1時間後
「暗くなってきたわね。今日はこの辺にしましょうか」
白鳥が手をパンパンと叩いた。
合図を聞いた隆が立ち上がり、下級生たちに後片付けするように指示を出す。
「姉さんも早く服を来て」
隆はそう言いながら全裸のまま立ち続ける姉の前へ行く。
少しでも下級生の視線を遮るようとする弟の心遣いだったが姉は困惑の顔つきを見せる。
「ええ。わかったわ」
姉は弟が平然と近づいてきたことに少し面食らいながらも脱いだ服を手に取り、上半身を覆い隠す。
「先輩。今更隠しても遅いですよー」
突然、後ろから下級生の軽口が飛ぶ。
確かに下級生の言うとおり、裸を隅々まで見せた後に隠しても何の意味もなかい。
しかも今の彼女は手に持った制服で必死に前を隠そうとしているが、その豊かな乳房の丸みはまるで隠しきれていない。
下半身に至っては黒い茂みですら確認できる。
下級生から見れば滑稽な格好にしか見えなかった。
「ちょっと佳子。あれはなんのつもりなの」
不満そうな声を出しながら白鳥が姉のもとに近づく。
どうやら今日の姉の裸に不満があるようだ。
「小言なら明日聞くわよ」
姉は文句を言う白鳥を見ようとせず立ち去ろうとする。
「はっきり言わないとわからないようね。『指導』してあげるからこちらに来なさい」
白鳥が更に大きな声を出す。
だが、姉の足は止まらない。着替えられそうな大きな木のそばに行こうと歩き始める。
「今日のヌードモデルの義務はまだ終わっていないのよ。戻りなさい」
白鳥がそう言うと姉がようやく立ち止まり振り向く。
行こうかどうしようか迷っているようだ。
「姉さん、ちょっとだけ我慢すればいいだけだから」
隆は姉に向かって小さな声でつぶやく。
彼には白鳥がなにを言いたいのか察しがついていた。
ここで揉めるより注意事項を聞いて、すぐ退散したほうが姉のためにも得策だと思った。
「……わかったわ」
姉はそう言うと不満そうな表情をしながら白鳥の前まで行く。
向かい合う二人。なんとも言えない緊張感が走る。
「前も言ったでしょう。指導中は全裸」
白鳥はにっこりと笑って、姉の手から制服の束を取り上げる。
体の一部を隠していた物が無くなり再び姉の一糸まとわぬ裸身が顕になる。
「なっ」
隆は目を疑った。
指導中は全裸?何のことなんだ。
彼には何がなんだかわからなかった。
「こんなに下着の跡を付けてどういうつもりなの。普段から下着は付けないように渡部先生にも言われたはずでしょ」
驚く隆を気にも止めず、白鳥は姉の胸周りに残る薄い赤い線を指摘した。
普通ならなんの問題もない下着の跡。
だが、姉の白い肌にはあまりに醜い線に映った。
「つい、うっかりしてました。もうしません」
姉が棒読みぎみの声で謝罪する。
なぜそんなことをしなければいけないのか。不満がありありと感じられた。
「駄目よ。もう信用できないわ。明日からは本当に下着をつけていないか毎朝検査します。わかったわね」
反論は許さないと言わんばかりに白鳥が声を張り上げる。
「毎朝……」
姉の顔色が変わる。
予想だにしない指示に困惑しているようだ
「じゃ帰っていいわよ」
「……」
制服を受け取った姉が歩く。
いつになく表情が硬く足取りも重い。
白鳥が出した指示は彼女を更なる絶望へと追いやるのに十分な重みがあったからだ。
「まったく。佳子にも困ったものよね。いい加減ヌードモデルとしての自覚を持ってくれないと困るわ」
白鳥が呆れたように言う。
「毎朝、姉の下着検査をするって本気ですか」
隆が焦りながら白鳥に問い質す。
まさかこんなことになるなんて。
注意だけで終わると思っていた隆にとっても部長の提案は寝耳に水だった。
しかも姉が受ける下着検査とは下着を付けていないかの検査なのだ。
部長が突然そんなこといい出すなんて思いも付かなかった。
