かに頼まれて動いているわけではない。
 もっと単純に、このヌードモデルシステムそのものが気に入らなくて、潰そうと動いているだけだ。

「抗議は無いのでしょう。そもそもこのヌードモデルの募集は部活動の一環として正式に認可されたものです。文句があるなら学校側に言ってください」
 返事を待たずに白々しく白鳥が語る。
 もし、この新人教師に学校を動かすような影響力があるなら、わざわざ白鳥の元には来ない。
 そのことを見透かした発言だった。
 
「もういいわ。貴方じゃ話にならない」
 藤沢は苦虫を噛み潰したような表情した思ったら、クルリと後ろを向き、やや大股の足取りで去っていく。
 その歩き方を見ていても相当怒っているのが手に取るように分かった。

「藤沢先生ねぇ」
 白鳥はみるみるうちに視界から遠ざかっていく藤沢教師の後ろ姿をじっと眺めていた。
 地味なブラウスに標準的な長さのスカート。
 理想的な教師の服装でありながら、さりげなく見えるファッションセンスのよさ。
 いくら藤沢が学校を出たなりの新社会人とはいえ、女子高校生とは違う大人の女性と言える色っぽさがそこにはあった。

 白鳥がニヤリと不気味な笑顔を見せながら、部室がある一階へと歩き始める。
 今日は顧問の渡部先生が来る日。
 彼女は今思いついた案を相談すべく足早に階段を降りていった。

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美術室

「渡部先生は隣か」
 白鳥はがらんとした誰もいない美術室を見渡しながら、奥にある扉を開け、隣の準備室へと入る。

 準備室には太り気味の中年男がパソコンの前で座りなにやら作業をしていた。
 白鳥は狭い部屋に蔓延する男臭さに不快感を覚えつつも、笑顔を作りながら挨拶をする。
「渡部先生。部長の白鳥です」

 渡部が手を止めて、後ろを振り向く。
「おう、白鳥か。今、資料の整理をやっているから手短に頼むぞ」
 そう言うと渡部は再びディスプレイを眺める

 ヌードモデルの裸体画像を見ながらニヤニヤしている渡部を見て白鳥が表情が曇る。
 気持ち悪い男。顧問でなければ近寄るのも嫌な男。
 彼女は渡部に対して嫌悪感を持ちつつも、それを表に出さないように努力した。
 いくら内心で嫌っていてもこの渡部教師には逆らえない。
 なぜなら渡部はこの学校でたった一人の美術教師だったからだ
 渡部抜きではヌードモデルの継続はおろか美術部の存続も危うかった。

「藤沢先生をヌードモデルに指名することは可能ですか?」
 白鳥は気を取り直しながら静かな声で言った。
 渡部は驚いたような表情をしながら振り返る。
 当たり前だ。いきなり同僚の教師を裸にしようと言うのだから。
 あまりにストレートに言い過ぎたかと白鳥が心配すると。

「藤沢というと古文の生意気な小娘か。なぜそんなこというんだ」
 渡部は藤沢のことを馬鹿にするような言い方で聞き返す。

「さっき藤沢先生が私の元にやってきてヌードモデルをやめるようにと言われまして……」
 この反応なら大丈夫。渡部先生も藤沢先生のことが嫌いのようだ。
 白鳥は心の中でガッツポーズを取りながら、これまでの事情を話した。
 


「はぁ、またかよ。藤沢は昨日の職員会議でも生徒の人権がどうこう言ってヌードモデルを止めさせるように提言したんだよな。賛同者はなくて問題にはならなかったけど創設責任者の俺のメンツは丸つぶれだ」
 苛ついた表情をしながら話す渡部。
 相当、藤沢のことを不愉快に思っていたようだ。

「やはり学校内でも動いていましたか」
 そうでなくてはわざわざ白鳥のもとに来るわけがない。

「確かにあの生意気なインテリ女をヌードモデルにするというのは面白いアイデアだが、規約では『美術部が選べるのは本校の生徒』となっているからな。直接の指名は無理だろう」

「やはり無理ですか」
 そのことは白鳥も把握していた。

「まあ待て、直接は無理でもやり方はあるぞ。例えば藤沢が顧問をやっている部の生徒を次々とヌードモデルとして指名していけばいい。そうすれば向こうからもう止めてくれと泣きついてくる。そこを狙う」
 渡部は悪巧みを企むのはお手の物とばかりに嫌な笑みを浮かべながら話す。

