あちらこちらから工事のやかましい音が拘置所内に鳴り響く。
そんな騒音の中で姉は神崎刑務官に連れられて廊下を歩かされている。
保安上のものと思われる分厚い扉をくぐると工事関係者らしき作業着を着た男性が正面から歩いてきた。
今いるブロックは普段でも部外者が多く、なるべく通りたくない廊下だった。
なんと言っても今は手錠腰縄姿。人には見られたくないと言う当たり前の感情が頭をよぎる。
しかし、犬のように青いロープを持たれて歩かされている姉にはどうすることも出来ない。
「失礼します」
男性が頭を下げながらすれ違う。姉は本能的に視線を逸らすが、男はそんなもんは見慣れているとばかりに顔も合わせず過ぎ去っていく。
しばらく歩くとまた1人。また1人とすれ違う
工事関係者と言っても、誰もが拘置所内に入れるわけではないようで、みんな紳士な対応だった。
そんなことが何度も繰り返されるが、肝心の目的地には一向に付かない。
流石におかしいと思った。神崎の行動は明らかに何かを確認しているかのような動きだったからだ。
そう。これはまるでこの姿を他人に見られるとどんな反応をするのか試しているような。
姉はこの前来た外部の若い刑務官が言ってたことを思い出す。
矯正展のためのモデルを探している。君を推薦したみたいなことを言ってた。
軽そうな男が言うただの戯言だと思っていた。
しかしこの拘置所ではかなり階級が上の神崎刑務官がこんな無駄なことをやることは思えない。
と、なればおのずと答えが見えてくる
ようやくコースが変わりグラウンドに出る。
いつもは殺風景なグラウンドにステージやら屋台やらが急ピッチで作られていた。
セットの上で5人ぐらいの工事関係者が作業をしている。
「4番は矯正展に出る気はないか」
神崎刑務官は手錠腰縄を外しながら、普段より柔らかい喋り方で聞いてきた。
矯正展の説明はろくに聞いていなかったので驚く姉。
そしてそれと同時にこの質問ですらテストなのではの疑念がよぎった。
(試されているってことか……)
ここからは慎重に答えなくてはならないと思った。
一つ間違えればとんでもない目にあいかねないからだ。
「矯正展に出る気はありません。もともと矯正展は刑務所や拘置所のイメージアップのためにやるものだと認識しています。そんなイベントに協力するわけないでしょう」
慎重と思いながらも姉は本音をぶちまけた。
別に逮捕され勾留されているのは刑務官のせいだとは思わないしこの拘置所が悪いわけでもない。
刑務官たちは決められたルールに沿ってやっているだけに過ぎないのは理解しているからだ。
でも、だからと言って協力する気があるのかと聞かれれば、そんな義理がないのは明らかだった。
神崎刑務官は静かに頷く。意外な答えだとも思っていないようだ。
ただ1言、
「4番、裸になりなさい」
と、言った。
「え」
一瞬何のことだがわからなかった。この神崎という刑務官は良くも悪くも真面目を絵に書いたような上司タイプだ。
それだけに会話パターンが読みやすかったのに突然こんなことを言うなんて考えもしなかった。
「刑務所だったら野外の全裸乾布摩擦もあるのですから驚くことはないでしょう。赤落ちの練習もやっているのだからこのぐらいは出来るはずよ」
刑務官の圧力からは逃れられない。姉は無言のまま服を脱ぎ始める。
今日は日差しが強かった。体操服っぽい白の上着を脱ぐとそこそこの大きさの2つの膨らみが露わになった。
太陽の光に照らされ乳暈と乳首がまるで花びらの色のように見える。
姉は続けてズボンと一緒に下着も一気に下ろす。
これまでも数多く脱いできたが、外で全裸を晒すことは殆どなかった。
それだけに抵抗はもちろんある。乳首に当たる太陽の熱は今まで感じたこともない独特の感覚で気持ち悪さしか無いし、背後にいる工事関係者がどう反応しているかなんて確認もしたくない。