「検査は顧問からやるようにと言われていたことなのでもちろん本気よ。まぁ検査と言っても上着をめくって、スカートを上げてもらうだけだからすぐ終わるわ。部の皆にも協力してもらうつもりだし手間はかからないでしょ」
ノーパンのままスカートの裾を持ち上げる姉の姿を予想したのか白鳥が楽しそうに話す。
「……」
検査は渡部先生の指示と言われるともう隆には何も言えない、
たた黙って部長の言う話を聞き入れた。
毎朝の下着検査。上着とスカートを上げるだけの簡単な検査。
確かに検査と言っても、これなら時間も手間もかからないかもしれない。
だが、毎朝必ず誰かに乳首とあそこを見せなくてはいけない姉の気持ちはどうなるのか。
いくら姉が約束を破ったとはいえ、あまりに厳しい指示だった。
「じゃ、これはプレゼント。もう佳子には必要ないものだし弟のあんたにあげるわ」
「これは」
白鳥から渡された白い布切れを見て隆の目の色が変わる。
彼の手にあるものは姉が先ほど脱いだブラとパンツ。
ぬくもりが残っているはずはないのに生暖かい。隆はどこか姉の臭いが漂っている気がした。
隆と白鳥が立ち話をしていると突然男子の声がした。
いつの間に近づいてきたのか、中等美術部の代表らしき生徒は白鳥の前に立ち、「先輩、今日はありがとうございました」と言って頭を下げた。
「そちらもお疲れさん。で、今回のモデルはどうだった?そちらの顧問のご希望に答える生徒を選んだつもりだけど」
姉の裸に絶対の自信を持つ白鳥は自慢げに話す
「ええ、最高でした。あんな綺麗な先輩の裸が見られるとは思いませんでした。まだ下書きですがこれ見てくださいよ」
下級生が持っていたスケッチブックを広げ、白鳥たちに向ける。
「なっ」
その絵を見た隆は衝撃を受けた。
中等美術部なんてただのお遊び。
ヌードが見たいだけのただのエロ集団だと思っていた。
だが、見せられた絵のレベルは隆が見ても高かった。
自分と同等。いやそれ以上に姉の裸の美しさを再現していたからだ。
「佳子の顔は平均より少しマシ程度だけど体は綺麗だからねー。いい勉強になったでしょう」
「でも個人的な趣味を言えば前回のメガネ先輩のほうが良かったですね。今回の人はちょっと怖いというか」
「あーメガネの子は気が弱そうだからねー。やっぱ男の子としては大人しい巨乳系のほうがいいか。それなら今度……」
盛り上がる二人の会話を避けるように、隆はそっとこの場から立ち去る。
彼は白鳥部長の考えが確かであることを認めざる得ないが悔しかった
部長が推薦した生徒は、誰もが創作意欲が湧く素晴らしい体をしていた。
それは個人的な私念で選んだと思われる姉も例外ではない。
部長の思惑通りに彼女らが裸になることによって、美術部員のレベルが格段に上がっていったのは疑いようがなかった。
事実、隆本人の実力にもそれは反映されていた。
姉を救いたい。その気持ちは今でも変わらない。
だが、そのためにヌードモデル指名制度を否定していいものなのか。
学生の裸を書く大切さを知ってしまった今の彼にはそれがわからなかった。
エピローグ
隆は姉の野外ヌードデッサンの余韻が冷めないまま、夕暮れのグラウンドを後にして、校門へと向かう。
考えは未だにまとまらない。どうすればいいのか。
難しい顔をしながら校門をくぐる。
すると、1人の女子が木の影から飛び出す。
「ようやく来たわね」
誰かと思えば奈々だ。
かなり長い間、校門前で持っていたらしく相当苛ついた顔をしている。
「お、おい。どうした」
隆は奈々の迫力に思わず後退りした。
凄い剣幕で怒っている。
たが、彼には奈々がここまで怒っている理由がわからなかった。
教室で別れた時の奈々の態度は普段と何も変わらなかったからだ。
奈々が口を開く。
「どうしてうちの部長がヌードモデルになっているのよ!」
隆は鈍器で頭を殴られた気がした。
幼なじみの一言。それは絶対隠し通さなくてはいけないことだった。
