ヌードモデルに選ばれた姉


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 姉と弟の関係
 
 せっかくの朝食だというのに福留家のリビングは重苦しい空気に包まれていた。 静まり返った場に箸を動かす音だけが響く。
「えっと」
 隆は魚の身を取りながら、ちらりと姉の様子を伺う。
「……」
 姉は相変わらず不機嫌そうに味噌汁を飲んでいた。
(どうしたものか)
 起きた時から姉の態度はおかしかった。
 ヌードモデルに選ばれてから多少ギクシャクする日はあったが、今日のように一言も喋らないのは初めてだった。
 このままでは言わなくてはならないことも言えない。
 そう思った彼は、さり気なく様子を探った。

「昨日は大丈夫だった?」
 むろん、昨日とは身体検査のこと。
 普段の姉なら心配をかけまいとするのだが、
「隆には関係ないでしょう」
 と、素っ気なく答えた。
 身体検査のことだけではなく、明らかに弟に対して怒っているようだった。
「うーん」
 いきなり話の腰を折られて、隆は戸惑う。
 これでは話にならない。あのことを話す切っ掛けすらつかめない。
 適当に話を繋ぎながら、言いづらいことをいう彼の計画はいきなり頓挫してしまった。

「ごちそうさま」
 食べ終わった姉は椅子から立ち上がる。
 どこかに引っかかったのか、スカートの裾がふわりと動く。
 姉は急いでスカートを押さえ、ジロっと弟を睨む。
「え?なに?」
 今の姉がノーパンであることは隆もわかっている。
 だから、なるべく見ないようにしているのに、なぜか批判の目を向けた。

「なんでもないわ。先に行ってる」
 姉がリビングから出て行こうとする。
「あ、ちょっと待って。今日の検査は裏庭でやるから8時ごろに来るようにと部長が……」
 焦った隆は強引に呼び止め、話すべきことを言おうとするが、
「なんで外なのよ。ふざけないで!!」
 姉は我慢の限界を超えたような声を出した。

「ひい」
 驚きのあまり隆は仰け反りそうになる。
 姉はそのままリビングを去り、玄関の戸が閉じる音がした。

 一人残された隆は大きくため息をつく。
 また言いそびれてしまった。
 それが姉を更に怒らすことになるのはわかっていたのにあと一言が出ない。
 もう何度もやった失敗をまたやってしまい隆の心は重く気持ちに覆われた。

 


 8時5分。
 朝食を終え、学校に登校した隆は言い訳を考えながら裏庭に向かった。
 こうなった以上、悪意がないことを信じて貰うしかない。
 家族なんだからきっとわかってもらえるはずだと。
 しかし、姉の反応は予想以上に熾烈なものだった。

「隆、説明しなさい。これはどういうことなの」
 姉は裏庭にやってきた隆の顔を見るなり、声を上げた。
「えっと……なんというか、今日の身体検査は僕がやれと連絡が来まして」
 何を言っても言い訳にしかならない。
 隆は素直に言われたことをありのまま話した。

「なによそれ。検査する人は決まっているわけじゃないの?」
「やる人と場所は毎日変えると部長が……」

「あ、あいつはどこまで屑なのよ」
 わざわざ人と場所を変える理由は考えるまでもなかった。
 姉は心の中で白鳥を罵倒する言葉を探して歯軋りをした。

「だから姉さん、ちょっとだけ我慢して。さっと終わらすからさ」
 彼の言い方は深刻そうに見えてどこか軽い感じがした。
「いやよ。検査ならやったと嘘を言えばいいでしょう」
 ちらっと弟の顔を見てから強い口調で姉は拒絶した。
「え?」
 隆は戸惑った。拒否されるとは思ってもみなかったからだ。
 家族だから裸を見せてもいいとは言わないが他人よりはマシなはず。
 なぜ?の疑問が彼の脳裏を駆け巡った。

「はい。この話は終わり。私は教室に戻るから隆も早く行きなさい」
 もうこれ以上、こんな茶番に付き合う気はないと言わんばかりに姉はこの場から去ろうとする。
「姉さん待って。後から本当に検査したか感想を聞くと言ってたのでやらないとまずいよ」
 朝の二の舞いはマズイとばかりに止める隆。

「本当にしたかどうかなんて白鳥にわかるはずないでしょう。無視でいいわ無視で……って感想?……あ」
 姉の足が止まり表情が固まる。ここに来て白鳥の仕掛けに気がつく。 
 このまま弟を返せば確実に検査をしていないことがバレることを。