そう。何もかもが嫌なはずなのに、なぜか手だけはスムーズに動いた。
下着を下ろす際も躊躇わなかったことに姉自身が驚いていた。
少し前なら外で裸になるなんてことは、とても出来なかっただろう。
毎日の全裸検査、トイレの監視、刑務所に行くための練習。
今の脱衣は本人も気が付かないうちに、女囚の心得が身についていることに他ならない。
あんまりな現実に姉の額から冷や汗が流れる
「やはり4番はまともね。ここに長くいるだけあって自分の立場がわかっている。どうしても矯正展は嫌なのですか」
神崎は姉の生え揃いつつある陰毛を見ながら言った。
ここに入ったものは初日に陰毛が剃られる。陰毛が元の形を見せつつあると言うことはそれだけ長くいる証でもあった。
「喜美刑務官からこの拘置所の法的根拠やルールを細かく聞きました。残念ながら刑務官には私を裸にして検査する権利があります。だから今も命じられた通り裸になりました。でも矯正展の参加は義務でも何でも無いはずです。だから拒否します」
刑務官は体を調べることは出来ても、やらなくてもいいことをやらせる権利はない。
ここは人権こそ制限されているが、人としての意思主張は否定されていないからだ。
姉は得意の知識を活かした会話術で煙に巻こうとした。
太陽が見える外での全裸体、ガラス棒検査のトラウマ。
数々の悪条件があり逮捕前のようなキレはないが、それでもこの場を逃げ切るには十分だと思えたが。
★
「そこまでいうならわかりました。これはあくまで協力してもらえばの企画なので、拒否するならするで構いません」
あっさりと神崎刑務官は引いた。予想に反して断っても怒る様子はない。
むしろ、体をどこも隠さず見事な全裸直立姿勢をする4番の姿を見て満足げだった。
いかなる場所でも自身に危険がないことを示すために裸体になる。
それはたとえ外であろうが、第三者が近くにいろうが関係ない。
だからこそ、今の4番の姿は刑務官にとって理想的とも言えた。
そのことを証明するかのように背後から人が近づく。
「そちらに行ってもいいでしょうか。道具箱が置いてあるので取りに行きたいのですが」
歩いてきたのは30歳ぐらいの工事作業員。
近くに全裸の若い女性がいると言うのに、男性はごく普通に話しかけてきた。
形のいい尻が丸見えのはずなのに緊張している様子もない。
「かまいません」
神崎は躊躇いもなく、見も知らずの男性に4番の裸を見ることを許可した。
それは今の4番なら一般人に裸を見られても問題を起こさないという評価の顕れでもあることが伺えた。
男性は頭を下げながら通りすぎる。
姉は表情を変えないように努力するが、それでもにじみ出る口惜しさは隠しきれていない。
男性は置いてあった道具箱を持つと、再び元の位置に戻るため向きを変える。
当然、至近距離で姉の裸が視界に入る。しかし男性は特にアクションを見せなかった
姉も見られるのが嫌だからといって、手で胸や股間を隠さなかった。
下手に隠して罰を受けるぐらいなら相手の男性を信じてみようと思った。
ごく一般的な常識を持っていれば、ジロジロと見ないで去ってくれるはずだと。
「失礼します」
そんな姉の期待に答えるかのように男性は走り去っていく。
男性は姉の裸体をチラ見こそしたが、なるべく見ないようにと、少し遠回りして元の現場へ戻っていった。
結局、全裸を見られたことは変わらないが、男性作業員の小さな配慮は姉の心にとってわずかな慰めになった。
「4番も立派になりましたね。初めて会った時は怒りの感情に振り回されているような酷い状態でしたけど今は本音を押し殺せている。恥ずかしくても決して隠さない『常識』が身についています。やはり規定通りにガラス棒検査をされたことによって自分の立場が理解できたのでしょう」
あんまりな話に姉は思わず唇を噛み締めた。