「暗くなってきたわね。今日はこの辺にしましょうか」
白鳥が手をパンパンと叩いた。
合図を聞いた隆が立ち上がり、下級生たちに後片付けするように指示を出す。
「姉さんも早く服を来て」
隆はそう言いながら全裸のまま立ち続ける姉の前へ行く。
少しでも下級生の視線を遮るようとする弟の心遣いだったが姉は困惑の顔つきを見せる。
「ええ。わかったわ」
姉は弟が平然と近づいてきたことに少し面食らいながらも脱いだ服を手に取り、上半身を覆い隠す。
「先輩。今更隠しても遅いですよー」
突然、後ろから下級生の軽口が飛ぶ。
確かに下級生の言うとおり、裸を隅々まで見せた後に隠しても何の意味もなかい。
しかも今の彼女は手に持った制服で必死に前を隠そうとしているが、その豊かな乳房の丸みはまるで隠しきれていない。
下半身に至っては黒い茂みですら確認できる。
下級生から見れば滑稽な格好にしか見えなかった。
「ちょっと佳子。あれはなんのつもりなの」
不満そうな声を出しながら白鳥が姉のもとに近づく。
どうやら今日の姉の裸に不満があるようだ。
「小言なら明日聞くわよ」
姉は文句を言う白鳥を見ようとせず立ち去ろうとする。
「はっきり言わないとわからないようね。『指導』してあげるからこちらに来なさい」
白鳥が更に大きな声を出す。
だが、姉の足は止まらない。着替えられそうな大きな木のそばに行こうと歩き始める。
「今日のヌードモデルの義務はまだ終わっていないのよ。戻りなさい」
白鳥がそう言うと姉がようやく立ち止まり振り向く。
行こうかどうしようか迷っているようだ。
「姉さん、ちょっとだけ我慢すればいいだけだから」
隆は姉に向かって小さな声でつぶやく。
彼には白鳥がなにを言いたいのか察しがついていた。
ここで揉めるより注意事項を聞いて、すぐ退散したほうが姉のためにも得策だと思った。
「……わかったわ」
姉はそう言うと不満そうな表情をしながら白鳥の前まで行く。
向かい合う二人。なんとも言えない緊張感が走る。
「前も言ったでしょう。指導中は全裸」
白鳥はにっこりと笑って、姉の手から制服の束を取り上げる。
体の一部を隠していた物が無くなり再び姉の一糸まとわぬ裸身が顕になる。
「なっ」
隆は目を疑った。
指導中は全裸?何のことなんだ。
彼には何がなんだかわからなかった。
「こんなに下着の跡を付けてどういうつもりなの。普段から下着は付けないように渡部先生にも言われたはずでしょ」
驚く隆を気にも止めず、白鳥は姉の胸周りに残る薄い赤い線を指摘した。
普通ならなんの問題もない下着の跡。
だが、姉の白い肌にはあまりに醜い線に映った。
「つい、うっかりしてました。もうしません」
姉が棒読みぎみの声で謝罪する。
なぜそんなことをしなければいけないのか。不満がありありと感じられた。
「駄目よ。もう信用できないわ。明日からは本当に下着をつけていないか毎朝検査します。わかったわね」
反論は許さないと言わんばかりに白鳥が声を張り上げる。
「毎朝……」
姉の顔色が変わる。
予想だにしない指示に困惑しているようだ
「じゃ帰っていいわよ」
「……」
制服を受け取った姉が歩く。
いつになく表情が硬く足取りも重い。
白鳥が出した指示は彼女を更なる絶望へと追いやるのに十分な重みがあったからだ。
「まったく。佳子にも困ったものよね。いい加減ヌードモデルとしての自覚を持ってくれないと困るわ」
白鳥が呆れたように言う。
「毎朝、姉の下着検査をするって本気ですか」
隆が焦りながら白鳥に問い質す。
まさかこんなことになるなんて。
注意だけで終わると思っていた隆にとっても部長の提案は寝耳に水だった。
しかも姉が受ける下着検査とは下着を付けていないかの検査なのだ。
部長が突然そんなこといい出すなんて思いも付かなかった。