「なるほど。流石、渡部先生です」
 相手に合わせながら持ち上げるように白鳥がいう。

「と言っても既に藤沢の部員の一人がヌードモデルになっているけどな。どちらにしても対決は避けられないだろう」
 
「え? 誰なんですか」
 既に敵勢力の女子をヌードモデルとして選んでいる?
 突然、予想外の話になり白鳥は戸惑いながら聞き返した。

「えっと、こいつだ」
 渡部はパソコンを操作し一人の女子生徒の画像を表示される。
 生徒の名を教えるだけなら画像なんていらないはずだが、渡部はなんの躊躇いもなく画像を表示された。

 映しだされた画像を見て思わず白鳥は生唾を飲み込む。
 ディスプレイには二枚の画像を映し出されていた。
 一枚は女子生徒の正面を写した全裸画像。
 もう一枚は床にお尻を落とし、脚を開かせ、股の間にある女子生徒の女といえる部分を狙い撃ちにしていた局部のアップ画像。

「ははっ、この生徒でしたか。よく知っています。何と言っても『友達』ですから」
 女性器全体の形を見事に捕らえた画像を見ながら白鳥が小さな声で笑う。

 一体どれだけの解像度で写したのか。
 映し出された画像は、女の固くごわごわしていそうな豪毛の一本一本まで判別が出来るほどの高解像度画像だった
 もちろん、豪毛の中にあるやや上付きの淫裂や、だらしなくはみ出ている鮮やかなピンク色をした小陰唇も、これ以上ないぐらい鮮明に映し出していた。
 
 白鳥はその特徴的な大陰唇を見ながら納得したように頷く。
 たとえ顔写真なんて見なくてもこの女性器が誰のものなのかすぐに分かった。
 なにしろ嫌がる女の足を開けさせて、直接女性器の中まで確認し、シャッターを切ったのは白鳥自身なんだから見間違えるわけがない
 この股間は佳子のものだった。

「ん? この豪毛おまんこと友達なのか?」
 渡部が不思議そうに言う。

「はい。それはもう。……ところで渡部先生、私に一つ考えがあります。上手く行けば藤沢先生に圧力を掛けながら学校のためにもなります」
 これは一隅のチャンスと思い、白鳥は兼ねてから考えた案を話す。

「言ってみろ」

「写真の生徒、佳子にもっとヌードモデルになる機会を与えるのです。佳子には一流のヌードモデルになる才能があります」
 
「なぜ、そんなことがわかる。確かにスタイルは悪くないが、それだけだろ」
 渡部はディスプレイに映し出された佳子の全裸画像を見ながら疑問を言う。
 確かに胸の形もいいし顔も悪くない。だが、それだけだ。
 裸を見る限り特別変わった生徒には見えなかった。

「この絵を見てください。これは佳子の弟が書いた絵です。彼は殆ど絵が書けなかったのに、佳子のヌードとなるとこれだけの向上を見せた。他の生徒も格段に技術がアップしています。これはモデルの良さが彼らの能力を引き出していると思いますがどうでしょうか」
 白鳥は近くにおいてあった部員たちの絵を次々と見せる。
 これらは渡部を説得するために予め用意したものだった。

「なるほど。言いたいことは分かったが、これだけではなんとも言えん。オレが自分の目で確かめてから決める。もし、お前の言うとおりならこの学校に取っても掛け替えのない人材になるしな」
 腐っても渡部は美術顧問。
 本当に白鳥が言うようなヌードモデルの才能があるなら、放っておくはずがなかった。

「佳子の件はよろしくお願いします。私は藤沢先生の部員を調べてヌードモデルとして使えそうな生徒をリストアップしておきます」
 渡部の返答に満足した白鳥は微笑する
 佳子の裸には価値がある。
 これは白鳥の本心だった。確かにヌードモデルに選んだのは個人的な私怨。
 佳子にヌードモデルの道を歩かせようと画策しているのも私怨
 しかし、佳子にヌードモデルしての素質を感じるのもまた事実だった。

(恨むならそんな魅力的な体をもった自分自身を恨みなさい)
 佳子が醜ければこんな計画は最初から成り立たない。
 白鳥の指摘はある意味においては正しかった。
キミのちんちん、写メらせて♪ ◆女子校学園祭編