喜美刑務官が手心を加えていたことがバレてからは、最低でも2日に1回はガラス棒検査が行われるようになった。
もっとも憎むべき検査が繰り返し行われ、不浄の穴をいじくり回される日々を過ごすうちに姉は考えを変えざるを得なくなった。
刑務官に反抗心を見せてもいいことない。それより早く終わらせてくれるようと体を開いた。
刑務官に検査をやりやすくするために尻をより大きく開き、むき出しになった肛門を差し出した。
もちろん羞恥心や屈辱感は何倍にも増すが、それだけガラス棒検査が嫌だった。
「今の4番なら矯正展の大役も完璧にこなしたでしょうに残念です。代役じゃこんな上手くはやれないでしょうし」
「何がいいたいのでしょうか」
含みのある言い方に姉が警戒心を高める。
この神崎という刑務官はこれまで数多くの凶悪犯を扱い、修羅場を潜ってきただけの凄みがある。
言葉のすべてに裏があると考えなくてはならない。
「今の拘置所には4番ほど適した人物はいません。4番がやらないというなら刑務官の中から決めることになります。これがどういうことなのか頭の良い4番ならわかるでしょう」
神崎はいけしゃあしゃあと決定的な言葉を言った。
姉の頭に1人の刑務官の姿が浮かぶ。その刑務官は何かと優しくしてくれた。
気分が落ち込んで立ち直れなくなった時にこっそりとケーキを貰ったこともある。
未だに諦めずに戦えているのは彼女のおかげまであった。
「それは脅しですか。卑怯すぎます。最低!」
姉はとっさに汚い言葉を投げかけた。
思えばいつ以来だろう。他人のために怒るなんてことは。
「尻を出しなさい」
こんな暴言を見逃すほど神崎刑務官は甘くはない。
姉は自らの失言を悔やみながら四つん這いになり尻を持ち上げた。
血の気がなくなり、体が震えた。いくらやられても慣れることは決してなく、体と心が拒絶しているのは明らかだった。
(あっ)
四つん這いで顔を持ち上げると視界に先ほどの男性が見えた。
距離はかなり遠い。この距離なら女が四つん這いになって刑務官に尻を触られているぐらいしか認識できないだろう。
ハアハアと息が荒くなる。外でのガラス棒検査の異常さに処理が追いつかない。
逆に神崎は冷静に4番の尻をぐいっと開いた。
肛門に太陽の光と風が当たる。外で晒された4番の肛門は普段よりピンク色が強い感じがした。
神崎はビニール手袋をした人差し指で肛門の中央を突く。当たりを付ける神崎独特のやり方だ。
姉の息が荒くなるのと同時にガラス棒が入れられる。
細いガラス棒は姉に悲鳴を上げさせる隙すらも与えず、まだ硬さが残る小さな菊門を見事なまでに貫いた。
姉の背が弓なりにのけ反る。初手にも関わらず肛門はガラス棒を半分以上も咥えこんでいた。
それは近くに部外者がいて太陽の日差しが見える環境だろうが神崎の技術はぶれない証明でもあった。
★
数時間後
工事関係者のトラックが動き出す。
助手席に座っていた男が笑顔を見せながら言う。
「今日は女囚の身体検査が見られて得したな。俺の方からは尻しか見えなかったけどどんな女だった?」
「どんなって普通かな。年齢は若そうで大学生ぐらいだったけど」
先ほど道具箱を取りに行った男性が運転しながら答える。
助手席の男とは違いあまり嬉しそうではなかった。
「なんだよ。ノリ悪いな。あの女の胸やあそこを見たんだろ。そんな幻滅するような醜い裸だったのか」
「だから普通だって。別に胸が大きいわけでもないし。でも裸を見てしまって悪いことしたなと」
車のスピードが上がる。やや助手席の男にイライラしているようだった。
「なんで?犯罪者なんだから可哀想なんて思う必要ないのに」
「犯罪者か……そこが気になるんだよな」
もちろん男に事情はわからない。
だが、平凡としか言えない女の顔や裸が妙に頭に残っているのも事実だった
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