「ん?どうしたの」
 隆が覗きこむ。
「ははっ。あいつはどうしても私に恥をかかせたいわけね。だから話が広まる前に弟にやらせたと。バカにしてくれるわね……」

「ねぇ、今日は我慢してよ。家族なんだからさ」
 空気も読まずに隆は必死に説得を続けた。
 その言葉に反応するように姉の眉がピクリと動く。

「家族か……そうよね。わかったわ」
 少し考えこむような仕草をし、姉は小さくうなずいた。
「よかった。じゃ上をめくって」
 実の姉を脱がそうというのに、やはり彼の言い方は軽く聞こえる。
 早く見たくてしょうがない様子だった。
「……」
 少しためらいを見せたあと姉はセーラー服をめくり上げ、その若々しい乳房を弟に見せた。
「おお、」
 白い乳房が朝日に照らされる。
 もう何度も見た膨らみだというのに、隆はかつてない興奮を感じていた。
 それはヌードモデルの時とはまるで違う。
 そう。これは自分で命令で女を脱がす達成感や征服感と言ったものだった。
「ま、まだなの」
 至近距離からのねちっこい視線に姉が音を上げた。
 こんなひらけた外で乳房を出し、弟に見せる。
 あまりの異常な状況に、姉の顔と体がみるみるうちに熱くなっていく。
「あともう少し」
 姉の乳首は乳輪からツンと突き出し、くっきりとそそり立っていた。
 これはノーブラによる女の生理現象でしか無いが、隆は食い入るように見続けた。
「隆、あなたやっぱり……」
 乳房を晒しながら姉は信じられない思いで弟の下半身を見ていた。
 それは裏切りの確信。言い訳できない証明。

「ふう。もういいよ。つ、次はスカートを持ち上げて」
 隆は膝をつき、股間を見やすい態勢にしながら次の命令を出した。
 明らかに興奮し、自分を見失っている様子が伺えた。
「くっ」
 姉は恥ずかしさと悔しさを表すように歯を食いしばながらスカートの裾を持ち、ゆっくりと持ち上げる。
 そして陰毛をすべて剃り落とされ、哀れにもむき出しにされた割れ目を弟に見せた。

「え!?」
 縦に深く切れ込んだ肉の筋が見た隆は思わず目を見開く。
 いつもは濃い陰毛で隠されていた割れ目が全て見えたからだ。
(す、凄い)
 驚きながらも下腹部のふくらみから外陰部に至る姉の女と言える部分から目を離せなかった。
 特に彼が興味を示したのはその色だった。
 周りの肌色こそ白いが、割れ目のを形づくる丘の色合いは少しくすんでいる。
 これは剃られた陰毛と関係しているのかわからないが、何か女の神秘を見た気がした。

「隆……なにやっているの」
 突然、姉がボソリと言った。

「あ、そうだ。姉さん。これはどうしたの……うっ!?」
 その言葉を聞き、我に返った隆が姉の顔を見る。
 すると姉は顔を真っ赤にしながら軽蔑しきった目で弟を見つめていた。

「あ、ごめん。これはそうじゃなくて」
 隆は必死に誤魔化そうとした。
 しかし、これが無駄であることもわかっていた。
 ここに来て隆自身も、ようやく自分の気持ちに気がついたからだ。
 今までも、自覚がなかったわけじゃない。
 姉の裸を見て性的感情なんて生まれるはずがないと思い込もうとしていた。
 しかし、そうではない。美術室で初めて姉の裸を見た時からわかっていたのだ。
 自分は姉の裸をずっと見ていたいだけなのだと。

「もういいわよね……」
 冷たい声を出しながら姉はスカートを戻し、ゆっくりと校舎に向かって歩き出した。 
 目にはどこか涙が溜まっているような気がした。

「姉さん……ごめん」
 無駄は承知で隆は声を出した。
 姉はチャンスをくれていた。あんな恥ずかしい思いをしても弟の疑念を払拭させようとしていた。
 その期待を踏みにじったのは隆自身でしか無い。
 もう何を言っても言い訳にしかならないのが、それでも心の底から謝罪の言葉を口にした。

 姉が振り向く。
 そして小さな声がつぶやいた。
「何が家族よ」
 そう。隆のズボンは盛り上がったままだった。

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