「検査は顧問からやるようにと言われていたことなのでもちろん本気よ。まぁ検査と言っても上着をめくって、スカートを上げてもらうだけだからすぐ終わるわ。部の皆にも協力してもらうつもりだし手間はかからないでしょ」
ノーパンのままスカートの裾を持ち上げる姉の姿を予想したのか白鳥が楽しそうに話す。
「……」
検査は渡部先生の指示と言われるともう隆には何も言えない、
たた黙って部長の言う話を聞き入れた。
毎朝の下着検査。上着とスカートを上げるだけの簡単な検査。
確かに検査と言っても、これなら時間も手間もかからないかもしれない。
だが、毎朝必ず誰かに乳首とあそこを見せなくてはいけない姉の気持ちはどうなるのか。
いくら姉が約束を破ったとはいえ、あまりに厳しい指示だった。
「じゃ、これはプレゼント。もう佳子には必要ないものだし弟のあんたにあげるわ」
「これは」
白鳥から渡された白い布切れを見て隆の目の色が変わる。
彼の手にあるものは姉が先ほど脱いだブラとパンツ。
ぬくもりが残っているはずはないのに生暖かい。隆はどこか姉の臭いが漂っている気がした。
隆と白鳥が立ち話をしていると突然男子の声がした。
いつの間に近づいてきたのか、中等美術部の代表らしき生徒は白鳥の前に立ち、「先輩、今日はありがとうございました」と言って頭を下げた。
「そちらもお疲れさん。で、今回のモデルはどうだった?そちらの顧問のご希望に答える生徒を選んだつもりだけど」
姉の裸に絶対の自信を持つ白鳥は自慢げに話す
「ええ、最高でした。あんな綺麗な先輩の裸が見られるとは思いませんでした。まだ下書きですがこれ見てくださいよ」
下級生が持っていたスケッチブックを広げ、白鳥たちに向ける。
「なっ」
その絵を見た隆は衝撃を受けた。
中等美術部なんてただのお遊び。
ヌードが見たいだけのただのエロ集団だと思っていた。
だが、見せられた絵のレベルは隆が見ても高かった。
自分と同等。いやそれ以上に姉の裸の美しさを再現していたからだ。
「佳子の顔は平均より少しマシ程度だけど体は綺麗だからねー。いい勉強になったでしょう」
「でも個人的な趣味を言えば前回のメガネ先輩のほうが良かったですね。今回の人はちょっと怖いというか」
「あーメガネの子は気が弱そうだからねー。やっぱ男の子としては大人しい巨乳系のほうがいいか。それなら今度……」
盛り上がる二人の会話を避けるように、隆はそっとこの場から立ち去る。
彼は白鳥部長の考えが確かであることを認めざる得ないが悔しかった
部長が推薦した生徒は、誰もが創作意欲が湧く素晴らしい体をしていた。
それは個人的な私念で選んだと思われる姉も例外ではない。
部長の思惑通りに彼女らが裸になることによって、美術部員のレベルが格段に上がっていったのは疑いようがなかった。
事実、隆本人の実力にもそれは反映されていた。
姉を救いたい。その気持ちは今でも変わらない。
だが、そのためにヌードモデル指名制度を否定していいものなのか。
学生の裸を書く大切さを知ってしまった今の彼にはそれがわからなかった。
エピローグ
隆は姉の野外ヌードデッサンの余韻が冷めないまま、夕暮れのグラウンドを後にして、校門へと向かう。
考えは未だにまとまらない。どうすればいいのか。
難しい顔をしながら校門をくぐる。
すると、1人の女子が木の影から飛び出す。
「ようやく来たわね」
誰かと思えば奈々だ。
かなり長い間、校門前で持っていたらしく相当苛ついた顔をしている。
「お、おい。どうした」
隆は奈々の迫力に思わず後退りした。
凄い剣幕で怒っている。
たが、彼には奈々がここまで怒っている理由がわからなかった。
教室で別れた時の奈々の態度は普段と何も変わらなかったからだ。
奈々が口を開く。
「どうしてうちの部長がヌードモデルになっているのよ!」
隆は鈍器で頭を殴られた気がした。
幼なじみの一言。それは絶対隠し通さなくてはいけないことだった。